業績の良い会社の株価は上昇するはずだが…

株式投資では株価と業績は連動する、だから業績のよい銘柄の株価は上昇する、というのが「原則」です。

でもこの原則が当てはまらない、つまり業績がいくら良くても株価が大きく下がることもある、といったら初心者の方は混乱してしまうでしょうか。

サンドラッグ(9989)という会社があります。この会社は20年以上も増収増益が続いています。そんな好業績の会社なら、株価も右肩上がりで大きく上昇しているに違いない、と思いますよね。

ところが株価チャートをみると、確かに長い目で見れば上昇しているのですが、決して右肩上がりではなく、株価が大きく下がっている時期もあることに気がつくはずです。

サンドラッグ(9989) 月足チャート

昔は「株価や土地の値段は上昇する」のが原則だった

バブル崩壊前は「株価や地価は右肩上がりに上昇する」というのが原則でした。しかし今こんなことを言ったら笑われてしまいますね。原則は時代の移り変わりとともに変化していくこともあるのです。

でもいまだに「株を長期的に保有すれば値上がりする」と私たち個人投資家にアドバイスする専門家が意外と多いのには驚かされます。日経平均株価を現在まで20年間という長期間保有していたら、株価は4分の1にまで下がってしまっているにもかかわらずです。

ただし、個別銘柄でみれば日経平均株価がバブル崩壊後大きく下がる中、逆に大きく値を上げたものも少なくありませんでしたから、そうしたものを選んで長期的に保有しなさい、という意味でアドバイスしているのかも知れません。

株式投資では理不尽な例外が良く起こる!

株式投資で最も危険なのは、「原則」=「唯一の正解」と思ってしまうことです。業績の良い銘柄の株価は上昇するのが「原則」ですから、そうした好業績銘柄を買ったにもかかわらず株価が下がり続けた場合、「そんなはずはない」と思ってしまいたくなります。

ところが悲しいことに、株式投資では上のサンドラッグ株のように好業績でも株価が下がるという「例外」が結構頻繁に発生するのです。この事実を頭に入れておいてください。

「好業績が続いている銘柄を選んで買ったのだから下がるなんておかしい。そのうち上昇するはずだ」と損切りせずに保有を続けると、株価がさらに下がり多額の含み損を抱え、塩漬け株(保有する株の株価が大きく値下がりしてしまい、仕方なく持ち続けている株のこと)の発生につながってしまうことも少なくないので注意が必要です。

「そうなった理由を探す」より「そうなった事実を重視して行動」することが大事

業績絶好調で株価上昇間違いなし、という銘柄を探して自信満々で買ったもののなぜか株価は逆に下げ続ける…。考えられる理由としては色々あります。確かに業績絶好調だが株価が上がりすぎていた、将来の業績悪化を見越して株価が下げている、相場全体の地合いが悪いため連れ安している、金融機関がリスク資産圧縮のため持ち株を売却している、何か大きな悪材料が隠れている、などなど。

こんなとき、「なぜ業績がよいのに株価が下がるのか」と理由を無理に探そうとするのはよくありません。結局のところ、その本当の理由は誰にも分からないからです。1つだけいえることは、売り手の方が買い手より多かった、という事実だけです。

自分に都合の良い理由(「株価下落は一時的でありすぐ回復する」とする専門家の見解など)を探してきて安心してしまうのではなく、「株価が意に反して下落した」という事実を直視して投資行動を行うのが失敗しない秘訣です。

たとえ業績絶好調の銘柄に投資したとしても、株価が下がったら一旦損切りし、株価の下げ止まりを待って買い直すようにしましょう。

損切りせずに我慢して持ち続ければ報われることももちろんありますが、株価が下落したまま戻らない場合もあります。失敗を避けるためには、「損切り→下げ止まり後に買い直す」ことが重要です。

本当は「業績が良いから上がる」のではなく「買い手が多いから上がる」

ここで株式投資における本当の原則をお伝えしておきます。前項で少し触れましたが株価が上昇するのは「業績が良いから」ではなく「売り手より買い手が多いから」です。逆に買い手より売り手が多いならば株価は下がります。これは株式に限らずすべての商品に共通の原則です。

天候不順で野菜の収穫量が少なければ、売り手(=供給量)より買い手(=需要量)が多いため価格は上昇しますよね。逆に豊作で市場に流通する野菜の量が多くなれば、売り手が買い手より多くなるので価格は下がります。

株価もこれと同じことなのです。ただし、株式の場合は一般的に「企業価値≒株価」という関係が成り立ちます。業績が良い銘柄は将来の企業価値の向上が期待できますから、自然と買い手が増えていくものです。そのため株価が上昇するのです。

現に、業績が良く明らかに株価が割安であっても、新興市場や2部市場などに上場しているために知名度や人気度が低く、いつまでも株価が上昇せず安値に放置されていることは少なくありません。買い手がいなければ株価は上昇しない典型例です。

逆に業績がよくても売り手が多ければ株価はいくらでも下落します。極端な例がリーマンショック時や東日本大震災直後の株価急落で、このときは好業績かどうかに関係なくほとんど全ての銘柄の株価が大きく売られました。

ただ、業績が良い銘柄の方が、株価が下落したときの下落率も比較的小さくて済むでしょうし、他の銘柄より株価が上昇しやすいのは間違いありません。

業績の良い銘柄を探し出して投資するとともに、株価のトレンドを重視して買い時、売り時を探す、そして損切りを徹底することが株式投資で成功するために重要です。

お知らせ

先日発売された拙著最新刊「株を買うなら最低限知っておきたいファンダメンタル投資の教科書」(ダイヤモンド社)では、株価上昇が期待できる好業績銘柄や割安銘柄の探し方に加えて、買い時や売り時の見極め方まで説明をしています。初心者の方にも理解しやすいように書いてありますので、ご興味のある方はぜひご覧下さい。

「株を買うなら最低限知っておきたいファンダメンタル投資の教科書」
足立武志(ダイヤモンド社刊)