年明け以降、日本株の下落が止まりません。先週はわずか3日間で日経平均株価がなんと2,000円以上も下落し、2008年秋のリーマン・ショックを思い出した方も少なくなかったのではないでしょうか。その一方、決算発表シーズンも終わり、好業績が続く銘柄も明らかになりました。そこで今回は、波乱が続くマーケットの中、決算発表を終えた個別銘柄に対する投資戦略を考えてみたいと思います。

明らかに通常とは異なる株価下落が続く

当コラムでもたびたび言及している25日騰落レシオは、2月12日時点で57.7%まで下落しました。通常、25日騰落レシオが60%を割り込むことは1年に1回程度しかなく、逆張りで投資するときには絶好の買いタイミングとなります。ところが今年に入ってから、25日騰落レシオが60%を割り込んだのはこれで4回目です。過去3回は、60%を割り込んだものの本格的な反発に至ることができず、株価は反落してしまっているのです。

また、1月21日には日経平均株価の25日移動平均線からのマイナスかい離率が10%を超えていました。通常、マイナスかい離率が10%を超えると株価は底打ちするのですが、今回はそうはならず、2月12日に再度マイナスかい離率10%超えとなってしまいました。

このように、通常底打ちすべきタイミングで底打ちできず、さらに株価が下落しているのが今年に入ってからの日本株の現状であること、つまり現在は「通常の下げ相場ではない」ことをまず理解する必要があります。

好決算でも株価が大きく売られた銘柄が目立った今回のシーズン

3カ月に1度の決算発表シーズンが2月15日を持って終了しました。3月決算の銘柄は第3四半期決算が発表されました。今回の決算発表後の個別銘柄の株価の動きを見ていて感じたのは、業績が悪化したり、業績予想を下方修正した銘柄が大きく下がるのは当然ながら、好業績を維持していたり、業績予想を上方修正した銘柄であっても暴落に近い下げを見せた銘柄が多数見受けられたということです。

この理由として考えられるのはいくつかありますが、ちょうど決算発表の時期と株価急落の時期が重なったため、例え好業績の銘柄であっても、個人投資家が他の銘柄の損失を穴埋めするために売却を急ぐといった動きが出たと思われます。その結果、業績にかかわらずほとんどの銘柄が大きく売られたというのが実情でしょう。特に2月12日はその動きが非常に顕著に出ていました。

好業績なのに株価が大きく下落した「もう1つの理由」とは

実は、好業績の銘柄の株価が大きく下落したことにつき、考えられるもう1つの理由があります。

それは、今回の決算発表では確かに好業績であったものの、今後業績が伸び悩んだり、悪化するのではないかと市場参加者が思っているということです。

株価は、常に将来を見据えて動きます。筆者が以前から注目している銘柄で、期待通りの決算を発表した銘柄であっても、発表後株価が急落しているケースが今回は非常に目立ちました。

決算発表直後の段階ではまだこうした銘柄が、単に市場全体の急落に巻き込まれて売られただけなのか、それとも今後の業績悪化を懸念して大きく売られたのかは定かではありません。そして、最も重要なことは、どちらの理由で売られているのかを個人投資家が的確に予測することはまず不可能であるという点です。

そこで筆者であれば、注目している銘柄のうち、今回の決算で期待通りの好決算を発表したものについて株価の動きを毎日ウォッチします。そして、上昇トレンドに転じた場合は先の株価急落は単なる「連れ安」だったと判断して新規買いします。もし、いつまでも上昇トレンドに転じることができずに株価が低迷を続けているようであれば、今後の業績悪化が懸念されていると判断し、手を出さずにいます。

このように、下降トレンドにある間は新規買いをせず、上昇トレンドに転じたら新規買いするという「株価トレンド分析」を実践していれば、自ずと今後も好業績が期待できる強い銘柄に投資することができるはずです。

新規買いするなら資金量を調整してリスク管理の徹底を

リーマン・ショックのときも、「株」というだけで、業績に関係なくほぼ100%に近い銘柄が大きく売られました。しかし、好業績の銘柄は、相場全体が落ち着きを取り戻し始めるとともに、いち早く上昇トレンドに転じていきました。

ですから今回の株価急落後も、好業績が続いている銘柄の株価の動きをウォッチし、いち早く上昇トレンドに転じた銘柄、もしくは上昇トレンド自体を維持できている銘柄については新規買いを大いに検討すべきと思います。

ただし、新規買いをするにあたっては注意すべき点があります。それは、日本株全体ではまだ株価が底打ちしたかどうかは定かではなく、さらなる株価下落が生じる可能性もあるという点です。

そこで筆者であれば、日経平均株価自体が上昇トレンドに転じるまでの間は、例え個別銘柄が上昇トレンドに転じたとしても、投資可能資金の大部分を使うことは避けるようにします。筆者自身、これからポジションを構築しますので現時点で具体的なことはまだ言えないのですが、日経平均株価の反発力が弱く、底割れする個別銘柄が続出するような状況であれば投資可能資金の10%程度にとどめます。それなりに日経平均株価も個別銘柄も反発し、底割れ銘柄がほとんどでない状況であっても30%程度にとどめるつもりでいます。

今は、好業績銘柄を上昇トレンド直後の安値圏で新規買いできるタイミングと考えられる一方、日本株全体で見ればまだまだ不安定な動きが続くという、非常に難しい局面です。全体として高リスクの中でチャンスをものにするためには、株式に投資する資金量を調節し、株価がさらに大きく下落したとしてもダメージが最小限に抑えられるようにしておくことが重要だと思います。

おそらく、今回の株価急落で、多くの個人投資家の方がかなり大きなダメージを負ってしまったことでしょう。そうした中、最後のチャンスとばかりに大勝負をしてしまうことだけは避けていただきたいものです。もちろん成功すれば起死回生となるでしょうが、失敗したら株式市場から退場させられてしまいます。今後、もっと利益を上げやすい投資環境が整うときが来るはずです。勝負をするのであればその時が来てからでも遅くはないのではないでしょうか。