宝島社より、別冊宝島「株で儲かる!「会社四季報」の読み方、使い方」が近日発売されます(楽天ブックスでも注文していただけます)。私のコメントも載っていますので、よろしければご覧いただき、会社四季報を使った銘柄探しにぜひお役立てください。

さて、会社四季報も先日(9月13日)に最新号の秋号が発売され、すでにお持ちの方も少なくないと思います。そこで、今回は筆者が会社四季報を使って銘柄探しをする際にどのような点に注目しているかをご紹介したいと思います。

まずは流動性の高低でふるい分ける-「売買高」の確認

会社四季報の中で最も注目すべきはもちろん何といっても業績欄です。しかし、筆者は銘柄探しの際、業績欄以外の箇所も注目するようにしています。

筆者はPER、PBR、配当利回りといった面からみた割安株を、会社四季報を使って探すときは、まず業績欄をざっと眺めて、売上、利益とも伸びているか、もしくは比較的安定している銘柄であることを確認します。その上で、PERやPBR、配当利回りをチェックします。

実は割安株を探していると、毎年しっかりと利益を上げているのにPERもPBRも低く、配当利回りも高い銘柄が次々と出てきます。でも、それらのすべてに投資するのは、資金的な制約もありますから不可能です。そこで、実際に投資対象とする銘柄を絞り込まなければなりません。

その際、筆者がまず注目するのは売買高(出来高)です。以前本コラムでも書きましたが、筆者は流動性をかなり重要視しています。速やかな売却や損切りが必要な際に、時価よりかなり安い価格でないと売れなかったり、売ること自体ができないとなれば不用意に損失が拡大してしまうからです。

すると、特に新興市場銘柄(マザーズ、ジャスダック)や東証2部銘柄の多くは流動性の面で引っかかってしまいます。そうした銘柄は投資対象から除外していきます。

売買高を用いたふるい分けの方法は?

具体的には、次のような方法でふるいわけをしていきます。

会社四季報の業績欄の左上に、直近5カ月弱の株価の高値・安値および売買高が記載されています。これらのうち、最新の月(月の横に#がついている。これは月の途中までしか集計されていないことを示す)を除いた4カ月分の中で最も売買高が少ない月につき、売買高を20で割ったものが、自分自身が売買したい株数の100倍以上あれば流動性の面からは合格とします。

1カ月あたりの営業日がだいたい20日前後であるため、1日当たりの売買高を推定するために月の売買高を20で割っているのです。

例えば、1,000株買いたいと思っている銘柄の2013年4~7月の売買高のうち最も少ない月の売買高が300万株であれば、300万株÷20=15万株、これは1,000株の150倍ありますから合格、となります。

「割安株」に流動性の低い銘柄が多いのはなぜ?

この作業をしていくとあることに気づきます。それは、PER、PBR、配当利回りの面からみて明らかに割安と思われる銘柄の多くは、「流動性が低い」という点です。

これは裏を返せば、流動性が低い銘柄はリスクがあるということを多くの投資家が認識しているため、PERやPBR、配当利回りといった、流動性の高低が全く考慮されない指標でみると、株価が割安に放置されているようにみえることを表しています。

ただ、流動性の低さにさえ目をつむれば、明らかに割安な銘柄がゴロゴロしていますから、流動性の有無が気にならない方は、そうした銘柄を拾っておくことも悪くないかもしれません。実際、会社四季報の大株主欄にいくつも名を連ねている竹田和平さんは非常に有名な個人投資家のお一人ですが、竹田さんが大株主になっている銘柄の中には流動性が低いものが数多くあります。「配当金をしっかり受け取れるような良い会社の株を長期間持ち続ける」という竹田さんの投資スタイルでは、流動性のリスクはあまり重視しなくてよいからでしょう。

外国人と投資信託の持ち株が増え始めて間もない銘柄に注目

次に注目するのは「株主欄」、特に「外国人投資家」と「投資信託」の持ち株比率です。

株価は「人気投票」により決まるものですから、個人投資家のみならず、外国人投資家や機関投資家からも幅広く人気を集める銘柄の方が、そうでない銘柄よりも株価は上昇しやすくなります。

ただ、外国人投資家や投資信託の持ち株比率が単に高いだけではあまり妙味がありません。彼らの持ち株比率が高いということは、その銘柄を欲しい投資家は既に買い終わってしまっているかもしれないからです。

そんな状態で業績の明確な悪化などが表面化すれば、逆に彼らの売りで株価が大きく下がりかねません。特に外国人投資家は、投資していた銘柄に見切りをつけると、自分たちの売りで株価がどれだけ下がろうが、お構いなしに売り切ってしまうことがよくあります。

したがって、筆者が注目するのは、外国人投資家や投資信託の持ち株比率が5%前後の銘柄です。そして過去の四季報をさかのぼってみて、彼らの持ち株比率が上昇傾向にあるものを選びます。

こうした銘柄は、外国人投資家や機関投資家が、将来の有望性にようやく気付き、買いを少しずつ入れ始めた段階であることが多いからです。そうした段階であれば株価もまだ底値から大きくは上昇していないので、比較的安く買えることが多くなります。

外国人や投資信託の持ち株がゼロの銘柄、その理由は?

なお、外国人投資家や投資信託の持ち株比率がゼロまたはそれに限りなく近い個別銘柄も結構あります。これには大きく2つの理由が考えられます。1つは、「業績が悪かったり、破たん懸念があるため、彼らが投資対象としていない」、もう1つは「流動性が低いために彼らが投資対象としていない」ということです。

プロの投資家にとっては、破たん懸念が高い銘柄に投資するわけにはいきません。また、顧客から預かった資金を速やかに換金しなければならないようなとき、売りたくても売れないような銘柄では困ってしまうのです。

したがって、いずれの理由にせよ、外国人持ち株比率や投資信託持ち株比率がゼロの銘柄は、彼らの買いにより株価が上昇することはほとんど期待できません。また、おのずと個人投資家が中心の株価形成となりますから、株価も乱高下しやすくなる点には十分注意したいものです。

「財務健全性」でさらなる絞り込みをおこなう。

最後にチェックするのは「財務の健全性」です。いくらPER、PBR、配当利回りからみて割安に見えても、倒産の危険性が高いようでは安心して投資できないからです。また、財務の健全性が高い銘柄の方が、経営が比較低安定しているため、各種指標の信頼度も高くなります。

筆者が主に重視するのは次の3つです。

(1)有利子負債が少ない
有利子負債が少なければ倒産の危険性も小さくなります。有利子負債がゼロなら最良ですが、有利子負債を大きく上回る現金同等物があれば合格とします。

(2)自己資本比率が高い
自己資本比率が高ければ負債が少なく純資産が多いことを表します。高いほど安全ですが、50%以上であれば合格とします。

(3)利益剰余金が潤沢にある
利益剰余金が潤沢にあるということは過去の経営で十分な利益の蓄積が図られていて、配当原資も十分にあり、財務面の安全性も高いことを表します。多ければ多いほどよく、総資産の半分以上あれば申し分ありません。

 

会社四季報にはお宝銘柄がたくさん眠っています。割安株を株価が割安なうちに見つけて買い仕込み、将来の利益の種まきをしていきましょう。