今回は、マンション傾斜問題をきっかけに株価が急上昇した銘柄を題材に、こうした銘柄への対処法を考えてみたいと思います。買いタイミングが非常に重要となる「材料株」、実際の株価の動きを見ながら検証していきます。

今後の業績向上の期待感から関連銘柄が軒並み大きく上昇

マンション傾斜問題は、旭化成建材のみならず、業界全体の問題にまで発展しつつあります。想像力豊かな株式市場の参加者は「マンション傾斜問題が深刻化すると逆に恩恵を受けるであろう銘柄」を探して物色をはじめました。

例えば、三井住友建設(1821)がストップ安まで急落した10月14日には、今後地盤調査の需要が急速に増えるとの思惑から、地盤ネットホールディングス(6072)がストップ高となりました。さらに14日は一時大きく上昇するも押し戻された土木管理総合試験所(6171)も、16日以降株価が急騰しました。また、14,15,16日とほとんど反応がなかった長大(9624)は、20日から突如株価が急上昇を始めました。

こうした株価の急上昇をみると、「ここからもっと上昇するかも」とつい飛びつきたくなるのが個人投資家の性です。でも、そんな時こそ一呼吸おいて、果たして今から新規買いしてもよいものか、よく考える必要があります。

できるだけリスクの少ない買いタイミングを探る

では、地盤ネットホールディングスの株価チャートを見ながら、比較的リスクの少ない買いタイミングを探っていきましょう。

「リスクの少ない」とは、失敗して損切りとなった場合の損失が許容範囲内に抑えられるという意味で考えてください。

筆者が実践している「株価トレンド分析」では、移動平均線(筆者は主に25日移動平均線)を割り込んだときに損切りとします。ですから、25日移動平均線からのかい離ができるだけ小さいタイミングで買うことが、リスクの少ないタイミングとなります。

地盤ネットホールディングス(6072) 日足チャート

株価が急騰したのは10月14日の午後からでした。このときの25日移動平均線は365円近辺でしたから、もし400円前後であれば、損切りの際の損失率は10%程度で済みます。場中に株価を見られる方であれば、このあたりで買うことができればラッキーです。

しかし、場中に株価を見られない個人投資家の場合、場が引けた後、マンション傾斜問題により地盤ネットホールディングス株がストップ高したことをはじめて知ることになります。

そこで、翌15日に新規買いするかどうか検討します。好材料が出現して株価が大きく上昇しても、翌日の寄り付き近辺で高値を付けて上昇が終了してしまうケースが結構あります。また、すでに14日の終値からの25日移動平均線のかい離率が約20%に達しています。15日の寄り付きが14日終値付近で始まっても損切り時の損失率が20%、寄り付きが高く始まればそれ以上の損失率になります。それでもよいからどうしても買いたい、というのであれば15日に買えばよいと思いますが、大幅高の翌日の買いは慎重を期すべきというのが筆者の個人的な感覚です。

調整後の「高値超え」で新規買いするという戦略

結局、15日の株価は前日比で下落しました。株価上昇がすでに終了してしまった可能性も大いに考えられる株価の動きです。その一方で、株価が下がったことで損切りした場合の想定損失率は低減しています。そこで、翌16日に新規買いし、25日移動平均線割れで損切りというのが1つの方法です。

実は、16日については、もう1つの戦略があります。それは、14日の高値を超えたら新規買いするという方法です。

確かに、14日の高値超えで新規買いした場合、その後株価が下落したならば損切りの際の損失率が大きくなってしまう懸念はあります。しかしその一方で、14日の高値を超えるというのは株価上昇がまだ継続していることを示す重要なサインでもあるのです。

場中に株価を見られなくとも、14日の高値の1円上であらかじめ逆指値の買い注文を入れておけば、16日に新規買いすることができました。

なお、14日の高値ではなく、9月17日につけた直近高値469円を超えたところで新規買いとするという考え方もあります。

筆者であれば、遅くとも新規買いは16日までにとどめます。19日以降はさらに株価が上昇しており、25日移動平均線からのかい離率が30%以上と許容範囲を超えてしまっていて、高値掴みの危険性が増しているからです。

