高配当利回り銘柄に投資して売却損をカバーする

 NISA口座では、売却損は切り捨てとなりますから、利益を得られる可能性が高い投資先を考える必要があります。

 その観点から筆者が真っ先に思い浮かぶのは、「高配当利回り銘柄」や「REIT(リート:不動産投資信託)」です。例えば、NISA口座で年間の分配金利回り4%のREITに投資して10年間(非課税期間5年+ロールオーバー5年)保有すれば、分配金だけで4%×10年=40%となります。

 もし、10年後にREIT価格が値上がりしていれば売却益も非課税となりますから問題ありません。逆に10年後値下がりしていても、買値からマイナス40%までに収まっていれば、分配金と合わせて実質的にプラスの投資成果をあげることができます。

 なお、高成長株や好業績株など、5年後、10年後に株価が上昇している可能性が高いと思われる銘柄を選ぶのも手ですが、将来株価が必ず上昇するという保証はありません。よほど銘柄選びに絶対的な自信があるなら別ですが、積極的におすすめできるものではありません。

 

ツナギ売りの活用でNISA口座での売却を回避する

 NISAのデメリットの1つである「売却すると非課税枠が消滅してしまう」点を回避する方法として考えられるのが、「ツナギ売り」の活用です。

 ツナギ売りとは、保有株の一時的な値下がりを回避するために、保有株を持ったまま、同じ銘柄を同じ株数だけ空売りすることをいいます。

 例えば、NISA口座においてX株を1株300,000円で買ったところ、株価が270,000円まで下がり下降トレンド入りしてしまったとします。

 通常であればここで損切りするわけですが、NISA口座では一度売却するとその分の非課税枠は消滅してしまいます。そこで、NISA口座のX株はそのまま保有し、通常の口座(一般口座ないし特定口座)にてX株を1株空売りするのです。

 もし、X株の株価がその後200,000円まで下がったもののそこから持ち直して400,000円に上昇したならば、上昇過程で空売りを買戻せばよいのです。270,000円以下で買い戻せば空売りによる損失は生じません。

 一方、X株の株価が下がったまま上昇に転じる気配がないため仕方なく売却するとした場合でも、損失の一部を空売りの利益でカバーすることができます。

 

売却のタイミングはどう考えるか

 悩ましいのが、NISA口座で保有する株式の売却(利益確定)のタイミングについてです。NISA口座では一度売却すると、その分の非課税枠は消滅してしまいます。かといって、非課税期間の5年間、株価が右肩上がりに上昇するという保証もないからです。

 利益はできるだけ伸ばしつつも、非課税期間中いつまでも持ち続ければよいわけではない、という難しい判断を迫られることになります。

 これに対処するための1つとして筆者が考えるのが、例えば長期のトレンドが下降トレンドに転換したら売却する、というものです。具体的には、月足チャートで株価が12カ月移動平均線を下回った場合です。

 長期のトレンドの周期は数年から長い場合は10年以上の期間となります。長期のトレンドがひとたび下降トレンドに転じると、再び上昇トレンドに転じるまで数年はかかります。

 できるだけ利を伸ばすという目的と、非課税期間が5年間と有限であることを考えると、長期のトレンド転換で売却するのが筆者個人的には最もしっくりきます。

 そして、長期のトレンド転換を待たずとも、株価が買値の5倍、10倍にまで上昇したら持ち株の一部を売却するのも手です。もちろんそれ以上株価が上昇する可能性もありますが、しっかりと利益を確定しておくのも大事です。

 なお、高配当利回り銘柄やREITなど、配当金を重視して投資した銘柄であれば、配当金を非課税で受け取り続けるためにも非課税期間中は保有し続けるのが基本です。もちろん、その間大きく株価が上昇したならば非課税期間終了を待たずに売却してしまってもよいでしょう。

 

損切りできない個人投資家はNISAを活用しない手はない

 このように、NISA口座では売却損は切り捨てられることが大きなデメリットになりますが、どうしても損切りができない、という個人投資家にとってはあまり関係ありません。損切りをしなければそもそも売却損が生じないからです。

 損切りが重要とする本コラムの主張からすると逆説的でありますが、損切りが苦手な個人投資家は、NISAを積極的に活用すべきです。でも、筆者の本音をいえば、損切りができるに越したことがないのは言うまでもありません。

 ただし、NISA口座にて投資した銘柄を値下がりしたままの状態で保有し続けると、非課税期間が終了して通常の口座(特定口座や一般口座)に移管した後の売却時に新たな問題点が発生します。この点については次回(株投資する人のためのNISA特集・非課税期間終了後の注意点とその対策を考える)にて説明します。

※このレポートは、2013年8月1日のレポートをトウシル編集チームがデータなどを一部修正したものです。