株価上昇により株式分割実施銘柄が増加中

折からの日本株上昇により、株式分割を実施する銘柄が増加しています。例えばガンホー・オンライン・エンターテイメント(3765)(以下「ガンホー株」)の株価はここ半年で急上昇し、3月8日にはなんと4,840,000円の高値をつけました。ガンホー株の売買単位は1株ですが、最低投資金額が400万円超えともなると、もはや個人投資家にはおいそれと手を出すことのできない領域になってしまっていました。

そこで、ガンホー株は3月27日に1対10の株式分割を実施しました。3月26日の終値が4,150,000円でしたから、翌3月27日の基準値はその10分の1の415,000円でスタート、その後の株価は350,000円~400,000円程度で推移していますから、40万円弱でガンホー株を買えるようになりました。

株式分割は需給の改善期待が株価上昇を後押しする

第103回のコラムでもご説明しましたが、株式分割それ自体は株式の価値に何ら影響を及ぼしません。株式を単に細かく分けただけだからです。

しかしながら、株式分割により、最低投資金額が小さくなることにより、今まで買いたくても買えなかった投資家からの買い需要が見込まれるため、株価(株式分割考慮後の実質的株価。以下同様)の上昇要因とされるのです。

ガンホー株の場合は、さすがに株式分割前の半年ですでに株価が20倍以上にも上昇していましたから、株式分割によってさらに上値を追う、というわけにはいきませんでしたが、株式分割後に株価が上昇するケースは少なくありません。同じく3月27日より1対5の株式分割を行ったユーグレナ(2931)は、それまで堅調だった株価が株式分割後はさらに50%以上上昇しました。

そして、株式分割の発表を行っただけで、株式分割後の需給改善を期待した買いが入り、株価が上昇するケースもあります。4月1日に、4月30日を基準日として1対4の株式分割を行うと発表したエー・ディー・ワークス(3250)は、発表後株価が急騰、発表から10日間で3倍以上に跳ね上がりました。

株式分割と同じ効果が見込める売買単位変更

実は、需給改善効果により株価上昇が期待できるのは、株式分割だけではありません。

例えば、ジェイアイエヌ(3046)は、好調な企業業績が続き、今年1月の株価は3,000円を超える水準でした。しかし、ジェイアイエヌの売買単位は1,000株単位でしたから、最低投資金額は300万円以上と、まさに個人投資家にとっては「買いたくても買えない」水準に達していました。

そこで、ジェイアイエヌは2月1日より売買単位をそれまでの1,000株から100株に変更しました。これにより、投資家は今までの10分の1の金額でジェイアイエヌ株を買えるようになりました。

好調な企業業績に需給改善効果も後押しし、売買単位変更後も株価は上昇、2月1日からおよそ1カ月で株価は50%も上昇しました。

株式分割であっても売買単位変更であっても、最低投資金額を小さくする効果は同じです。最低投資金額が従来より小さくなればなるほど、需給改善効果は高くなり、ひいては株価上昇にも期待できます。

株式分割と売買単位変更を同時に行うケースが急増! 株価への影響は?

なお、ここ最近急増している、株式分割と売買単位の変更をセットで行うケースは注意が必要です。

例えば、ミクシィ(2121)は、3月27日に1対100の株式分割を実施しました。3月27日の基準値は、直前の3月26日終値168,100円の100分の1である1,681円となりました。これだけをみると、株価が100分の1になったわけですから、需給がさぞかし良くなるだろうと思ってしまいます。しかし、この株式分割と同時に、売買単位が1株から100株へ変更となっているのです。

3月26日終値で計算すると、株式分割前の最低投資金額は168,100円×1=168,100円、株式分割後は1,681円×100=168,100円と、両者は同じ金額です。最低投資金額は全く変わらないのですから、これでは需給の改善は望めません。

株式分割で需給の改善が期待できる銘柄を探す際は、合わせて売買単位の変更もないかどうかをチェックし、最低投資金額が小さくなっていることを確認するようにするとよいでしょう。