9日の日経平均は、191円安の19,301円でした。海外発の不安材料が増えていることを受けて、外国人から先物売りが出ている模様です。日本の景気・企業業績の回復トレンドは変わらないと考えていますので、下がったところは買いのスタンス継続でいいと考えています。

今日は、まず足元の日経平均の動きを解説した後、昨日に続き、株主優待投資について、私が考えていることを書きます。

(1)原油急落が世界の金融市場に冷や水

今週は、海外発の不安材料が増えていますが、国内からは、とりたてて悪材料が出ていません。7日発表の7-9月GDP改定値ではマイナス成長がプラス成長に修正されました。9日発表の10月の機械受注では、設備投資の先行指標と言われる船舶・電力を除いた民需が、前月比10.7%増と、事前予想(1.2%の減少)を大幅に上回りました。

それでも、日経平均が下落しているのは、海外発の不安材料が増えたからです。特に、原油先物が安値を更新し、産油国の景気が一段と冷え込みそうなことが嫌気されています。原油価格の安値がこのまま長引けば、再び産油国から世界の株式に売りが増える懸念もあります。

ニューヨークWTI原油先物(期近)推移:2014年4月1日~2015年12月8日

また、ISによるテロ続発を受けて、米国世論が右傾化し、対外強硬策で知られるドナルド・トランプ氏の支持率が上昇していることも、世界の金融市場のかく乱要因となる可能性があります。

(2)株主優待目当ての投資の困った側面

ここからは、昨日のレポートの続きです。昨日は、株主優待目当ての投資のすぐれた側面について説明しました。今日は、困った側面を話します。以下の3点が挙げられると思います。

  • 優待魅力に惹かれて投資する人の一部に、財務内容や企業業績をまったく見ないで投資する傾向がある。
  • 優待魅力に惹かれて投資する人の一部に、株価をまったく見ない人もいる。気付かないうちに株価が大きく下落して損が膨らむこともある。
  • 株主優待制度が突然廃止されることがある。

それでは、上記の具体例をこれからお話しします。

(3)2010年日本航空破たんで、優待目当て投資の問題が浮きぼりになる

「優待目当ての投資は良くない」例として有名になったのは、破たん前の日本航空です。日本航空は、株主に対して、航空運賃が正規料金の半値になる株主優待券を配賦していました。日本航空は、かつて国営企業つまり「親方日の丸」企業でしたので、「まさか破たんすることはないだろう」と、財務内容を見ずに優待目当てで投資していた個人投資家が多数いたことが知られています。

破たん後に再生して再上場した現在の日本航空(9201)は、財務内容も収益力も回復し、魅力的な投資対象になっていると思います。ところが、破たん前の日本航空は、財務内容に重大な問題を抱えていました。私は、日本航空の破たん時にファンドマネージャーをやっていましたが、当時の日本航空は実質債務超過であったことから、投資不可リストに入れており、投資することはありませんでした。

「実質債務超過」とは、自己資本が実質マイナスということです。当時、表面上、自己資本はプラスでしたが、開示されている財務諸表の注記事項をきちんと見れば、退職給付債務(年金)の積み立てに大きな不足があり、差し引きすると、実質債務超過であったことがわかっていました。また、LCC(低運賃の航空会社)の新規参入で、世界的に航空会社の経営は悪化しており、米国では大手航空会社の経営破綻が相次いでいました。元「親方日の丸」企業だったからというだけで、信頼することはできない状況だったと思います。

さらに、ジャンボジェット機のリース契約にもかなりの含み損があり、財務内容を見れば、投資対象として不適切だったことがわかります。