ブラジルで行われているスポーツの祭典もいよいよ大詰めを迎えつつありますが、今週の国内株市場は堅調ではあるものの、あまりお祭り騒ぎにはなっていないようです。日経平均は16,500円から17,000円の範囲内での推移が続き、8月18日(木)の日経平均終値は16,486円でした。

(図1)日経平均(日足)の動き(2016年8月18日取引終了時点)

(出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成)

あらためて、足元の状況を上の図1で確認します。

日経平均は、以前より指摘してきた想定レンジを上抜けた状態を維持していますが、今週に入ってからのローソク足に注目してみますと、高値が切り下がっていて、上値の重たさが感じられます。引き続き、「17,000円の壁」が意識されている格好ですが、その一方で、下値については25日移動平均線がサポートとして機能しています。18日(木)の終値は25日移動平均線を下回っていますが、翌日以降も復活・維持できれば順調に下値を切り上げていくことになりそうです。

総じて堅調ではあるものの、同時に上値の重石と下値の突き上げの板ばさみによって、動きづらさも感じとれる状況と言えます。

下の図2は日経平均(日足)のボリンジャーバンドですが、バンドの幅が狭くなりつつあり、「スクイーズ」と呼ばれる格好に近づきつつあるようです。スクイーズは値動きが収斂して、動きづらくなっていることを示していますが、相場のエネルギーが蓄積されている状態でもあり、「そろそろトレンドの発生が近いのでは?」とされています。そのため、近いうちにトレンドが発生する可能性を想定しておく必要がありそうです。

実際に、スクイーズは6月にも出現し、その後は短期間の下落トレンドが発生しています。ちなみに、6月のスクイーズ時のバンドの値幅は766円でした。18日(木)終了時点のバンドの値幅は811円です。

(図2)日経平均(日足)のボリンジャーバンド(2016年8月18日取引終了時点)

(出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成)

また、日経平均の下値が底堅く推移している背景に挙げられるのが、「日銀のETF買い」です。先日の日銀金融政策決定会合では、ETFの買い入れ額が年間3.3兆円から6兆円へ増額されました。

日銀が買うETFは、日経平均やTOPIX、JPX日経インデックス400など、主要株価指数に連動するETFが中心です。それぞれのETFの時価総額に応じて買うことになるため、ETF買いのインパクトが大きいのは、純資産残高が比較的大きい日経平均型のETFになります。

そのため、日銀のETF買いの思惑によって、日経平均の構成銘柄がより買われやすくなるというリクツが成り立つのですが、こうした傾向は「NT倍率」に表れている可能性があります。

NT倍率とは、日経平均(N)をTOPIX(T)で割ったものです。NT倍率の数値が大きくなることは、日経平均とTOPIXの価格差が拡大していることを示していますが、このNT倍率が今週15日(月)に、17年ぶりの高水準となる12.8倍をつけています。

(図3)NT倍率の推移(2016年8月18日取引終了時点)

(出所:取引所データを元に筆者作成)

代表的な株価指数である日経平均の堅調さは、日本株のムード全体にとっても良いことなのですが、直近のNT倍率が示すように、日銀のETF買いによって日経平均構成銘柄に偏った買いが目立っているのであれば、銘柄物色の対象が広がっていることにはならず、日経平均だけが強く、あまり足腰は強くない相場である可能性があります。現時点では、「相場が堅調な割にあまりパフォーマンスが良くない」という方も多いかもしれません。

となると、NT倍率は今後縮小していく可能性が高そうです。ただし、倍率が縮小するにしても、「騰がり過ぎた日経平均がTOPIXの方に修正していく」のか、「出遅れたTOPIXが日経平均にキャッチアップしていく」のか、その内容によって相場の地合いが全く異なってきます。そのため、騰落銘柄数やセクター別の騰落状況などをチェックしていく必要がありそうです。