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米国はどこまで円安を許容するか?
窪田 真之
3分でわかる!今日の投資戦略〔平日毎朝8時掲載〕
楽天証券経済研究所の窪田真之と香川 睦が、日本株市場の分析と投資戦略をレポートします。 ともに元ファンドマネージャーであり、国内外のマーケット動向に精通。運用者、分析者としての幅…

米国はどこまで円安を許容するか?

2017/1/11
昨年11月以降、急激なドル高(円安)が進んだが、足元、ややドルの上値が重くなりつつある。つれて円安を頼りに上昇してきた日経平均も上値が重くなりつつある。
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執筆:窪田真之

今日のポイント

  • 昨年11月以降、急激なドル高(円安)が進んだが、足元、ややドルの上値が重くなりつつある。つれて円安を頼りに上昇してきた日経平均も上値が重くなりつつある。
  • 日米金利差拡大が円安を招いてきたが、トランプ次期大統領が、円安を容認しているとは限らない。トランプ氏から円安を問題視する発言が出ると、円高に反転するリスクがあり注意を要する。

(1)ドル円為替を動かす3大要素、中でも最も重要なのは日米金利差

ドル円為替レートを動かす要因は無数にあるが、重要なものに絞れば以下の3つです。

  • 日米金利差
  • 世界の投資マネーによる「リスク・オン、リスク・オフ」切り替え
  • 政治の介入

最も重要な要素は、日米金利差です。昨年11月以降、円安(ドル高)が急伸したのは、米金利が上昇する中、日本の金利が低位にとどまり、日米金利差が拡大したことによります。今後、日米金利差がさらに拡大するならば、より高い金利を求めて、円からドルへ資金が流れると考えられます。

日米2年金利差と、ドル円為替レートの推移:2008年1月―2017年1月(10日まで)

(注:楽天証券経済研究所が作成)

グラフを見ると、日米金利差が縮小した2008-11年に円高(ドル安)が進み、日米金利差が拡大しつつある2012-15年に円安(ドル高)が進んでいることがわかります。

(2)次に重要なのが「リスク・オフの円高」「リスク・オンの円安」

ドル円は、日米金利差だけで動いているわけではありません。2016年は、日米金利差が縮小していないのに、一時大幅な円高(ドル安)が進んでいます。これは、「リスク・オフの円高」です。

2016年前半は、世界経済への不安が高まり、世界的に株が急落する中、「リスク・オフの円高」が進みました。

世界経済に不安が増えると、決まって円が安全資産として買われます。日本は、世界最大の対外純資産保有国であり、世界的にリスク資産が売られる「リスク・オフ」局面では、世界の投資マネーが避難先として入ってきます。

逆に、世界経済が順調に拡大し、世界の投資マネーがリスクを取るときは、高金利通貨が買われ、金利の低い「円」は売られます。それが「リスク・オンの円安」です。昨年11月以降、円安が進んだのは、世界的に株高が進む中で「リスク・オンの円安」が復活した面もあります。

(3)無視できない大きな力を持つ「政治の介入」

ドル円を動かすもう1つの要因で、無視できない大きな力を持つのが「政治の介入」です。過去の経験則では、購買力平価(企業物価ベース)から20%を超える円安が進むと、円安を問題視し、円高に誘導しようとする政治圧力が米国から出ます。

1983年、ドル円は、購買力平価対比で20%以上の円安にふれました。この時、米国は「強いドルは国益」として、ドル高を許容していました。ところが、その後、日本の貿易黒字が拡大、米国の貿易赤字が拡大し、日米貿易摩擦が起きると、米国は、一転して「円安の是正が必要」と主張を変えました。

1985年12月のプラザ合意で、米国主導で「円安是正」の合意が行われると、国際的な協調介入によって、急激な円高が進みました。

このように、米国が円安を問題視して政治圧力をかけるようになると、大きな円高圧力がかかります。

購買力平価(企業物価ベース)とドル円為替レートの動き:2007年1月―2016年12月

(出所:購買力平価(企業物価)は公益財団法人 国際通貨研究所)

昨年も同様の事態が起こりました。昨年、一時1ドル125円と、購買力平価から25%を越える円安が進みました。そこでトランプ次期大統領、ヒラリー・クリントン氏、ルー財務長官などが、一斉に日本を円安操作国として非難し始め、その後の円高急伸を招きました。

(4)気になる今後のトランプ発言

今、再び、急激な円安が進んでいますが、今のところトランプ氏は為替について、重大な発言はしていません。ただし、トランプ氏が、円安を許容しているとは、いえません。トランプ氏は、現在、ドル高(円安)が米国の国益になるかならないか、見極めようとしていると考えられます。

トランプ氏は、大規模な景気刺激策を出動する方針ですが、そこで問題になるのは、インフレが過熱することです。そうなると、トランプ氏を支持した労働者層の不満を招くことになります。

ドル高が進むと、輸入物価が下がるので、インフレを抑えることができます。過激な景気刺激策を実行しつつ、ドル高によってインフレを抑えることができれば、いいとこずくめとなります。

トランプノミクスと同様の大規模財政出動を行った、1980年代のレーガノミクス(レーガン大統領のもとで実行された経済政策)時にも、それはあったことです。インフレを抑える効果があるドル高に対し、レーガノミクスの元で米政府は、当初「ドル高は国益」と言っていました。

ところが、景気刺激策とドル高の「いいとこ取り」はいつまでも続きません。レーガノミクスの時は、貿易赤字が拡大し、その後、ドル高を問題視するようになりました。

トランプノミクスでも、いずれ景気刺激策とドル高のミックスが貿易赤字拡大を招き、米国の製造業を苦しめることになると考えられます。

トランプ氏は、今のところ、メキシコに生産を移そうとしているフォードやトヨタを批判して、メキシコ移転をやめさせ、米国内の投資を増やすことで、ドル高の問題をクリアしようとしているように思われます。いずれ、そうした小手先の対処策ではどうにもならない影響が米貿易赤字に表れることになりそうです。

短期的に問題になることは考えていませんが、ドル高の悪影響が少しずつ米経済で表面化し始めるときには、警戒が必要となります。

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