先週の国内株市場ですが、週末6月9日(金)の日経平均終値は19,943円でした。前週末終値の20,013円からは70円ほど安くなっています。節目の2万円台は維持できませんでしたが、大きく相場が崩れるような動きにはなっていない格好です。

日経平均(日足)の動き(2017年6月16日取引終了時点)

(出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成)

この週は、大注目のイベントである米FOMCが6月13日(火)〜14日(水)の間で開催されました。イベント通過後の取引である15日(木)と16日(金)のローソク足を見てみますと、実体が短く、上下のヒゲが長めの「コマ足」が2本続けて出現しています(上の図1)。

実際に、実体の幅(終値と始値の差)を確認すると、15日(木)で16円ほど、16日(金)で12円ほどと、始値と終値がほぼ同値と言っても良いぐらいの短さである一方、値動きの幅(高値と安値の差)は、それぞれ208円、131円とまずまずの大きさになっています。つまり、「取引が終わってみれば、始値とそんなに変わらないが、取引時間中は気持ちが揺らいでいる」状態が2日続いたことになります。

そのため、ローソク足の形からは、米FOMCを受けての初期反応はネガティブというよりも、先行きの不透明感が強まり、売買に対して積極的になれない印象になっています。とは言っても、25日移動平均線がサポートとして引続き意識されていることや、16日(金)が5日移動平均線を上抜けて終えていることもあり、移動平均線からは、堅調な相場地合いは継続していると見ることができます。ただ、5日移動平均線が下向きになっていますので、今週は再び上向きに戻せるのか、このまま下向きが続いて25日移動平均線を下抜けるデッドクロスになってしまうのかが注目されそうです。

このように、FOMC後の日本株市場は節目の2万円台を割り込むなど、やや慎重に受け止めているように見えますが、FRBのお膝元である米国株市場はNYダウが最高値を更新するなど、上昇基調を続けています(下の図2)。

(図2)米NYダウの動き(日足)(2017年6月16日取引終了時点)

(出所:MARKETSPEED for Macを元に筆者作成)

「FOMC後の為替市場が円高に振れたこともあり、日米の株価指数が逆の動きをしても特におかしくはない。翌日(16日)には、円高が一服して日経平均が2万円台をつける場面も見られた。」と言ってしまえばそれまでなのですが、あらためて、今回のFOMCについて簡単にポイントを整理してみます。

今回のFOMCのポイント

  • 0.25%の利上げが決定
  • 利上げペースの見通しは変わらず(年内あと1回・来年3回)
  • 景気についてのFRBの認識は変えず
  • 保有資産の減少に言及

まず、市場の予想通り0.25%の利上げが決定されました。そして、今後の見通しについても、従来の年内1回・来年3回という利上げペースが維持されています。これに加え、今回のFOMCではFRBが保有する資産縮小について初めて言及されました。しかも、早ければ今年中の開始に含みを持たせたほか、具体的な金額やペースも示されています。

「決定した政策は予想通りだが、今後の方針についてはタカ派寄りなのでは?」というのが、今回のFOMCの印象です。会合後の記者会見でも、イエレン議長の景気や物価に対する強気の姿勢が感じ取れるものとなりました。

ただし、その一方で、FOMCの結果公表と同じ日に、5月の小売売上高と消費者物価指数が発表されたのですが、その結果は市場予想を下回りました。最近は米国の弱めの経済指標も増え始めていることから景気減速を警戒する声も出始めており、FRBと市場との間で、景気認識の「ギャップ」が生じ始めています。

NYダウが年初来高値を更新し続けていることは先ほども触れましたが、債券市場では、長期金利が今のところあまり上昇しておらず、FOMC後の米国市場では、株と債券が同時に買われる反応となっています。つまり、「米国景気はまだ弱いとは言えないが、FRBが想定するペースで金融引き締めができるほどは強くはない」と受け止めたと考えられ、程良い経済成長と金融政策の正常化という「適温相場」が継続している格好と言えます。

そのため、今後は、米国経済がFRBの想定する金融引き締めペースに耐えられるほどの強さがあるか、景気認識に対してすでにギャップが生じている中、FRBが粛々と引き締めを実施できるかが焦点になりそうです。

今週の相場展開は前回に引き続き、25日移動平均線の維持と2万円トライの値固めがメインシナリオになるという点に変更はありません。仮に軟調な場面があっても、図1の25日移動平均線と75日移動平均線の空白地帯が下値の目処として意識されそうではあります。ただし、FOMCの通過で先行きの視界が晴れたわけではなく、逆に米国で弱い経済指標が発表される度に、想定以上に相場が揺れ動いてしまう可能性が高まっているため、今後、米国の「適温相場」が崩れてしまう波乱には注意が必要と思われます。