あくまでも「好業績」が見込める銘柄への投資が基本

黒田日銀新総裁の「サプライズ金融緩和」により、調整局面に入るかのように見えた日本株は急速に息を吹き返し、日経平均株価はついに13,000円台に突入しました。

不動産関連株など、安値から5倍、10倍に株価が跳ね上がる銘柄を目の当たりにすると、「乗り遅れたらまずい」とつい焦ってしまいがちです。でも、株価が大きく上昇している銘柄を高値で飛びついて買うことはかなりのリスクを伴います。特に初心者、初級者の方は、こんなときだからこそ原点に立ち返って、「業績」に注目した銘柄選びを重視する局面ではないでしょうか。

いまさら申し上げるまでもなく、株式投資で銘柄を選ぶ際の基本の1つは、「業績が良く、今後も業績の伸びが期待できる銘柄」を見つけて投資することです。

業績の良し悪しを見るために注目すべきは?

では、「業績の良し悪し」として、決算書の中のどの数値に注目すればよいのでしょうか。まずはなんといっても「利益」です。利益は企業が事業活動をした結果得られた儲けであり、儲けを得ることが株式会社の最大の目的であることを考えれば、これは当然のことです。

例えばPER(株価収益率)という指標があります。これは株価が予想1株当たり当期純利益の何倍の水準にまで買われているかを表すものですが、これは「利益」が評価の基準になっています。

でももう1つ、業績の良し悪しを計るために重要なポイントがあります。それが「売上高」です。

売上は利益の源泉です。売上から費用を差し引いたものが利益ですから、売上をあげないことには利益を伸ばすことができません。

事例① ジェイアイエヌの業績推移から分かること

そうした点を踏まえて、好業績の代表的銘柄である、眼鏡ショップ「ジンズ」を展開するジェイアイエヌ(3046)の業績推移をみてみましょう。

  売上高 営業利益 経常利益 当期純利益 1株当たり当期純利益
2010年8月期 10,603 620 600 232 11.4
2011年8月期 14,574 1,083 1,052 384 18.8
2012年8月期 22,613 2,633 2,551 1,089 52.7
2013年8月期(予) 32,400 4,900 4,730 2,400 100.1
2014年8月期(予) 40,000 6,500 6,300 3,200 133.5

(会社四季報2013年2集より  単位:100万円(1株当たり当期純利益は円))

さらに、4月4日には2013年8月期の業績予想が下記のように上方修正されました。

  売上高 営業利益 経常利益 当期純利益 1株当たり当期純利益
2013年8月期(予) 35,800 6,700 6,300 3,500 145.98

(「株式会社ジェイアイエヌ 平成25年4月4日 平成25年8月期 業績予想及び配当予想の修正に関するお知らせ」より)

業績推移をみると、ジェイアイエヌは、利益が年々増加しているだけでなく、売上も増加していることが分かります。こうした銘柄は、将来の成長期待も高くなり、PERも20倍、30倍、時にはそれ以上の水準まで買われることになるのです。

ジェイアイエヌのPERも、4月5日の終値5,110円と、2013年8月期の予想1株当たり当期純利益145円98銭から計算すると5,110÷145.98=35倍に達しており、投資家からの高成長期待が高いことが伺えます。

ジェイアイエヌ(3046)の株価チャート(週足)

事例② コナカの業績推移から分かること

他方、売上が横ばいの状態で、利益だけが増えた会社があります。例えばコナカ(7494)の近年の業績推移をみてみましょう。

  売上高 営業利益 経常利益 当期純利益 1株当たり当期純利益
2010年9月期 68,394 △195 △2,451 △5,599 △192.3
2011年9月期 64,807 3,213 3,537 795 27.3
2012年9月期 65,985 4,244 5,084 5,017 172.3
2013年9月期(予) 64,300 3,500 4,500 2,900 99.6
2014年9月期(予) 65,000 3,800 4,800 3,100 106.4

(会社四季報2013年2集より  単位:100万円(1株当たり当期純利益は円))

このように、コナカは売上がほぼ横ばいである一方、2010年9月期の大赤字から一転し、2011年9月期には大幅な黒字転換を果たしました。2012年9月期はさらに増益となっています。これらを好感して、コナカの株価は2010年10月の安値152円から2012年5月の高値1,160円まで、約7.6倍の上昇をみせました。

ただ、その後2012年11月には高値の半値以下の552円まで下げるなど、一本調子の株価上昇とはなっていないようです。

コナカ(7494)の株価チャート(週足)

売上横ばいのままの増益には限界がある

売上が横ばいのまま利益だけが増加するというのは、不採算店舗の整理や経費圧縮など「コスト削減」による業績回復を意味します。

企業が利益をあげるために、無駄な費用を削ることは非常に重要ですが、売上横ばいのまま利益を増やし続けるのにはやはり限度というものがあります。

実際、コナカの2013年9月期、2014年9月期の業績予想をみると、利益が頭打ちになっていることが分かります。

コナカ株がここからさらに大きく上昇するためには、やはり売上の増加を伴った利益の増加が不可欠です。

筆者の感覚からすると、売上が横ばいで利益だけが増加することによる業績回復の場合、PERでみて10倍程度が株価の適正水準のように思います。

4月5日終値1,088円と、2013年9月期予想1株当たり純利益99円60銭でコナカのPERを計算すると、1,088÷99.6=10.9倍です。

これがPER20倍、30倍の水準まで買われるためには、やはり売上高の増加が伴わなければ難しいといえます。

皆さんも、好業績銘柄を見つける際には、「利益の伸び」だけではなく「売上高の伸び」にもぜひ注目するようにしてください。