非常に悩ましい「売り時」の問題

さて、14日~16日に買えたとして、次に問題になるのは「どのタイミングで売るか」です。

まず、買った後すぐに株価が下落してしまった場合は25日移動平均線割れで損切りが基本ですが、損失率が10%を大きく超えてしまうのであれば、買値から10%の下落で損切り、といった対処もやむを得ないでしょう。

そして、株価が上昇した場合も、原則として、保有株を売却するタイミングは25日移動平均線を割り込んだときです。ただ、今回のように短期間で株価が急騰した場合は、25日移動平均線割れを待っていると、ほとんど利益が出ない、場合によっては損切りになってしまうということも十分あり得ます。

その一方で、25日移動平均線を割り込むことなく再度上昇し、結局は非常に大きな上げにつながることもあります。25日移動平均線割れを待たずに早めの利食いをするかどうか、非常に悩ましいところです。

はっきり申し上げて、買った株がいつ高値をつけるかというのは後にならなければ分かりません。自分なりに売却のルールを決めて実行するしかないと思います。

筆者は、買値の2倍以上になった場合は、上昇トレンド途中であっても利食いすることがありますが、20%~30%程度の上昇であれば、上昇トレンド途中の売りはあまりしません。また、一度大きく上昇したものの、結局買値近辺まで下がってしまったときは、損失を避けるため、25日移動平均線を割り込む前に損益トントンで売却してしまうこともあります。

非常に短くなった「材料株」の賞味期限

ところで、筆者が最近強く感じているのが、「材料株」の賞味期限が非常に短くなっているという点です。

例えば、好業績が続いていて、それを好感した買いにより株価が上昇している銘柄(ここでは「業績株」と呼びます)は、株価が2~3カ月の間25日移動平均線を割り込まずに上昇を続けることも珍しくありません。そして短期間の調整の後に、再度株価は上昇を続け、振り返ってみれば数年間で安値から10倍以上に上昇するケースは多く見かけます。

一方で、足元の業績は今一つなものの、将来の業績向上が期待できるようなプラス材料に反応して株価が上昇する銘柄(これを「材料株」と呼びます)は、ひとたび好材料の出現により短期間で株価が上昇しても、すぐ(1~2週間ほど)で天井を付けてしまうケースが多くみられます。好材料が出てストップ高した翌日の寄り付きが高値となってしまうことも全く珍しくありません。

「材料株」は深追いせず確実に利食いするのも一策

今回取り上げた地盤ネットホールディングスも、10月14日の上昇スタートから27日に714円の高値を付けるまで2週間弱しかたっておらず、そこからは下落を続けています。

ですから、まずは足元で株価が上昇している銘柄が「業績株」なのか「材料株」なのかを見極める必要があります。この見極めは難しくありません。業績以外の材料(マンション傾斜問題による地盤ネットホールディングスの株価上昇は典型例です)により株価が大きく反応するのが材料株だからです。

その上で、材料株を首尾よく上昇の初期段階で買った場合、あまり深追いをせず、上昇途中でもそこそこの利益で満足して利食い売りをした方が無難だと思います。

例えば、5日移動平均線を割り込んだところで売却をするのが1つの方法です。今回の地盤ネットホールディングスであれば28日に大陰線を引いて5日移動平均線を割り込んだ翌29日の寄り付きの571円付近です。

また、安易に押し目買いをすることも避けた方が良いと思います。材料株の場合、押し目買いのつもりがすでに相場が終わっている、ということも多いからです。筆者は、買うとしてもできるだけ25日移動平均線近くまで引き付けて、そこからの反発直後に買うようにしています。例えば11月6日は25日移動平均線近辺まで下がったところで小反発していますので、ここで買って25日移動平均線割れで損切りとするのです。

高値掴みをするとあっという間にそこから大きく下落してしまう恐れのある材料株、買いタイミングをシビアにして臨むようにしましょう。