現実 3 :ファンダメンタルを過信した空売りは禁物

近頃は信用取引の敷居も非常に低くなり、多くの個人投資家が信用取引を利用しているようです。しかし、信用売り(=空売り)をする際には十分な注意が必要です。

日経平均株価の上昇が続く中、ファーストリテイリング株を空売りしている個人投資家は逆に含み損の拡大に苦しんでいます。

実は、ファーストリテイリング株は、ファンダメンタル(業績)の面からみると明らかに割高になっています。例えば平成13年8月期の会社四季報予想で計算した予想PERは約39倍にまで達していて、今後業績の劇的な伸びは考えにくいファーストリテイリング株にしては非常に高い数値です。

また、ファーストリテイリングの時価総額はついに3兆円を突破しました。これは、三菱商事、JR東日本、日立製作所、野村証券、東京海上など日本を代表する大企業よりも大きいものです。果たしてこれが現実に即しているのかといえば、首をひねらざるをえません。

でも、株価は「割高だ」という声をあざ笑うかのように上昇を続けています。これが株式投資の難しさであり、面白さでもあるのです。

バブル相場や逆バブル相場のときは、企業実態とはかけ離れた株価がつくことが往々にしてあります。さらにファーストリテイリング株の場合は、1社だけで日経平均株価の10%が動くわけですから、今のような上昇相場では日経平均株価を上げたい投資家からの半ば仕掛け的な買いが業績に関係なく流入し続ける可能性が大いにあります。

株価がPERなど各種指標からみて割高だと思った時、新規買いを見送ったり、利食い売りをするのは問題ありません。しかし、割高だからといって空売りをするのは、特に上昇トレンドが続いている間は禁物であると考えます。

現実 4 :売り長銘柄への空売りは避けるのが無難

先日の日本写真印刷株(7915)の事例研究のコラムでも触れましたが、売り長(信用買い残高より信用売り残高の方が多い)である銘柄の空売りはできるだけ避けるのが無難です。

株価が明らかに割高だからという理由で空売りを仕掛け、意に反して株価が上昇しても損切りしないどころか追加で空売りを増やす…これが売り長の状況を作り出していきます。

ファーストリテイリング株は、従来より売り長の状況が続いているのですが、今回の上昇の起点である11月中旬以降の信用倍率の推移をご覧ください。

11月16日 0.55
11月22日 0.38
11月30日 0.13
12月7日 0.10
(途中省略)  
2月15日 0.10
2月22日 0.15
3月1日 0.15

(出典:ヤフーファイナンス)

このように、11月16日の0.55倍から、信用倍率はさらに低下していて、空売りが積みあがっていることが分かります。

売り長の状態でさらに株価が上昇すれば、最後に待っているのは空売りした投資家の損失覚悟の買い戻しによる「踏み上げ」です。3月8日のファーストリテイリング株の急激な上昇をみると、空売りの踏み上げが入り始めているのかも知れません。

筆者には、上昇トレンドが続く中、日経平均株価への影響が飛びぬけて大きく実態価値とかけはなれた株価をつけやすい、さらに売り長の状態が続いているファーストリテイリング株を空売りする投資家をどうしても理解できません。

もし空売りをするなら、信用買い残高が信用売り残高より圧倒的に多く、かつ下降トレンドである銘柄を選んだほうがリスクは格段に低いと筆者は思います。