早いもので、本コラムも連載200回を迎えました。これもひとえに、読者の皆様からのご支援のおかげです。これからも、実践面を最重視して個人投資家の皆様の役に立つ知識・情報提供に努めてまいりますので何卒よろしくお願い申し上げます。

さて、今回のコラムは200回の節目ということで、株式投資の基本中の基本でありながら最も重要な点である「株式投資ではいったい何を信じてどのように行動すればよいのか」を、特に初心者・初級者の個人投資家の方々に改めて訴えたいという思いから「初心者向けコラム」として取り上げることにしました。

相反する様々な情報の中からいったい何を信じればよいのか?

個人投資家の9割は、株式投資で満足する成果を上げることができていないといわれていますし、筆者自身、多くの個人投資家の方と接してきた感覚からもそう思います。その大きな原因の1つに、「どうすれば株式投資で成果を上げることができるか」という疑問に対する明確な解答を得られぬまま、巷にあふれる膨大な数の情報の波に飲み込まれてしまっているという事実があると筆者は思っています。

例えば病気や健康に関する書籍の話1つ取っても、「朝食は取るべきだ」「抜くべきだ」、「牛乳は飲むべきだ」「控えるべきだ」、「ガンを無理に治療せず放置すべきだ」「直ちに治療すべきだ」など、まったく正反対の主張が専門家の間でなされ、いったい何を信じればいいの?と思ってしまいます。

株式投資でもこれと全く同じことが起こっています。「円高になる」「円安になる」、「日本株は上がる」「下がる」、「アベノミクスは正しい」「間違っている」、「消費税増税で景気は悪化する」「悪化しない」などなど、全く異なる主張がプロや専門家の間で繰り返され、個人投資家のもとに情報として発信され続けています。

私たち個人投資家は、こうしたさまざまな情報の中から、何を信じ、どのように行動していくかを決めていかなければなりません。そして、その選択如何により投資成果が大きく異なってくるのです。

筆者が信じるのは専門家の見解ではなく「株価の動き」

では、筆者は何を信じているかというと、どの専門家の見解も信じてはいません。信じているのは「マーケットの株価の動き」です。

実は、株価の動きというのは非常に客観的な情報です。それでいて、すべての投資家が判断し・意思決定した結果が凝縮されているのです。

例えばプロや専門家の間で、日経平均株価が今後「上昇する」「下落する」と見解が分かれていたとしましょう。そして、それぞれの投資家も日経平均株価につき色々な考えを持ちながら投資行動を実行していきます。その結果日経平均株価が上昇したならば、「上昇する」が正解であり、日経平均株価が下落したならば「下落する」が正解なのです。

これを、「下落する」という専門家の見解を信じて買いを見送った結果株価が上昇すればせっかくのチャンスを逃すことになりますし、「上昇する」という専門家の見解を信じて強気で買い進んだ結果株価が下落すれば、大きな損失を被ってしまいます。

今後の株価の見通しについてあふれる様々な情報に対しては完全に中立の立場をとり、株価のトレンドが上昇トレンドならばそれについて行って買い進める、逆に下降トレンドになれば保有株の売却を進めて新規投資は控える、これだけで十分なのです。

つまり、マーケットで形成される価格の動きと、それによりもたらされる株価のトレンドを観察することで、自身の投資判断にとってノイズにもなりうる膨大な情報から解放され、誤った判断をするリスクを回避することができるのです。

筆者は専門家を「信じる」ことはしないが「参考」にはする

とはいえ、筆者自身もプロや専門家の意見を「信じる」ことはしないものの、参考にすることは大いにあります。やはり、ある程度の相場観を自分なりに持ったうえで株式投資に臨むことはどうしても必要だからです。

特に初心者の方は、プロや専門家の言っていることは「正しい」と思ってしまいがちです。でも、プロや専門家の間でさえ「円安になる」「円高になる」、「日本株は上がる」「下がる」と真逆のことを言い合っているという事実からも、専門家の言っていることが常に正しいわけではないことがよく分かると思います。もし日本株は上がるという専門家と下がるという専門家が半々の割合でいたならば、専門家の50%は間違ったことを言っているということになるのです。プロや専門家の見解・主張は「結構な割合で外れる」と思っていた方がよいでしょう。

そして、プロや専門家は自分の主張や見解が外れた場合、反省したり謝ったりすることはあっても、それを信じて行動した個人投資家が負った損失については一切責任を持ってくれません。投資の世界ではあまりにも有名な「自己責任の原則」です。

であるならば、専門家の言っていることを「信用する」のではなく、「参考にする」にとどめなければなりません。あくまでも最終的な意思決定は自分自身の責任で行わなければならないのですから。

最後は「株価は株価に聞く」のが筆者のやり方

そして、筆者であれば、時にはプロや専門家の見解を参考にして自分なりの相場観を持ちつつも、やはり最後は「株価は株価に聞け」の格言通り、株価のトレンドを最重視して投資行動を決定していきます。

例えば、「日本株がこれから上がる」と主張する専門家の根拠に納得し、かつ株価のトレンドも上昇トレンドであれば日本株を積極的に買っていきますが、株価のトレンドが下降トレンドに転じたならば、いくら専門家の言っていることが的を射ていても、キャッシュポジションを高めて守りに入ります。

これが、専門家を「信じて」しまうと、株価が下降トレンドになっているにもかかわらず、「そのうち上がる」という全く根拠のない理由から株を持ち続け、やがて多額の含み損を抱えた塩漬け株だらけになってしまうのです。

今回のタイトルである「何を信じ、どう行動するのか?」という問いに対して、「『株価』を信じ、『株価のトレンド』に従って行動する」というのが、筆者がこれまで株式投資を続けてきた結果得た答えです。そしてこの考え方に従って行動してきたからこそ、日本株の長期下落相場や大暴落を乗り越えて生き残ってこれたと自負しております。

皆様も、いったい株式投資で何を信じて、どう行動するのか、もう一度見つめ直してみてはいかがでしょうか。