今回は年初1回目ということで、年末年始恒例の前年振り返りと本年の投資戦略についてです。単に「今年の予想」を述べるのではなく「相場の変化にどう対応していくか」を中心に、より実践に役立つ内容でお話ししたいと思います。

まずは2015年の日本株を振り返る

皆様明けましておめでとうございます。2016年も引き続き個人投資家の皆様へ、実践的な知識・情報の提供に努めてまいりますので何卒よろしくお願いします。

まず、2015年の日本株を振り返ってみましょう。日経平均株価の2015年末終値は19,033円71銭となり、2014年末の17,450円77銭から9.1%上昇しました。

高値は6月の20,952円71銭、安値は1月の16,592円57銭ですが、8月~9月にかけていわゆる「チャイナ・ショック」により日経平均株価も20%近い急落となりました。

ですから年間の動きとしては、前半がじり高、夏にチャイナ・ショックで急落後、11月にかけて下げ幅の7割方を戻したものの12月に再度少し下げた、という形です。

ただ、個別銘柄に目を向けるとその値動きはバラバラで、どの銘柄に投資していたかにより年間の投資成績は大きく異なる結果となっています。業種別でみると医薬品、小売、食料品といった内需関連の銘柄の上昇率が高く、逆に鉄鋼・海運・鉱業といった景気敏感株は大きく下落しています。

このことから、世界的な金融緩和により全体として株価は値上がりしていること、それにもかかわらず世界経済の景気自体はそれほど良くなっていないことがわかります。そして、世界景気に関係なく独自に業績を伸ばしている個別銘柄は素直に買われていたのも事実です。

個別銘柄の2015年年間値上がり率上位100銘柄をみると92位までが上昇率100%超え、一方値下がり率上位50銘柄は下落率50%超えという状況です。いかに弱い銘柄を早めに見切り、強い銘柄につくかがパフォーマンスに大きく影響しました。

2016年の日本株の投資戦略は

では、2016年の日本株はどのような点に注意して臨めばよいでしょうか。

2016年も2015年と同様二極化相場は続き、個別銘柄によって株価の動きが大きく異なるという前提で銘柄を選んでいくべきだと思います。アベノミクス相場が開始してからの約半年間(2012年12月~2013年5月)は何でも上がる全面高の相場でしたが、それ以降は「強い銘柄はより上昇、弱い銘柄は全く上がらない」という二極化相場がずっと続いています。この流れがいつまで続くかは分かりませんが、現に足元の相場が二極化相場である以上、強い銘柄、すなわち好業績が続いている銘柄を投資候補としていく戦略を取るのが常道です。

強い銘柄の探し方は、例えば日々の年初来高値更新銘柄をリストアップし、そこから四季報などをみて好業績が続いている銘柄をピックアップします。その銘柄の株価チャートをチェックし、上昇トレンドでかつ25日移動平均線からの上方かい離が大きくない(10%未満)タイミングで新規買いをします。その後下降トレンドに転じたら一旦売却し、再度上方トレンドへ復帰したら買い直します。筆者はこうした作業を繰り返した結果、2015年の年間上昇率ランキング上位100銘柄のうち33銘柄、上位10銘柄でみればそのうち6銘柄を日々の株価ウォッチリストに入れ、かつ実際に売買することができました。

2016年の「高値」「安値」の予想はする必要なし

年末年始のこの時期は、企業経営者やアナリストなどの専門家が、日経平均株価の高値や安値、為替レートの向こう1年間の予想をするのが恒例となっています。でも、これらについては一切無視して構いません。そして、自分自身で2016年の株価や為替レートの見通しを予想する必要もありません。なぜなら、こうした「予想」はまず当たらないからです。

現に、昨年初の時点でチャイナ・ショックが起こって世界中の株価が急落することを予想できていた人はどれだけいたでしょうか。筆者は、100%に近い確率で当たるものでないなら、予想をすることや予想を参考にすること自体無意味だと思っています。

