これから何度も起こる株価下落を乗り越え続けなければならない

ようやく落ち着きを見せつつあるようにも感じられる日本株ですが、5月23日の高値15,942円60銭から6月13日の安値12,415円85銭まで、日経平均株価の下落幅は3,527円、下落率は22.1%に達しました。多くの個人投資家がかなりのダメージを受けたと見られ、特に今年の4月、5月になって株式投資を始めたような方にとっては大きな試練だったことでしょう。

しかし、この程度の下落は、株式投資を続けていれば何度でも出くわします。そこで、今回と次回のコラムでは、5月下旬から続いた株価下落につき、筆者自身が思ったことをいくつか書き連ねたいと思います。

株式投資では致命的な大失敗さえ犯さなければ、その後必ずリカバリーができます。今回の株価下落で失敗したと感じた方も、これを今後への教訓として生かし、同じ失敗を繰り返さないようにしていきましょう。

信用評価損益率、裁定買い残高、信用買い残高で過熱感をチェックしておく

株価は過熱感を持ち続けながらも行くところまでは行くものです。そして過熱が高ければ高いほど、その後の下落も大きくなります。

まず、相場の過熱感を如実にあらわすのが「信用評価損益率」です。信用買いをしている投資家の含み損益を示したものですが、個人投資家の習性として、含み益のあるものは早めに利食い、含み損のあるものは放置しますから、通常はマイナスで推移します。今回の株価上昇では、5月10日時点でプラス3.68%にまで上昇し、プラス圏での推移が4月中旬~5月中旬まで継続したのです。信用買いをすればするほど儲かる、これは明らかに株価が過熱している証拠で、その後の株価下落に十分注意すべきサインでした。

そして、ひとたび株価が大きく下落すると、株価下落に拍車をかける要因となるのが「裁定買い残高」と「信用買い残高」です。特に先物主導で株価が下落する局面では裁定解消売りが出ますが、裁定買い残高が積みあがっていると裁定解消売りも膨らみ、これが株価下落のスピードを増幅させる要因となります。信用買い残高も大きく積みあがっていると、株価下落による含み損増大に伴い、投げ売りが発生してこれも株価の下落を加速させます。

裁定買い残高、信用買い残高は高水準に積みあがっていた

裁定買い残高は5月17日時点で約4兆3,000億円となり、2007年3月以来6年2カ月ぶりの高水準にまで積みあがりました。信用買い残高も、5月31日時点では2007年12月以来5年6カ月ぶりの高水準となる約3兆1,700億円となりました。

また、裁定買い残高が東証1部時価総額の1%に近づくと株価は一旦の天井をつけることが多いと言われています。今回もこの法則は当てはまりました。筆者もこの法則は知っていたのですが、すっかり忘れていたためコラムで事前にお伝えすることができず申し訳ございませんでした。今からでも覚えておいて損はないはずです。

今回のように半年で日経平均株価が2倍近くに上昇するような大相場では、騰落レシオはあまり参考にならないことも多いのですが、それでも5月10日には25日騰落レシオが152.1%にまで達しており、これも過熱感を表すサインとして有効でした。

もちろん、株価がいくら過熱していても、トレンドが上昇トレンドにある限り持ち株は保有を続けてよいのですが、いつまでも強気で新規買いを続けるようなことはできるだけ避けるべきでしょう。

トレンド転換で利食い・つなぎ売りをしていればダメージは小さく済んだ

今回の株価下落で、特にマザーズやジャスダックに上場する個別銘柄では高値から60%、70%と大きく下げたものも珍しくありませんでした。よほど安値で買っていない限り、こうした銘柄を持ち続けていれば多額の含み損を抱えてしまいました。

でも、筆者が当コラムでしつこいほど申し上げているとおり、トレンドが転換した時点で利食いないしつなぎ売りをするとともに、必要に応じて損切りを実行していれば、ダメージは比較的小さく済んだはずです。

筆者自身も以前コラムで書いたとおり、日本株の上昇はまだ終わらないとみていますので日足ベースのトレンド転換時の利食い・ツナギ売りは保有株の2分の1程度しかしませんでした。今となってはこれを3分の1~4分の3程度に引き上げておくべきだったと少し反省しているのですが、それでもダメージ(含み益の減少)は十分耐えられるレベルで済んでいます。

ボラティリティの高い間は無理に安く買おうとせず静観が吉

確かにここまで株価が大きく下落すると、逆に買いたい銘柄を安く買うチャンスでもあります。株価が下降トレンド真っ只中の状況で、逆張りで買い向かった個人投資家の方も多かったことでしょう。

しかし、ひとたび株価が急落すると、ボラティリティ(株価の変動率)の大きい状況がしばらく続きます。実際、5月23日の急落以降、株価の上下の振れ幅が大きくなっています。

こうした時に、例えば「買値から5%ないし10%下落で損切り」とルールを決めて買い向かっていくと、買った次の日には早速株価急落で仕方なく損切りすると翌日には急上昇、あわてて買い直すとその翌日に再び急落で損切り……と労多くして実りなしの状態に陥ってしまいがちです。

できるだけ安く買いたい、という気持ちはよく分かるのですが、ピンポイントの安値で買うことなどできませんし、下降トレンド途中での買いはやはりお勧めできません。日足ベースのトレンドが上昇トレンドに転じてから買えば十分だと思います。おそらくその頃にはボラティリティも落ち着いているはずです。