投資家の「失望売り」が目立った今回の決算発表

平成26年3月期の決算がほぼ出揃いました。決算発表の前後は、個別銘柄の株価が大きく乱高下することが多く、個人投資家にとっても非常にやりにくい時期です。個人的には、今回の決算発表は、いつにも増して対応が難しかったという印象を持っています。

その最大の理由は、来期(平成27年3月期)の業績予想を平成26年3月期と比べ減益だったり横ばいとした企業が非常に多かったことです。

このため、平成26年3月期決算でどんなに素晴らしい数字を出しても、来期の業績が伸び悩むという予想に投資家がマイナスの反応をみせ、失望売りが膨らんでしまいました。

もちろん、好決算を受けて株価が上昇した銘柄もありますが、決算発表後株価が下がってしまった銘柄の方がはるかに多かったという印象を受けます。

企業の出した来期予想は「保守的」?

しかし、予想はあくまでも予想です。多くの企業は、世界情勢や消費増税の影響を読み切れないために保守的な業績予想を発表したともいわれています。

企業側が示した平成27年3月期の業績予想をみて、とりあえずその予想に投資家側も素直に反応した、というのが現状の姿です。でも、大事なのはここから先です。

決算が一通り出そろうと、アナリストなどのプロ投資家が各企業の決算を分析し、独自に来期の業績を予測していきます。その結果、例えば「企業側が出した業績横ばいの予想は保守的すぎる。実際にはかなりの増益になりそうだ」という分析結果が出された銘柄であれば、足元で株価が大きく落ち込んでいたとしても、やがて実態が評価されて株価が上昇していくはずです。

業績予想がマーケットの期待より大きく下回っていたとしても、予想が保守的すぎるような銘柄については株価の大幅な下落は一時的にとどまり、早晩株価が復活することも大いに期待できるわけです。

さらに、現在はマーケットのセンチメントが良くないため、今期が増収増益、来期も増収増益予想を打ち出した好業績銘柄であっても株価が大きく売り込まれるケースが目立ちます。ファンダメンタルの面からみて今後好業績が見込めそうな銘柄については、つねに株価をウォッチし、上昇トレンドに転じた時点で新規買いができるように準備しておくのがよいでしょう。

決算発表前後でトレンドが変わらない銘柄が多いわけ

ところで、決算発表前後の株価のトレンドは次の4種類に分類できます。

1. 決算発表前:上昇トレンド→決算発表後も上昇トレンド続く

2. 決算発表前:下降トレンド→決算発表後も下降トレンド続く

3. 決算発表前:上昇トレンド→決算発表後に下降トレンドに転換

4. 決算発表前:下降トレンド→決算発表後に上昇トレンドに転換

多くの銘柄は、1.もしくは2.の動きとなります。機関投資家やアナリストなどプロの投資家が各企業の状況を普段から十分リサーチしているため、その結果がすでに株価におおむね反映されているからです。

好決算が見込まれる銘柄の株価は決算発表前から上昇しており、逆に決算が良くないと見込まれる銘柄は決算発表前からすでに下落をしているのです。

株価のトレンドに応じて売買をする筆者のスタイルで考えると、1.や2.の動きであれば全く問題ありません。1.のように、上昇トレンド継続のため保有していた銘柄が好決算を発表してさらに大きく上昇することは好ましいことですし、2.のような銘柄はそもそも保有していないため、決算発表を受けていくら株価が下がろうが関係ありません。

トレンド転換を伴った株価の急騰・急落をみせた銘柄は今後も要注意

ところが、中には上昇トレンドまっただ中の銘柄が、決算発表をきっかけに突然ストップ安売り気配になったり(上記3.)、逆に下降トレンドが続いている銘柄が、決算発表後にいきなりストップ高買い気配になるケース(上記4.)があります。特に困ってしまうのが3.のケースで、株価の動きによってはかなりの実現損が生じてしまいます。

こうした動きは中小型株に特に目立ちます。上場企業は3,000社以上ありますが、その全てをアナリストなどプロ投資家がフォローしているわけではありません。ジャスダックやマザーズ、東証2部上場銘柄には、フォローするアナリストが1人もいない銘柄も決して珍しくありません。

また、大型株であっても、企業側がIRに消極的だと、早目に業績予想の修正を出さなかったりします。そして、本決算の発表で突然予想と大きくかけ離れた数字を出すため、投資家がびっくりしてしまうのです。

こうした銘柄は、業績の変化にプロ投資家もなかなか気づくことができないため、それが株価に織り込まれておらず、突然のストップ高とかストップ安という極端な値動きにつながってしまいます。

このような銘柄は、今後の決算発表シーズンでも同様の動きになる確率が高いといえます。これらの銘柄を決算を跨いで保有するのはどうしてもリスクが高くなりますから、ご自身が保有している銘柄や、ウォッチしている銘柄の決算前後の株価の動きを一度点検してみてください。もしこうした動きをするものがあれば、あまりその銘柄に資金を集中させすぎない方がリスク管理の点からはよいと思います。