先日のコラムでもお伝えしましたが、私たち個人投資家にとって最も重要なのは、将来の株価を「予想」することではありません。株価の値動き、つまり「トレンド」の変化に沿った売買をしていくことなのです。仮に、今後為替レートが大きく円高に振れたり、チャイナ・ショックの再来が起きて株価が大きく値下がりすることがあったとしても、その初期段階で株価は下降トレンドに転換します。下降トレンドの初期段階で保有株を売却すれば損失は最小限に抑えられます。そしてショックが落ち着き再度上昇トレンドに転じたら買い直せばよいのです。これ以上は下がらないとか、ここから大きく上がるはずなどと変に「予想」してしまうと、想定外の株価下落で大ダメージを受けてしまいかねません。

2016年は「攻め」より「守り」を重視した戦略を

2016年の日本株に影響を与える点として最も注意すべきは為替レートの円高です。過去のデータから、アメリカが利上げに転じた後のドル-円相場は円高に振れることが非常に多いという点を無視することはできません。

仮に、今後ドル-円相場が円高方向に進めば、当然日本株にもマイナスの影響を与えます。円高が市場参加者の予想以上に進展した場合、チャイナ・ショック時のように好業績の銘柄であっても株価が大きく下がってしまう恐れが高まります。どんなに好業績が期待できる銘柄であっても、下降トレンドに転換したら保有株を一旦売却するなど「守り」を重視すべきです。

2015年は「チャイナ・ショック」による急落により肝を冷やした個人投資家の方も多かったことでしょう。でも、2008年のリーマン・ショックに比べればチャイナ・ショックの規模は3分の1程度です。アベノミクス相場の起点からみれば日経平均株価で2倍以上、個別銘柄に至っては底値から10倍以上に上昇した銘柄がゴロゴロしているのが現在の状況です。これからの相場は、いつチャイナ・ショックを超える急落が起きてもおかしくないという心構えで臨むべきだと思います。

チャンスが到来したらしっかり買いを入れるものの全力ではなく7~8割程度に抑える、相場全体が調整局面に入ったら強い銘柄であっても買いポジションを少し落とすようにするなど、「いかに大きく勝つか」よりも「いかに負けを小さくするか」を重視しましょう。

「ADA指数」で日本株全体のトレンドの強さを図る

筆者のブログ「公認会計士足立武志ブログ」では、「ADA指数」というものを日々公開しています。

ADA指数とは、筆者の投資可能資金のうち、実際に株式へ振り向けている資金の割合を示したものです。詳しい説明はブログ内にて行っておりますが、簡単に言えば日本株全体の強さ・弱さを表したものと考えてください。

筆者はトレンドに沿った順張り・トレンドフォローの戦略をとっていますから、個別銘柄の中に上昇トレンドのものが増えてくれば、株式に振り向ける資金を増加させます。逆に下降トレンドの銘柄が増えてきたら株式に振り向ける資金を減らしキャッシュで温存する割合が高くなります。

したがって、ADA指数が高いときは日本株全体として上昇トレンドにある個別銘柄が多いため強気をすべき局面、逆にADA指数が低い時は下降トレンドにある銘柄が多いため守りを重視してキャッシュポジションを高める時期と判断できます。

また、高かったADA指数が下がっているときは、上昇トレンドから下降トレンドに転換した個別銘柄が増えているため徐々に守りを固める局面と判断します。逆に低かったADA指数が上昇しているときは、上昇トレンド転換銘柄が増えているため徐々に強気とする局面となります。

実際、チャイナ・ショックの時期にはADA指数が急速に下落していますが、これと実際の日経平均株価の推移と照らし合わせて、筆者がどのタイミングで強気から徐々に守りに転じているかを確かめていただければ、今後の参考になるのではないかと思います。もちろん今後のADA指数をみていただければ日本株全体のトレンドの状況は一目で分かるはずです。

個人的には夏の参議院選挙に向けて株高になっていくことを望んでいますが、将来の株価がどうなるかは神のみぞ知るところです。日経平均株価が25,000円になっても15,000円になってもよいように、株価のトレンドに逆らわずに売買をすることが、利を伸ばし損を小さくするためにとても重要なことだと思います。