4日の日経平均は前日比146円安の17,044円でした。4日の海外市場で1ドル116円台まで円高が進み、CME日経平均先物は16,815円まで下がっています。日経平均の短期的な下値リスクは残っていますが、長期投資では買い場と考えています。

第3四半期(10-12月期)の決算発表が続いています。決算発表と同時に通期(2016年3月期)の業績予想を下方修正し、株価が急落する企業が多く、警戒されています。今日は、今年になってから業績予想を大きく上方修正あるいは下方修正した企業のリストを掲載し、その要因を分析します。

(1)通期の増益率見通しは、低下してきている

最近、通期業績予想を下方修正して売られる企業が目立つ一方、上方修正する企業はあまりありません。結果として、2016年3月期に予想される増益率の見通しは低下しつつあります。以下に、その状況を示します。

東証一部上場企業 主要837社の今期(2016年3月期)経常増減益率(会社予想):2015年12月末時点と2016年2月3日時点の比較

集計対象 社数 12月末時点 2月3日時点
全産業ベース 837社 +6.1% +4.2%
 内 金融以外 790社 +7.8% +5.6%
 内 金融 47社 ▲3.9% ▲3.9%

(注:集計対象は3月期決算企業の主要837社、IFRS・米国基準採用企業は連結税前利益を経常利益として集計、楽天証券経済研究所が作成)

(2)下方修正を発表した主要企業

下期(2015年10月以降)に入ってから、日本企業の業績を悪化させる3つの事態が発生しています。

  • 中国の製造業景況がさらに悪化、
  • 資源価格が全面安、
  • 増産見通しだった米アップル社のiPhoneが減産。

この影響を受けて、中国関連株・資源関連株・アップル関連株に、業績予想の下方修正を発表するところが増えています。

さらに詳しい説明をご覧になりたい方は、1月29日のレポート「アップル関連・中国関連・資源関連は要警戒」をご参照ください。

今期経常利益(会社予想)の下方修正額が大きい22社:昨年12月末時点の予想と2月3日時点の予想を比較

(金額単位:億円)

  コード 銘柄名 12月末時点 2月3日時点 下方修正額
1 5020 JX HLDG 1,500 ▲ 550 ▲ 2,050
2 6502 東芝 ▲ 3,000 ▲ 4,000 ▲ 1,000
3 6501 日立製作所 6,000 5,200 ▲ 800
4 1605 国際石油開発帝石 4,340 3,750 ▲ 590
5 5401 新日鐵住金 2,500 2,000 ▲ 500
6 5019 出光興産 390 20 ▲ 370
7 5411 ジェイエフイーHLDG 1,000 650 ▲ 350
8 5406 神戸製鋼所 550 250 ▲ 300
9 7011 三菱重工業 3,000 2,700 ▲ 300
10 7013 IHI 380 150 ▲ 230
11 6752 パナソニック 3,000 2,800 ▲ 200
12 9101 日本郵船 800 660 ▲ 140
13 9107 川崎汽船 200 70 ▲ 130
14 6902 デンソー 3,830 3,700 ▲ 130
15 6479 ミネベア 625 500 ▲ 125
16 7240 NOK 700 580 ▲ 120
17 7012 川崎重工業 1,000 890 ▲ 110
18 9104 商船三井 420 320 ▲ 100
19 6988 日東電工 1,200 1,100 ▲ 100
20 6954 ファナック 2,363 2,269 ▲ 94
21 6770 アルプス電気 595 515 ▲ 80
22 6807 日本航空電子工業 240 167 ▲ 73

(注:各社資料より楽天証券経済研究所が作成)

下方修正額の大きい企業は、ほとんどが、中国関連・資源関連・アップル関連のいずれかに該当します。東芝は、過去の不適切会計の訂正を含めて今期巨額の赤字を計上する見通しです。過去に十分な減損を積んでいなかったことから、今回、さらに赤字額が膨らむ予想となりました。東芝はそろそろ買えるのではないかという質問をよく受けますが、私は、東芝は財務内容・収益力に問題があるので、投資対象とすべきでないと判断しています。

ここにあげた企業の多くは、下方修正の発表後に株価が大きく下落しています。悪材料織り込み済で、ここから買っていけるものと、まだ悪材料が出尽くしていない、買うべきでないものに分かれます。

アップル関連株は、iPhoneの減産が1-3月で一巡すると考えるならば、株価が大きく下げた今が買い場になっている可能性もあります。今後のアップル社の動向を見ながら、判断していく必要があります。

資源関連株の中には、これ以上の資源価格下落がないと予想するならば、ここから買っていけるものもあります。

中国関連株は、来期(2016年4月以降)も警戒が必要です。中国製造業の悪化は一過性ではなく、来期も継続する可能性があります。ただし、中国の消費は高成長が続くと予想していますので、消費関連株は注目できます。

(3)上方修正を発表した主要企業

 

今期経常利益(会社予想)の上方修正額が大きい7社:昨年12月末時点の予想と2月3日時点の予想を比較

(金額単位:億円)

  コード 銘柄名 12月末時点 2月3日時点 上方修正額
1 9502 中部電力 2,000 2,300 300
2 9506 東北電力 1,150 1,400 250
3 9202 ANA HLDG 900 1,100 200
4 9531 東京瓦斯 1,620 1,810 190
5 9504 中国電力 130 300 170
6 4508 田辺三菱製薬 810 910 100
7 4528 小野薬品工業 178 265 87

(注:各社資料より楽天証券経済研究所が作成)

資源(原油やLNG)価格が下がった恩恵で、電力・ガス・空運などに今期業績を上方修正する銘柄が目立ちます。ただし、これは一過性の利益押し上げ要因に過ぎず、評価できません。電力・ガスは、燃料費が下がると、料金引き下げで消費者に還元する義務があります。燃料費が下がってから料金引き下げが実施されるまで、一時的に業績が押し上げられるだけです。来期(2016年4月以降)には電気・ガス料金の引き下げが実施され、それが来期の減益要因となります。空運会社も同様に、燃料サーチャージの引き下げなどを通じて、先行き利用者に燃料安のメリットを一部還元します。

なお、業績を上方修正する企業に、医薬品も目立っています。バイオ医薬品が新たな成長ドライバーとなっており、医薬品セクターには引き続き注目できます。

まだ10-12月の決算発表が出ていませんが、建設・土木業界も、業績好調が継続していると判断しており、注目しています。