「配当利回り」に加えて業績や配当金の推移もチェック

 配当金の額が今後も不変と仮定した場合の配当利回りと投資元本の回収期間の関係については上記のとおりですが、実際には配当金の額がずっと変わらない企業は少数派です。景気や為替相場に業績が大きく左右される企業では、業績に応じてどうしても配当金の額も増減させなければなりません。

 そうした企業の配当利回りが6%とか8%と高水準であっても、それは表面的なものに過ぎません。配当利回りの計算式の分子は「来期」の予想配当金ですから、来期以降、業績悪化により配当金が大きく減額される可能性が高いならば、どんなに現時点での配当利回りが高水準であっても意味がありません。

 このように、単純に配当利回りが高いかどうかという観点から銘柄選びをするのはリスキーです。ではどこに着目するかというと、過去の配当金や業績の推移です。

 まずは過去10年間程度の1株当たり配当金の推移をチェックし、増加傾向ないしは横ばいであれば合格です。配当金が安定している企業であれば、配当利回りの信頼性もアップするからです。

 次に過去10年間の業績の推移をみます。配当金が横ばいであっても、業績が不安定であったり、赤字になったりしているケースは注意が必要です。

 通常、配当金は当期にあげた利益の中から支払われるものです。でも企業によっては配当金を支払うだけの利益があがっていなかったり赤字決算であったとしても、配当金を維持するために過去の利益の蓄積(=利益剰余金)を取り崩して配当金を支払っているケースも珍しくありません。しかし、そんなことが長く続くはずもなく、業績の低迷が今後も続けばやがては配当金は減らされていきます。

 以上より、過去10年間の配当金が増加傾向ないしは安定していて、かつ毎年の1株当たり配当金より1株当たり当期純利益の金額が多い企業を選択するのが最も手堅い銘柄選びの方法です。

優良企業の株価が連れ安した局面が狙い目

 とはいえ、配当金が安定していて毎年の業績もよい優良企業の株価はなかなか割安な水準にまで下がらないことが多いのも事実です。

 でも、2008年のリーマンショックの時のように、株式市場全体がパニックに陥って、優良企業の株価でさえも大きく値下がりするようなことが時々あります。配当金を重視する投資家にとってはそこが新規投資の絶好のチャンスとなります。瞬間的に優良企業の配当利回りが7%とか10%という平時では見られない高水準に達することもあるからです。

 また、幸いなことに今の日本の株式市場では配当利回りが3%台、4%台といったかなりの高水準に達している優良企業の株価が安値のまま放置されています。損切りの苦手な方には、配当利回りが高いうちに優良企業の株を仕込んでおき、保有を続けて毎年の配当金を楽しみに待つ、こんなゆったりとした投資スタイルも悪くないかもしれませんね。