「アフター米雇用統計」となった今週の株式市場ですが、5月12日(木)の日経平均終値は16,646円となりました。

(図1)日経平均(日足)の動き(2016年5月12日取引終了時点)

(出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成)

いつもの様に、上の図1で足元の状況を確認していきます。

前回、「売り仕掛けのトレンドライン」を下回ったことで、下げ止まりの水準を探るシナリオを想定しましたが、意外(?)にも日経平均は水準を切り上げる展開となりました。とはいえ、日経平均の動きは、この売り仕掛けのトレンドラインに沿った格好ですので、下落を警戒しながらの上昇であったことが窺えます。

また、今週末はオプション取引、mini先物のSQが控えていることもあり、売り買いの攻防があったことも考えられます。11日(水)の取引は高値をつけた後に下落に転じ、12日(木)の取引は安値をつけた後に切り返す動きを見せるなど、慌しい値動きだったため、取引を行うにはやや手掛けづらい状況だったと言えそうです。

良くも悪くも、次の材料待ち次第の状況に変わりはないのですが、先週と異なるのは、明るい材料がいくつか出ていることです。ひとつめは75日移動平均線の傾きが微妙に上向きになり始めていること、もうひとつは、12日(木)のローソク足が25日、75日の移動平均線をまたいで上昇していることです(下の図2)。

(図2)直近の日経平均(日足)のローソク足(2016年5月12日取引終了時点)

(出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成)

これは、「2本抜き」と呼ばれる形です。この形が出現すると、株価が上昇しやすいと言われています。直近でも2本抜きが出現する場面があり、短期的に上昇する局面がありました。もっとも、この2本抜きは週足チャートにあてはまることが多く、日足チャートでは強気度合いを多少差し引く必要があるかもしれません。

また、レンジ内で株価の落ち着きどころを探る展開というメインシナリオは変更しなくてもよさそうです。下の図3は下落トレンドが発生した昨年12月からの日経平均の値動きと価格帯別売買高のチャートですが、現在の株価位置は、売買高が多い17,000円台と16,000円台のあいだに挟まれている格好です。

(図3)日経平均(日足)と価格帯別売買高(2016年5月12日取引終了時点)

(出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成)

レンジを抜けるには、もみ合いを続けて日柄調整をこなすか、強い材料が必要になってきます。また、足元では国内企業の決算発表シーズンがピークを迎えようとしていますが、「バリュエーション(企業の価値)的に、株を買い進められるのか?」も注目点になっています。その点についても、ざっくり状況を押さえてみたいと思います。下の図4は、国内名目GDPと東証1部の時価総額を比較したグラフです。

(図4)日経平均(日足)と価格帯別売買高(2016年5月12日取引終了時点)

※2016年1-3月期の名目GDPはまだ公表されていないため、2015年第4四半期の数値を適用
(出所:東京証券取引所と内閣府公表のデータを元に筆者作成)

実は、図4のように、「その国のGDPと上場株式の時価総額を比較する」というのは、著名投資家のウォーレン・バフェット氏が愛用しているとされる手法です。株式市場の時価総額がその国のGDPを大きく上回ると、株は買われ過ぎという見方をします。実際に図4を見ても、バブル絶頂期だった1989年は149%、ITバブル時で106%をつけていました。アベノミクス相場では2015年の第2四半期に117%になっています。足元では100%を下回っているものの、中長期的には「お買い得」な水準ではなさそうです。今後、本格的に株価が上昇していくには、企業業績の上振れや経済成長期待につなげられる政策が求められているのかもしれません。