リスク覚悟で下降トレンドの中を買い向かう選択肢もある

以前のコラムにて、上昇相場における「買い直し」のタイミングについてお話しましたが、5月下旬にかけて株価が大きく調整しましたので、今回は株価調整局面における「買い直し」について考えてみたいと思います。

上昇相場では、以前売った価格より高い価格で買い直しすることになる場合も少なくありませんでしたが、株価調整局面では、売った価格より安く買い直すことができる可能性が高まります。

とはいえ、株価調整局面であっても、買い直しをしたい銘柄のトレンドが上昇トレンドであることが大前提です。下降トレンドにある場合は、株価が25日移動平均線を超えるのを待ってから買い直すのが原則です。

ただし、下降トレンド途中であっても、買い直すことによるメリットがあるならば、さらに株価が下がるリスクを承知の上で買い向かうという選択肢もあります。買い直しのタイミングとしては、以下にあげる3つが考えられます。

買い直しタイミング① 株価の5日移動平均線超え

株価が長期間下がり続け、かつ下落率も大きいような場合、株価の25日移動平均線超えを待って買い直そうとすると、直近安値からかなり高い株価となってしまうことが往々にしてあります。

下降トレンドが続く限り、株価が一時的に反発したとしても、25日移動平均線を明確に超えることなく再び下がってしまいます。こうした株価の綾戻しに引っかからないようにするため、25日移動平均線を明確に超えるまでは買わない、というのは非常に有効な戦略です。

ただ、下降トレンド継続のリスクは負ってでもできるだけ安く買いたいという人もいるでしょう。そんな時に有効なのが、株価が5日移動平均線を超えたタイミングで買う、というものです。株価の5日移動平均線超えとは、いわば「超短期での上昇トレンドへの転換」です。

株価は25日移動平均線を超えるよりかなり前の時点で、5日移動平均線超えを果たします。したがって、株価が反発してかなり初期の安い価格で買うことができます。

もちろん、超短期のトレンド転換ですから、すぐに上昇がストップし、再度下落に転じてしまうことも多々あります。その場合は5日移動平均線を下回ったら損切りとすれば損失は最小限で抑えることができます。ケースバイケースで直近安値割れまで粘ってもよいでしょう。

買い直しタイミング② 株価の長い下ヒゲ

下落を続けていた株価が下ヒゲをつけた場合、株価が底打ちした可能性が高まります。下ヒゲの下限まで株価が売り込まれたものの、そこから株価が押し上げられていることから、売りのパワーが弱まり、買いのパワーが優勢に転じたと判断できるからです。

特に、長い下ヒゲをつけると、その後株価が反発することがよくあります。

もちろん、可能性が高いというだけで、その後株価がさらに下がってしまうこともあります。この場合、下ヒゲの下限が直近安値となりますから、この株価を割り込んだ場合に損切りとします。

買い直しタイミング③ 以前売却した株価より安くなったら買う

以前売却したときより株価が安くなったら買い直すことは、その株を長期的に保有するつもりなら「買い単価を下げる」という意味では効果があります。高成長で先々の株価上昇が大いに期待できる銘柄が、相場全体の大きな調整に引きずられて連れ安したような場合には有効です。

例えば、以前500円で買った株を800円で売り、その後株価が1,200円まで上昇して悔しい思いをしていたところ、全体相場の急落に引きずられる形で700円まで下がってきたとします。

このとき700円で買い直しをすると、当初500円で買った株の実質的な買い単価を、400円まで下げることができるのです(500円-800円+700円=400円)。

ただし、筆者であれば単に「以前売却したときの株価より安くなったから」といって闇雲に買うのではなく、よりリスクを軽減するために、これに①ないし②の条件が重なったら買い直し、かつ損切り価格も設定します。

下降トレンド途中の買いは、うまくいけば安く買うことができるものの、株価下落の可能性も高い、リスクの高い行為です。その点を理解したうえで、損切り価格を設定し、損切りを確実に行うことを前提に実行することをお勧めします。