昨年12月から突如急騰をはじめたフィンテック関連株。年始から日本株が急落する中で、逆に利益を得ることができたという方も多いのではないでしょうか。とはいえ、1つ扱い方を誤れば、あっという間に大きな損失を抱えてしまうのも事実です。そこで今回はこうした「テーマ株」とどのように向き合えばよいのか、筆者なりの扱い方をお話しします。

1カ月で株価6~8倍にまで上昇したフィンテック関連株

フィンテック関連株の代表格であるさくらインターネット(3778)インフォテリア(3853)は上昇スタート時からわずか1カ月で株価が6~8倍になりました。

2013年前半のアベノミクス相場の初期、バイオ関連株が揃って急上昇した時期がありました。「バイオ」と名がつけば、大赤字だろうが売り上げゼロだろうが何でも株価が大きく上昇しました。そして株価が天井をつけた後は、大きく値を下げて上昇スタート時の株価近辺まで戻ってしまいました。

また、2014年はじめは量子電池開発という材料により、日本マイクロニクス(6871)が短期間で約30倍に上昇したのは記憶に新しいものです。

そして今回のフィンテック関連株の急騰ですが、いずれにも共通して言えるのは、「現時点では業績の裏付けがなく」、「思惑や期待感で上昇している」という点です。

中心銘柄以外は崩れるのも早い

そのため、テーマ株の株価上昇というのは、いわば砂上の楼閣であり、いつ崩れ落ちてもおかしくないという前提で臨まなければなりません。

そしてテーマ株相場では、中心となる銘柄が最も強い動きとなり、その他の銘柄は天井をつけて崩れるのも早くなる傾向があります

フィンテック関連銘柄には、他にセレス(3696)アイリッジ(3917)メタップス(6172)などがありますが、1月8日や12日はさくらインターネットとインフォテリアはストップ高まで買い進まれた一方、それ以外はあまり大きく上昇しませんでした。この段階で、他のフィンテック関連株は売却し、2銘柄にしぼってしまうのも一策でした。

また、他の銘柄に出遅れて株価が上昇するケースも注意が必要です。SJI(2315)は、債務超過の状態ながらフィンテック関連銘柄として1月12日に突如急上昇し、そこから3日連続ストップ高となりました。しかし15日は高値154円をつけたもののその日のうちに80円まで下落するという、非常に荒れた動きとなりました。一般に、出遅れ銘柄は天井をつけて下落するまでのスピードがかなり速くなりますので気を付けてください。

いかに「初動」で買うことができるかがポイント

テーマ株は株価の乱高下が激しく、中途半端な株価で買うと、乱高下に巻き込まれて大きな損失を被ってしまいがちです。ですから、いかに上昇の「初動」の段階で、安く買うことができるかどうかがポイントです。

できるだけ、25日移動平均線からの上方かい離が10%以内、大きくても20%以内の状態で買うことを心掛けます。また、テーマ株は突如株価が急騰して上昇がスタートすることもあるため、特に場中に株価を見ることができない個人投資家の方には逆指値注文が有効となります。

添付の株価チャートをご覧ください。さくらインターネット株は12月16日に突如株価が急騰しました(①)が、あらかじめ直近高値である11月24日の317円(②)を超えた株価で逆指値の買い注文を出しておけばこの日に買うことができました。これは25日移動平均線からプラス10%以内の水準です。

さくらインターネット(3778) 日足チャート

(出所:マーケットチェッカー2)

逆に、株価がすでに大きく上昇した後は、天井をつけて大きく下がってしまうリスクが付きまといます。例えば添付の株価チャートのインフォテリア株は1月15日に一時前日比で20%以上高い1,390円まで上昇しましたが、そこからわずか2時間で株価は831円まで、40%も下落してしまったのです(③)。もし高値付近で買っていたら、あっという間に大きな損失を抱えるはめになっていました。

安く買えなかった場合はどうすればよいか?

では「初動」、つまり株価の25日移動平均線からのかい離が小さい段階でうまく買うことができなかった場合はどうすればよいでしょうか。

原則としては、押し目を待つことになります。できれば25日移動平均線近辺まで株価が下がってくれば良いのですが、勢いがある銘柄はそこまで下がらずに押し目を形成することが多くあります。

例えばインフォテリア株は12月17日に986円(④)を付けた後12月25日の565円(⑤)まで下落しましたが、そこから反発しました。12月25日の終値は592円と、安値565円から5%ほど上昇しています。そこで、翌18日に600円近辺で新規買いし(⑥)、買った後に565円割れを損切りとする逆指値の売り注文を出しておきます。

インフォテリア(3853) 日足チャート

(出所:マーケットチェッカー2)

短期間で株価が大きく上昇したテーマ株は乱高下しやすいため、損切り価格の設定は必須です。そのため、上昇途中とか下落途中というような、明確な損切り価格が設定できないタイミングでの安易な買いは好ましくありません。押し目からの反発直後を狙うべきだと思います。

欲張らずに有り難く利食いを進める

首尾よく上昇初期の安値や押し目でこうしたテーマ株を買うことができた場合、いつ利食いをするかというのも非常に悩ましいところです。

上昇のスピードがそれほど速くなければ、移動平均線を割り込んだら売りとすれば十分高値圏で売ることができます。しかし急騰しているテーマ株の場合、移動平均線からのかい離率が尋常でないほど拡大しています。そのため、仮に移動平均線割れを待って利食いしようとすると、高値からかなり大きく下がってから売ることとなり、せっかくの利益が吹き飛んでしまいます。

筆者はあるテーマ株につき、上昇スタート時の株価の2倍を超えたあたりから少しずつ売却をはじめ、3倍、4倍、5倍と上昇するごとに利食いを進めていきました。そして、現時点での高値をつけたころにはほぼ全てを売り終わっていました。もちろん、そこからさらに大きく上昇することもありますが、経験上どんなに上昇しても底値から10倍が高値のメド、通常は5倍になれば十分満足すべきで、株価が50倍とか100倍になることはめったにありません。

わずかな可能性に賭けて、株価が3倍、5倍になっても全く利食いをしないのはよくありません。「利食い千人力」とか「頭としっぽはくれてやれ」などという相場格言がありますが、天井まで保有株を持ち切ろうと思うのではなく、ある程度上昇したら有難く利食いを進めていくことが、急騰したテーマ株の場合は望ましいと思います。

株価が急騰することの多いテーマ株は、短期間で手っ取り早く利益を稼げるため多くの個人投資家が参戦します。しかし急騰するということは、逆にいつ急落しても全くおかしくないということも意味します。買いのタイミングが悪ければ、そこから数日で株価が半値になってしまうことも珍しくありません。

そして株価が急騰する銘柄を事前に買っておくことはまず不可能です。たまたま保有していた銘柄がテーマ株として上昇したり、上昇の初動でうまく拾えたらラッキー、という程度にとらえ、無理に高値を追いかけて買わないようにしましょう。