好決算発表後の株価の動きはその時々の相場環境により異なる
今回は、前回の続きとして、好決算の発表により株価が急騰した銘柄の買いタイミングについて対処法を考えてみたいと思います。
好決算の発表をきっかけにして、新たに買ってみたい銘柄が出てくるのが決算シーズンの楽しみの1つです。筆者も日本経済新聞に掲載された各企業の業績に一通り目を通しながら、将来のお宝株候補を探したりします。
ただ、好決算が発表された銘柄のその後の株価の推移がどのようになるかは、その時の相場全体の環境によるところも少なくありません。
例えば、相場全体の環境がよく、個別銘柄でみても上昇トレンドの銘柄が多いときは、好決算が発表された銘柄は、それが好感されて株価の上昇が続いていきます。
一方、相場環境が悪く、下降トレンドの個別銘柄が多いときは、好決算が発表されるとそれを好感して一時的に株価が上昇するものの、それが長続きせず、すぐに反落してしまう銘柄が増えてしまいます。
今回の決算発表シーズンは「息切れ」銘柄が目立ったが…
今回の決算発表シーズンで目立ったのは、好決算が好感されて決算発表の翌日はストップ高になるなど大きく上昇するが、翌々日になると早くも失速して息切れし、その後は株価が下がってしまうという動きです。
したがって、好決算を好感して高く寄り付いたところで飛びつき買いをすると、高値掴みになってしまう可能性があります。
とはいえ、投資候補としていた銘柄に好決算が発表されたなら、それは新規買いのタイミングの1つとなります。ですから、高値掴みのリスクは当然あるものの、ひとまず買って出る局面と筆者は思います。
ひとまず翌日に成り行き買いで飛び乗ってみる
そこで、好決算の発表があった場合、翌日に成り行きで買い注文を出すかどうかの検討をします(引け後に決算発表があったケースを想定しています)。その際、以下の点に注意します。
ストップ高の株価水準と25日移動平均線(25日移動平均線割れを損切りとするため)を比較して、損切り時に見込まれる実現損の最大額を計算します。それを許容できるならば成り行き買いの注文を出します。
仮に、ストップ高水準が650円、25日移動平均線が550円とすると、ストップ高で1,000株買って25日移動平均線割れで損切りを想定した場合、実現損はおよそ10万円となります。これを許容できるなら成り行き買い注文を出すのです。
もし、ストップ高で買って損切りになった場合の実現損が大きすぎると感じるなら、許容できる実現損の最大額から導き出される株価を計算し、それを指値にした買い注文を出すことも一案です。25日移動平均線が550円の場合、1,000株買って実現損が50,000円までなら許容できるならば、600円の指値注文を出すという具合です。ただし、この場合は指値に引っかからずに買えない可能性があります。
例えば、ミクシィ(2121)は、好決算発表後株価が急上昇していますが、決算発表の翌日の寄り付きで成り行き買いをすれば、6,550円で買うことができました。100株購入した場合、ストップ高水準の6,850円と25日移動平均線からみた、損切り時の実現損は10万円弱と想定されました。これを許容できたならば寄り付き成り行き買いにより、上昇の初期段階で安く買うことができたのです。
ミクシィ(2121)日足チャート
ストップ高比例配分で買えなかった翌日の成り行き買いは高値掴みリスクが高まる
なお、翌日に成り行き買い注文を出したものの、買い注文が多すぎてストップ高比例配分になり、買うことができないケースがあります。こんなときは飛び乗りをひとまず中止して、後述の「押し目買い」に方針転換した方がよいかもしれません。ストップ高翌日の寄り付き近辺で高値をつけ、一旦の高値をつける可能性があるからです。
例えば日本風力開発(2766)は、決算発表の翌日こそストップ高比例配分でしたが、翌々日は寄り付き後に高値を付けた後は反落し、大陰線をつけ前日の株価をも割り込んでしまいました。
日本風力開発(2766)日足チャート
なお、ストップ高連発で、その後も株価がどんどん上昇してしまうようなケースもたまにはありますが、そんな場合はその銘柄に縁がなかったとあきらめましょう。
例えばエスケーエレクトロニクス(6677)は決算発表翌日にはストップ高比例配分、翌々日のストップ高でようやく寄り付きました。その時の株価は25日移動平均線から40%近く上方かい離しており、仮にそこから株価が反落して損切りとなった場合、かなりの実現損が生じてしまう水準でした。ストップ高で寄り付いた後も株価は上昇していますから、飛び乗り買いして良かったわけですが、それは結果論に過ぎません。特に現在の相場のように、相場全体が明確な上昇トレンドにないようなときは、高値掴みを避けることの方が重要です。
エスケーエレクトロニクス(6677)日足チャート
飛び乗りした後の対処法が重要
そして、重要なのが飛び乗り買いした後の対処法です。ミクシィのように、株価が順調に上昇した場合は問題ありません。しかし、飛び乗り買いしてみたものの、その後数日の株価の動きから一旦の高値をつけた可能性があると感じた場合は、25日移動平均線割れを待たず、一度買いを外して様子をみることも検討すべきです。その上で、株価の動きに応じて以下のように対応します。
- 直近高値を超えたら買い直す(直近高値超えは上昇トレンド継続の明確なサインの1つであるため)
- 直近高値をつけた後に押し目をつけた後の反発局面で買う(この場合押し目割れもしくは25日移動平均線割れで損切り)
- 株価の調整が進み、25日移動平均線に株価が近づいてきたら買う(この場合25日移動平均線割れで損切り)
例えば地盤ネット(6072)は、決算発表を受けて株価が上昇したものの、980円がいったんの高値となりそうなことが5月15日の長い上ヒゲおよび翌16日の陰線から感じ取れます。そこで、翌営業日の19日の寄り付きで一旦買いを外すのです。決算発表翌日の14日の寄り付き795円で買っていれば、19日の寄り付きが841円ですから、利食いの状態で一時撤退することが可能でした。
その後、株価は反落しましたがやや持ち直し、25日移動平均線をやや上回る水準です。押し目698円は25日移動平均線を割り込む水準ですので、現時点で新規買いするなら、押し目割れまで粘ってもよいですが、25日移動平均線割れを損切りとするのが無難でしょう。
もし、直近高値980円を超えてくれば、新規買いや買い乗せのタイミングとなります。
地盤ネット(6072)日足チャート
飛び乗りに抵抗があるなら「押し目買い」狙いを
また、飛び乗り買いをすると、当然高値掴みのリスクが少なくありませんから、抵抗がある方もいると思います。そんな方は、押し目買いを狙うのがよいでしょう。
よほど強い銘柄でなければ、好決算を好感した買いによる株価上昇は長くは続かず、当面の高値を付けた後は調整局面に入ります。そこで新規買いとするのです。
新規買いのタイミングは色々考えられますが、基本は上記の「飛び乗り買い後の対処法」と同じようにすればよいと思います。
例えば、長大(9624)は、決算発表後ストップ高を連発し、744円で当面の高値を付けた後、調整局面に入っています。これにより、25日移動平均線とのかい離も小さくなっています。
5月13日に606円の押し目を付けた後、膠着状態にありますから、5月14日以降に新規買いし、606円割れもしくは25日移動平均線割れで損切りとするのです。
そして、もし今後744円の高値を超えてきたなら、そこは新規買い・追加買いのタイミングとなります。
長大(9624)日足チャート