仕手株・材料株が復活の兆し?

最近、新日本理化(4406)をはじめとして、短期間に株価が急騰している「仕手系材料株」と呼ばれる銘柄が出てきていることを皆さんはご存知でしょうか?

新日本理化(4406)の週足チャート

仕手株とは、特定の投資資金が流入することによって、株価が大きく吊り上げられたり、乱高下するような状態にある銘柄をいいます。材料株とは、株価にプラスの要素を持つ材料(画期的新製品・新技術の開発など)に反応して、株価が大きく上昇している銘柄です。

いずれも、ファンダメンタル(業績等)の要因よりも需給的要因によって、つまり「業績云々ではなく株価が上がっているから買いが集まる」という理由で株価が動くのが特徴です。そして、株価上昇後、最終的には大きく下落するのも特徴です。

ただし最近では純粋な仕手株というのは姿を消したといわれており、また、仕手株と材料株を明確に区別することは難しいため、上記のような株価の動きをする銘柄は「仕手系材料株」と呼ばれることが多くなっています。仕手株と材料株は株価の値動きのパターンとしてはほぼ同じであるため、当コラムでは説明上両者を区別しないこととします。

過去活躍した仕手株・材料株はこんな銘柄

過去に活躍した有名な仕手株として石川製作所(6208)や井筒屋(8260)などが挙げられます。また、材料株としては不動産事業主体から液晶事業へ進出し、業績の劇的な改善が期待されたRISE(旧ヒューネット)(8836)などがあります。

石川製作所(6208)の月足チャート

井筒屋(8260)の月足チャート

RISE(8836)の月足チャート

株価チャートをみると、いずれも、株価が短期間に大きく上昇し、株価の乱高下を繰り返しながら、最終的には大きく下落していることがお分かりいただけると思います。

冒頭の新日本理化は、業績の急回復が予想されており、株価上昇に業績の裏づけがある程度存在するため、過去の仕手株のように株価が「行って来い」にはならないかも知れません。しかし、すでに短期間で株価が大きく上昇していることから、上昇が終われば株価は大きく下落する可能性が高いと思われます。

仕手株・材料株は損切りの技術を磨く格好の場

個人的には仕手株・材料株は売買技術、特に損切りの技術を磨くための格好の練習の場であると考えています。最終的には株価は大きく下落するので、高値掴みをした場合、損切りを適切に行わなければあっという間に大きな損失や含み損が生じてしまうからです。

仕手株・材料株には「ふるい落とし」と呼ばれる一時的な調整があります。しかし、実際に株価が下落し始めた時点では、それが一時的なものなのか、それとも上昇相場が終わり大きな下落につながるものなのかは後になってみないと分かりません。

そんな時は、一時的な下落であると決め付けずに、「○○円より下落したら損切り(もしくは利食い売り)する」のが定石です(「○○円」は直近安値や買値から10%下の株価など)。そうしないと、下落が一時的なものにとどまらなかった場合に大きな損失につながってしまうからです。

実は、このような判断は何も仕手株・材料株に限らず、どんな銘柄においても当てはまるルールの1つです。仕手株や材料株は、株価の上昇→下落という1サイクルが、通常の銘柄より何倍・何十倍も早く動いているため、素早くかつ的確な決断が常に求められます。決断を1日先延ばしするだけで多額の損失が生じることも珍しくありません。

ですから、仕手株・材料株で大きな損失を被らないようにできれば、他の一般的な銘柄への投資でも大失敗することはなくなるはずです。

損切りができないならば仕手株・材料株は手出し無用

逆に、損切りがどうしても出来ない、という個人投資家の方はこうした仕手株・材料株には手を出さないほうが無難です。短期間に小気味よく株価が上昇しているのをみると、つい飛び乗ってしまいたくなるのが心情ですが、そんなには甘くありません。不思議と自分が買った途端に株価が急落、ということもよくある話です。

仕手株・材料株の乱舞は、株式市場全体が下落相場で冷え切ってしまっているようなときにはあまり見ることができません。最近になって目立つようになった仕手系材料株は、株価下落ですっかり萎縮してしまった日本株に咲く一輪の花です。こうした銘柄が次々と出現すると、特に個人投資家のマインドは劇的に改善し、株式市場に流入する資金の増加も見込まれます。仕手株・材料株の存在自体には賛否両論あるものの、筆者自身はこれらの銘柄がけん引役となって、日本株全体も上昇基調となるよう導いてもらいたいと願っています。2012年の日本株、大いに期待したいものです。