執筆:窪田真之

今日のポイント

  • 外国人の日本株買いの勢いが増してきている。海外の年金基金や政府系ファンドの一部が日本株の組み入れを引き上げている可能性がある。
  • 今週の注目はFOMCの結果発表。予想通り利上げがあった時に、そこでドル高の材料が一旦出尽くしとなるか注目。

(1)外国人買いで売買高が増加

先週、外国人の日本株買いがさらに積極化しました。世界景気の見通しが好転したことを受けて、外国人投資家が、「世界景気敏感株」である日本株の組み入れを急いでいるようです。

外国人は、買う時は上値を追って買い、売る時は下値を叩いて売ってくる傾向があります。今年も外国人の売買に振り回された1年となりました。年前半は、外国人に売り叩かれて、日経平均は急落しました。今はその逆です。外国人の積極買いで、日経平均は上昇が続いています。

「外国人」と一口に言っても、いろいろな種類があります。日本株の下落初期に、先物を使って素早く動くヘッジファンドもあれば、下落が始まってかなり時間がたってから下値を叩いて売る外国人もいます。

一般的にヘッジファンドの動きが速く、海外の年金基金や政府系ファンド(ソブリン・ウェルス・ファンド)の動きが、その後に続きます。今年前半の急落局面では、ヘッジファンドの先物売りが先行し、最後に大底圏で、産油国の政府系ファンドが売ってきました。

今回の日経平均の上昇は10月から外国人が買い越しに転じてから始まっています。初期は、ヘッジファンドの先物買いが中心でしたが、11月後半に入り、年金基金や政府系ファンドの動きも出ている模様です。現物中心に日本株にバスケット買い【注】を入れる外国人の動きが見られるようです。

【注】バスケット買い:数十銘柄の買い注文を一括して出すこと

11月から、外国人の買いが増加したことを受けて、東証の売買高が増加しています。売買高の増加は、市場のエネルギー増加を示します。売買高が増加しないと、国内投資家の戻り売りをこなして上昇していくことが難しくなりますが、売買高が増加したことによって、戻り売りをこなして上昇が続く可能性も出てきました。

日経平均と東証一部売買高:2015年8月4日―2016年12月9日

(出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成)

外国人投資家は、米大統領選挙があった11月第2週(11月7-11日)から、12月2日まで4週連続で日本株を買い越しています。まだ、データが発表になっていませんが、先週(12月5-9日)も外国人は日本株を買い越していると考えられます。5週連続の外国人買いが、日経平均の上昇ドライバーとなっています。

日経平均と外国人の売買動向(買越または売越額、株式現物と日経平均先物の合計):2016年1月4日―12月9日

(出所:東証データより楽天証券経済研究所が作成)
(注:上のグラフの外国人売買で、棒グラフが上(プラス方向)に伸びているのは買越、下(▲の方向)に伸びているのは売越を示す)

(2)今週の重大イベントは、13-14日のFOMC(米金融政策決定会合)

12月14日(水)に、米FRBが0.25%の利上げ(FF金利の誘導水準引き上げ)を発表すると考えられています。金融市場は、利上げはほぼ確実と見ていますので、利上げがあってもサプライズとはなりません。

利上げを織り込んで、ドル金利の上昇・ドル高(円安)が進んできました。利上げがあった場合に、そこで一旦材料出尽くしとなるか、あるいは、さらなる利上げを見込んでドル高が続くのか、注目されます。

また、12月後半にクリスマス休暇に入った時に、例年通り、外国人の手口が減るか否かも注目されます。私は、トランプ歓迎相場は、トランプ氏が大統領に就任する来年1月20日まで続くと考えていますが、クリスマス休暇で外国人の手口が減った時には、一時的に上昇が止まる可能性もあります。