早いもので、再び3カ月に1度の決算発表シーズンを迎えています。3月決算企業であれば第3四半期決算、12月決算企業は本決算の発表となります。今回も決算発表により、多くの銘柄の株価が大きく動いています。

この決算発表シーズンの個別銘柄の株価の値動きは、筆者としても本当に頭の痛い問題ではありますが、筆者なりの対応法も踏まえつつ、乗り切り方を考えていきたいと思います。

業績が良いか悪いかではなく市場コンセンサスとの比較で株価は動く

決算発表を行った企業の株価の動きをみると、好業績なのに売られる、あるいは大赤字なのに買われる、というケースも結構目立ちます。

特に初心者、初級者の個人投資家にとっては「なぜ?」と不思議に思うかもしれませんが、株価は業績が良いから上がる、業績が悪ければ下がる、という単純なものではありません。

決算発表前についている株価は、市場参加者が「だいたいこのくらいの業績になるだろう」と予想した結果のものです。したがって、いくら大幅な増収増益の決算だとしても、市場参加者の予想を下回れば大きく売られることになりますし、大赤字の決算であっても、市場参加者の予想より赤字額が少なければ株価は上昇します。

つまり、「市場コンセンサス」に比べて発表された決算数値が上振れていれば株価上昇要因、下振れていれば株価下落要因となります。

個人投資家が市場コンセンサスを正確に予想することはなかなか難しいのですが、例えばヤフーファイナンスでは個別銘柄ごとに「業績予報」として、最新のコンセンサス予想を見ることができます。

なお、会社四季報に掲載されている業績の予想数値は最新の市場コンセンサスと結構かけ離れていることが多いので注意が必要です。会社四季報の数値はあくまでも発売直前の東洋経済新報社の予想数値ですので、時の経過とともに陳腐化してしまうのは致し方ありません。

利益の「累計額」ではなく「四半期毎の金額」をチェック

企業は1年間の間に、四半期決算3回、本決算1回の計4回の決算を発表するわけですが、日本経済新聞に掲載される決算発表のデータは「累計額」になっています。つまり、3月決算の第3四半期決算ならば、「4月~12月の9カ月の累計」が掲載されています。

実は、この累計額だけをみていては見えてこない非常に重要なことがあります。それは、「各四半期ごとの業績の推移」です。

株価は「変化」に敏感に反応します。そして実際に業績が底打ちする前の「兆し」を感じた時点ですでに株価は下落から上昇に転じるものです。

各四半期ごとの利益の推移をみれば、この「兆し」を感じ取ることができます。気になる企業の四半期決算が発表されたら、累計額だけでなく各四半期ごとの利益をチェックするようにしましょう(この点については次回以降のコラムで「事例研究」として詳しく取り上げたいと思います)。

本決算の場合は来期の業績見通しに要注目

四半期決算の場合は当期の通期の業績予想を同時に発表しますが、本決算の場合は、来期の業績予想を同時に発表することになります(ただし業績の予想が困難として業績予想を非開示とする企業もあります)。

株価は「将来の業績」を見越して動きます。そして、投資家は「前期の業績もよく、当期もよければ、きっと来期も良いはずだ」と考えるのが普通です。また、そのことはある程度株価に織り込まれています。

そのため、当期の本決算がいくら好業績であっても、来期の業績予想が横ばいだったり、減益見通しだったりすると、株価が大きく売られる原因となります。

たとえばケネディクス(4321)が2月14日に平成24年12月期決算と同時に発表した平成25年12月期の業績予想では、売上高、営業利益とも減少するという見通しでした。これを嫌気して、翌2月15日のケネディクス株はストップ安まで売り込まれてしまいました。

もし保有している銘柄につき来期の業績予想が振るわず、株価が下落して下降トレンドに転じてしまった場合、一度売却してその後の株価の動きをみてから、再度買い直すかどうか決めるのがよいと思います。

好業績銘柄は決算発表前から上昇トレンドであることが多いが…

決算発表前後の株価のトレンドは以下の4つのパターンに集約できます。

  1. 発表前:上昇トレンド → 発表後も上昇トレンド継続
  2. 発表前:上昇トレンド → 発表後に下降トレンドへ転換
  3. 発表前:下降トレンド → 発表後も下降トレンド継続
  4. 発表前:下降トレンド → 発表後に上昇トレンドへ転換

好業績の決算が発表される企業の株価は発表前から上昇トレンドのことが多く、逆に悪い業績が発表される企業の株価は発表前から軟調で下降トレンドである場合が多いです。

したがって、上昇トレンドの銘柄を保有し、下降トレンドの銘柄は保有しない、という投資スタンスでいれば、決算発表で大きな痛手に会う可能性はある程度回避できると思います。

ただし、市場関係者の予想と大きくかけ離れた「サプライズ決算」が発表された場合は、それまでの株価のトレンドを無視して株価が動くことがありますから要注意です。②と④は「サプライズ決算」のときに生じるパターンです。

特に問題なのは②のケースですが、これに対応するには、保有する銘柄数をある程度増やしておくのがよいのではないかと思います。仮に1銘柄しか保有しておらず、その銘柄の株価がサプライズ決算により30%下落したならば、その影響をもろに受けてしまいますが、10銘柄保有しているうちの2社の株価が30%下落しても、影響は全体の6%に抑えることができます。

決算発表後に買っても十分間に合うことも多い

一方、プラス方向の「サプライズ決算」による上記④のパターンも結構出現します。筆者は下降トレンドにある銘柄の保有は、取得価格が時価よりはるかに低く、ヘッジの空売りもできない場合を除いては極力避けるようにしています。そのため、④のパターンの銘柄を決算発表前に保有することは基本的にありません。

サプライズ決算により下降トレンドから上昇トレンドへ、つまり株価が25日移動平均線の下から一気に突き上げて25日移動平均線の上まで駆け上ってくることになれば、これは上昇トレンド転換直後の状態ですからこの時点で新規買いの対象になります。

決算発表で株価が上方へ反応した場合、それがトレンドとしてしばらく続くことが多いため、その点でも要注目です。

ストップ高買い気配が何日も続くようなら話は別ですが、決算発表により5%~10%程度上放れて始まる程度なら、飛び乗ってしまってもよいのかなと思います。

例えばアルプス電気(6770)は、1月31日の場中に第3四半期決算発表を行いました。下方修正の決算で内容はあまりよくなかったものの、同時に発表されたリストラ策が好感され、また決算発表通過により当面の悪材料出尽くしととられた結果、この日の終値は533円と、前日終値486円から47円(9.7%)上昇し、株価は25日移動平均線を上抜けました。

これを受けた翌2月1日の寄り付きに528円で買えば、上昇トレンドの初期段階で十分安く買えたことになります。その後も株価は順調に上昇しましたが、仮にこの後株価が下落したとしても、25日移動平均線割れで損切りすれば、小さな損失で抑えることが可能です。

アルプス電気(6770)の日足チャート

3月決算企業の第3四半期決算発表はほぼ終わりましたが、本コラムの内容は今後訪れる決算発表シーズンにおいても対応可能なものですので、ぜひ頭の中へ入れておいてください。