最新の会社四季報で業績予想をチェック!

会社四季報の最新号が3月中旬に発売されました。前号は書店で品切れが続出するほどの人気だったようですが、最新号ではひっそりと150円値上げされていました。値上げ自体は購入する側にとってうれしいものではありませんが、それだけ株式市場に参加する個人投資家が増えているからこその価格戦略なのでしょう。市場参加者が増えて資金が株式市場に入ってくることは株価にとってプラスですから、その点は大いに喜ばしいことです。

さて、昨年11月中旬の野田前首相の解散発言以来、順調に株価が上昇している日本株「アベノミクス相場」ですが、最新号の会社四季報をご覧になった皆さんは、その内容をどのように感じられたでしょうか。

筆者も最新号で自身の持ち株やウォッチしている銘柄の業績予想を確認しましたが、「株価の調整を続けている銘柄の、その理由が分かった」一方、「株価が大きく上昇している銘柄の中に業績予想が思ったほどよくないものがある」というのが率直な感想です。

調整続きの銘柄は来期の業績予想があまり良くないから

アベノミクス相場で日経平均株価・TOPIXこそ昨年11月安値から上昇を継続しているものの、一部の個別銘柄では調整が続いています。業種でいえば建設株や鉄鋼株などが挙げられます。

建設株は今年の年明け以降、3カ月近くも調整局面が続いています。筆者もアベノミクスの国土強靭化政策や震災地の復興需要をはじめ、公共工事増加の恩恵を受けることが期待できる建設株が年明け以降まったく上昇しないことを不思議に思っていました。でも、最新の会社四季報をみると、人件費増加等で採算が悪化していることなどから業績予想があまり良くないことが分かります。これが株価の調整が長引いている理由なのだな、と判断することができます。

鉄鋼株も、2月以降株価が軟調に推移していますが、四季報最新版では平成25年3月期の業績予想が前号より下方修正され、さらに平成26年3月期の業績予想も思ったほどよいものではなく、足元の株価下落はそれが理由であることが判明しました。

こうした銘柄は株価だけみれば「出遅れ」に見えますが、業績が思わしくないことが株価低迷の理由であると四季報最新版により判明したのですから、少なくとも下降トレンドが続く間は安易に手出ししないほうが良いと個人的には思います。

一方、好業績株として長期的な株価の上昇が続いている銘柄、例えばジェイアイエヌ(3046)やMonotaRO(3064)などは、相変わらず業績好調で、今期・来期の業績予想もよい数字が出ています。こうした銘柄は、株価のトレンドが変わらない限りは保有を続けて問題なさそうだ、という判断ができます。

株価大幅上昇なのに業績予想は???

ところで、足元で株価が大きく上昇している不動産流動化関連株につき、四季報最新版の業績予想をみると、思ったほどのものではありませんでした。

例えば、流動化関連の代表的銘柄であるケネディクス(4321)は、先日の決算発表を受けて失望売りが出され、株価は直近高値から40%も下落しました。しかし、その後株価は急速に切り返し、高値更新にまで至りました。そのため四季報の業績予想もさぞ良い数字が出ているのだろうと思っていたのですが、そうではありませんでした。平成26年12月期の予想1株当たり当期純利益523.7円と3月末の株価50,800円で計算したPERはなんと97倍にも達しています。

また、いちごグループホールディングス(2337)やトーセイ(8923)といった他の流動化関連株も同様に、株価がかなり高値まで買い進まれている割には業績予想はそれほどでもない、という印象を受けます。

不動産流動化関連株は「バブル」か?

では、これらの不動産流動化関連銘柄は、「バブル」なのでしょうか。それは残念ながら現時点では分かりません。今後の業績如何だからです。

実は長期上昇相場の初期では、会社四季報や会社発表の業績予想は、株価上昇が長期間続き、景気も本格的に回復するという前提で作られてはいません。したがって、保守的といいますか多少控えめな予想になっていることが多いのです。

2004年~2006年にかけての上昇相場でも、上昇初期に発売された会社四季報の業績予想は大したことがなく、大きく上昇を続ける株価と辻褄が合わなかったのですが、上昇相場終盤には当初予想を超えたかなりの好業績となった銘柄が続出し、最終的には株価と業績の帳尻があう形となりました。

今回の上昇相場も、株価上昇が長期間続き、景気回復も本格的なものになれば、業績が劇的に回復する銘柄が続出するはずです。

上昇トレンドが続く限り弱気になる必要はない

したがって、会社四季報の業績予想が期待していたほどではなかったといっても落胆することはありませんし、ろうばい売りする必要もありません。

現に、上述の不動産流動化関連銘柄は、会社四季報最新号が発売された後、株価が下落するどころかさらに上昇を続けています。

「株価は株価に聞け」とはよく言われる相場格言ですが、おそらく株価は四季報の業績予想よりはるかに良い業績が見込めるとして、高値更新を続けているのです。少なくとも株価の上昇トレンドが続く限り、弱気になる必要はないのではないかと筆者は考えています。

仮にこの株価上昇が業績の本格的回復を伴わないバブルだとしたら、やがて株価は大きく下落してしまうわけですが、その場合でも下降トレンド転換を確認後速やかに売却すれば大丈夫だと思います。

ただ、短期間に株価が3倍、5倍と上昇している銘柄は、多少「ミニバブル」的な状況にあることも間違いありません。そうした銘柄については、しっかりと含み益を実現させておくために持ち株を少しずつ利食いするという選択肢も悪くないでしょう。

なお、不動産関連株の中でも、よみうりランド(9671)や東京都競馬(9672)などのいわゆる「含み資産株」と呼ばれる銘柄は、業績が評価されているというよりは、地価上昇による含み益の拡大を期待して買われているわけですから、会社四季報の業績予想より株価のトレンドを重視するようにしましょう。

バイオ関連株は足元の業績ではなく「夢を買う」相場

不動産流動化関連銘柄とともに足元で株価が大きく上昇したのがバイオ関連株です。

株価が短期間に5倍、10倍以上になった銘柄も多く、さぞかし最新の会社四季報では業績予想が大きく改善しているだろうと思ってページをめくると、実際には相変わらずの赤字継続、という銘柄も少なくありません。株価急騰銘柄の中には継続企業の前提に関する注記や重要事象についての記載がある(つまり倒産リスクが高い)銘柄も多く含まれています。

バイオ関連株は足元の業績を評価した上昇というよりは、新薬開発などによって業績が様変わりすることを期待した、まさに「夢を買う」相場になっています。

こうした銘柄は会社四季報の業績予想をみてもほとんど参考になりません。各社の事業内容や研究成果などにつきよく調べたうえで、株価チャートでトレンドに応じて売買していくのが無難であり、高値掴みを避けるために株価急騰後の新規買いは慎むべきでしょう。

足元の急速な株価上昇がバブルなのか、それとも業績が後からついてくるのか、現時点では分かりません。でも、せっかく株価が大きく上昇しているのなら、適度な利食いも入れつつ、上昇トレンドが続く限り保有を続けてみることが、より高い投資成果につながる、筆者はそのように思っています。