株式投資の「リスク」を正しく理解しよう

株式投資とは、見えない未来に向けて自らの資金を投下する行為です。将来何が起こるかは誰にも分からないのですから、株式投資はリスクを避けては通れません。

しかし、もちろん過度にリスクを恐れていては株式投資をすることができません。リスクの性質を知り、リスクとうまく付き合うことができれば、株式投資で資産を増やすことは十分に可能です。逆に、リスクを理解せずにやみくもに株式投資をしていると、いつかリスクにつぶされてしまうかもしれません。

そこで今回は、株式投資にかかる2つのリスクについてご紹介するとともに、それらのリスクに対してどのように対応していけばよいか、筆者なりの考えをお話ししたいと思います。

株式投資のリスクは大きく分けて2種類

株式投資の2つのリスクとしてあげられるのが、個別銘柄に起因する「個別銘柄リスク」と、マーケット全体の環境に起因する「市場リスク」です。

専門用語を用いて、個別銘柄リスクのことを「アンシステマティックリスク」、市場リスクのことを「システマティックリスク」と呼んだりもします。

ところで、「リスク」と聞くと、損をしてしまうリスクをイメージしがちですが、投資・資産運用の世界でリスクといえば、「価格の変動」のことを言います。

つまり、「リスクが高い=値動きが激しい」、「リスクが低い=値動きが緩やか」ということです。

リスクが高いと値動きが激しいので、大きく利益を得る可能性もある一方、大きく損失を被る可能性も高まります。ただ、利益を得る分には特段問題とはならず、損失を被る可能性が問題となるわけですから「リスクが高い=大損の危険が高い」と考えてしまって構いません。

したがって、本コラムでは、「リスク」のマイナス面を中心にとらえ、「リスク=株価が値下がりすること」として説明していきます。この方が読者のみなさんにとっても理解しやすいと思います。

「個別銘柄リスク」を軽減させる方法とは?

個別銘柄リスクは、各企業の業績の変動、不祥事の発生、重大な事故、増資、倒産などの事象により株価が下落するリスクです。こうした株価の下落は、基本的には事象が生じたその銘柄のみに限られ、他の銘柄に波及するものではありません。

したがって、個別銘柄リスクは投資する銘柄を複数に分散させることで軽減させることができます。

例えば、投資可能資金の全てを1銘柄に集中していて、その銘柄が倒産してしまえば資金の全てを失ってしまいます。でも、投資可能資金を10銘柄に分散して投資すれば、そのうちの1銘柄が倒産しても、資金の10%を失うだけで済みます。

また、銘柄選びをする際、今後業績が向上しそうな銘柄を選ぶ、倒産の危険性が高い銘柄は避ける、というようにすれば、さらに個別銘柄リスクを減らすことが可能です。

そして、業績の変化は株価のトレンドとして現れることが少なくありません。そこで、株価が上昇トレンドのときは保有し、下降トレンドの時は保有しないというようにすれば、業績悪化銘柄の保有をある程度回避することができるため、個別銘柄リスクの軽減に役立ちます。

「市場リスク」は株を保有している限り避けることができない

一方の「市場リスク」は、マーケットの環境に起因するリスクです。これは個別銘柄とは関係ありません。例えば、何か大きな出来事が生じて株式市場が急落するようなことがあると、ほとんど全ての銘柄の株価が大きく下落することになります。これが市場リスクです。

この市場リスクは個別銘柄リスクと異なり、いくら複数の銘柄に資金を分散させたとしても株式を保有している限り回避することができません。市場リスクを軽減させるには保有する株式を減らすしかありません。もちろん、株式を何も保有しなければ市場リスクを完全に回避できます。

したがって、マーケットの状況に合わせて持ち株を増減させるという戦略が有効となります。

例えばマーケット全体の値動きを表す株価指数(日経平均株価やTOPIXなど)のトレンドを注視し、株価指数が上昇トレンドの間は株式への投資資金を増加させてリスクを取りにいき、逆に株価指数が下降トレンドになったら投資資金を減少させて現金化し、その後の株価下落に備えるという戦略です。

長期投資はリスクの丸抱えにつながる

株式投資を行うにあたってはリスクとうまく付き合っていく必要があります。マーケットの状況や株価のトレンドなどに応じて、リスクを取って勝負すべきかどうかという「押し引き」の判断が重要です。

確かに株式投資のリスクは高いですが、複数の銘柄に分散して投資すること、状況に応じて株式への投資資金を増減させることでリスクをコントロールすることができるのです。株式市場はいつでも開いているのですから、「危ない」と思ったら持ち株を減らして株式投資のリスクを軽減させ、その後状況が落ち着いてから買い直してもよいのです。

その点、バイ・アンド・ホールドと呼ばれる長期投資は、リスクをコントロールするのではなく、リスクを丸抱えすることにつながりますので十分に注意しなければなりません。

長期投資であっても、複数の銘柄に資金を分散させることで「個別銘柄リスク」をゼロに近い水準にまで減らすことはできます。しかし、株式を長期間保有し続ける限り、常に「市場リスク」にさらされることになります。

そして、「積立型」で投資するような場合、月日が経過するにつれて投資資金も積み上がっていくため、市場リスクも増大してしまいます。

戦後~バブル時までのような、高成長が続き株価も長期上昇が続いていたような頃であればそれでもよかったのですが、バブル崩壊以降のように、長期的に下降トレンドが続くような場合は、市場リスクが悪い方に働けば、大きな損失を被ってしまいかねません。

やはり、長期上昇相場が終焉した今の日本株においては、投資銘柄の分散により個別銘柄リスクを軽減させるだけでなく、状況に応じて投資資金を増減させて、市場リスクをコントロールすることが、資産を大きく減らさないためには必要だと筆者は強く感じます。