投資経験の浅い個人投資家の方は、「割安な銘柄」や「高利回りの銘柄」を見つけると、「ラッキー!」と飛びついてしまう傾向にあるようです。でも、本当は「なぜ?」と反応すべきなのです。その理由をこれからご説明していきます。

「PER5倍の銘柄がなぜ5倍のまま放置されているか」を考えることこそが重要

株式投資では、「企業価値に比べて割安な銘柄を買う」のが基本とされています。そして、割安かどうかを判定する際に使われるのが「PER」「PBR」「配当利回り」といった指標です。

例えば、PERの場合、15倍~20倍程度が平均的な値といわれています。ですからPERが10倍の銘柄があればかなり割安、PER5倍の銘柄ならば超割安ということになります。

でも、PERが5倍、10倍の銘柄を見つけたからといって「割安な銘柄を見つけた。ラッキー!」と飛びついて買ってはいけません。「そもそもなぜこの銘柄は割安の状態で放置されているのか?」と違った視点から考えてみてください。

ご存じの通り、株式市場には個人投資家だけでなく、機関投資家と呼ばれるプロの投資家や、百戦錬磨の外国人投資家など、様々な投資家が参加しています。個人投資家より情報量がはるかに豊富なプロ投資家が、明らかに割安な銘柄に気づかずに、そのまま放置することなどあるでしょうか?

そう考えると、低PERで放置されている銘柄は、プロ投資家が見向きもしない見かけ上「割安」な状態にあるだけといえます。これが本当に割安といえるかどうか疑問です。

本当に割安の状態で放置されている銘柄もないことはないが・・・

低PERの銘柄が、低PERで放置されている理由はいくつか考えられますが、究極的には次の①か②のいずれかになります。

  • 企業が発表する業績予想より実際の業績が悪くなることを多くの投資家が予想しているため株価が下がり、見かけ上PERが低くなっている
  • 単に知名度がない、もしくは不人気であるため、低PERで放置されている

もし、①の理由で見かけ上PERが低くなっているだけなら、早晩業績の下方修正が行われる可能性が高いため、手出しは無用です。

一方、②の状態の銘柄であれば、本当に割安にもかかわらずそのまま放置されていることになります。実際そのような銘柄もないことはありません。

しかし厄介なのは、私たち個人投資家は、低PER銘柄として割安の状態で放置されている理由が①と②のいずれであるのかを正しく知ることができないという点です。さらに、仮に②の理由である可能性が高いと判断できたとしても、株価が上昇するかどうかはまた別の話だということも非常に悩ましいところです。「割安=株価上昇」という図式は成り立たないことも多々あるからです。

株価のトレンドに従っていれば概ね対応が可能

こんなとき、例えば筆者が実践している「株価トレンド分析」、簡単に言えば上昇トレンドで買い・保有、下降トレンドで非保有・保有株売却とする方法を使えば、低PERの理由がどんなものであっても概ね対応が可能です。

例えば、①の理由で見かけ上低PERとなっているに過ぎない銘柄は、株価が下降トレンドになっていることが非常に多いです。したがって、「下降トレンドの銘柄は買わない・保有しない」とするルールに従い、これらの銘柄を回避することができます。

また、②の理由の銘柄であっても、相場環境が悪ければ全く株価が上昇しないことも珍しくありません。ですから、これは、と思う銘柄を見つけても、株価が上昇トレンドに転じるまでは新規買いしないようにするのです。

この方法でうまく行かないケースとすれば、①の見かけ上低PERの銘柄が上昇トレンドになってしまっている場合です。でも、この場合も再度下降トレンドに転換したら速やかに売却・損切りすれば大きな痛手を負うことなく済みます。

最も怖いのは、①の銘柄がたまたま上昇トレンドにある状態で決算発表や業績予想の修正により突然急落することです。したがって、決算発表時期は、よほど好業績かつ低PERで②の可能性が高いと予想される銘柄でない限り、実際に決算発表が終わるまでは手を出さずにいるという戦略も考えられます。

配当利回りでも考え方は同じ

配当利回りで銘柄を選ぶ際も、考え方は同じです。多くの銘柄で配当利回りが2%以内に収まっている中、配当利回りが5%を超えている銘柄をみつけたら、「こんなに配当利回りが高い銘柄を発見した。ラッキー!」と思ってはいけません。「なぜこの銘柄はこんなに配当利回りが高いのか?」とまずは疑ってかかるべきです。

先ほどの低PER銘柄の話と同様ですが、配当利回りが5%の銘柄の存在を知っている投資家はたくさんいるはずです。高配当利回りのランキングは雑誌やネットで頻繁に掲載されていますし、スクリーニングをかければ個人投資家でも簡単に調べることができます。

にもかかわらず、高い配当利回りのまま放置されているということは、この配当利回りの裏には何か潜んでいる可能性が高い、と思わなければなりません。

高い配当利回りで放置されている理由として考えられるのは究極的には以下の2つです。

  • 今後業績悪化が見込まれるため、今の配当金が大きく減らされる可能性が高いと投資家が判断している
  • 単に知名度がない、もしくは不人気であるため株価が安値で放置され、その結果配当利回りが高くなっている

特に、東証1部上場銘柄で売買高も多い銘柄(つまり多くの投資家が知っている銘柄)の配当利回りが他の銘柄より明らかに高いケースは要注意です。みんながその銘柄の配当利回りが高いことを知っていながら、それでも株が買われない状況にあるからです。

上のようなケースはともかくとして、高配当利回りの銘柄の場合もその理由が①か②を正確に当てることは困難です。やはり、株価のトレンドに従った売買を行うのが無難だと思います。

筆者は、低PERランキングや高配当利回りランキングはいっその事無視してもよいと思いますし、筆者自身、そのようなランキングを使った銘柄選びはしていません。

他の銘柄よりPERやPBRが非常に低い、もしくは配当利回りが非常に高い銘柄があれば、逆に怪しまなければなりません。株式投資の世界でも、「おいしい話」はそうそうないものです。