評論家ではなく個人投資家として「金は買いか?」を考える

金(ゴールド)の上昇が続いています。ここまでの上昇をみせると、バブル相場の様相も呈してきているように思えますが、専門家・評論家やプロの間でも「まだまだ上昇する」「間もなく急落する」と様々な持論がその根拠とともに展開されています。

読者の皆様も、「果たしてゴールドはこれからさらに上昇するのか」について気になることでしょう。こんなとき、筆者はどのように考え、どのように行動するのかを今回のコラムでは書いていきたいと思います。

はじめに申しておきますが、筆者は専門家・評論家・プロのように「ズバッ」と断定することはしません。自身で投資をしない評論家は予測が外れても懐は痛みませんが、私たち個人投資家は、下手をすれば大損をする可能性もあるわけです。

したがって、実際に身銭を切って投資する個人投資家の一代表として、筆者ならどのように判断して行動するかを示すことで、読者の皆様に少しでもお役立ていただければと思います。

ここから買うのは少し怖いがチャートは上昇トレンド

筆者の個人的見解を率直に申し上げると、今の水準からゴールドを新規に買うのは少し怖いという感じはします。その理由はただ1つで、すでに安値からかなり大きく上昇しているからです。

ただし筆者は専門家・評論家・プロと異なり、理由や理屈をつけて「まだ上がる」「もう下がる」と断定することはせず、「相場は相場に聞け」という有名な格言に従って行動します。

そこで金相場のチャートをみると、短期的には波乱含みの動きですが中長期的には明らかに上昇トレンドにあります。相場に聞いてみたところ、まだ上昇が終わったとする兆候は表れていないという回答を得た、という感じでしょうか。

ただし、上昇トレンドも永遠に続くわけではなく、いつかは終わります。したがって、今から買ったとしても、上昇トレンドが終わった可能性を示唆する兆候が表れていないかどうか、買った後も常にチャートをチェックしておく必要があります。上昇トレンドが止まれば、「世界経済や世界情勢の不安定さを考えると再び大きく上昇するはず」などと余計なことは考えずに一旦売却しておくべきだと思います。そして、その後上昇トレンドが再開されてから改めて投資すればよいのです。

なお、すでにゴールドを保有している場合は、上昇トレンドが続く限り保有し、上昇トレンド終了時点で売却が基本です。

今から買うなら損切りの覚悟が必要

まとめると以下のようになります。

  • 個人的にはこのレベルから新規買いするのは気が引ける
  • しかし、チャートを見ると上昇トレンドが続いている
  • 上昇トレンドであるからには新規買いもOKだが、今後の上昇トレンド終了の兆候に注意
  • 上昇トレンド終了の可能性が高まった時点で即座に売却する

仮に今から買って、すぐに上昇トレンドが終了してしまうと、おそらく売却時には損失が生じてしまうと考えられます。したがって、損切りが苦手という方は、今の水準からのゴールドの新規買いはリスクが相当高いと考えていた方がよいでしょう。一旦上昇トレンドが止まれば、そこから大きく下がって多額の含み損が生じることも否定できないからです。無論、損切りをしっかりとできるという方であれば、損失も限定されますので、上昇トレンドが崩れていない限りは新規買いも問題ありません。

資産防衛目的で投資するなら損益は気にせず持ち続けるのが原則

ここまでの話は、利益を得る目的でゴールドへ投資することを念頭においています。ゴールドの場合ややこしいのは、単純に利益を得るためだけでなく、資産防衛の観点からの投資ニーズもあるという点です。資産を守る目的でゴールドに投資する場合は、考え方が根本的に異なりますので注意してください。一言でいえば、資産を守る目的で投資する際は、「含み損益は気にせずに保有を続ける」のみです。

筆者は、ゴールドへ投資する際は、「利益を得る目的」と「資産を守る目的」を混同しないように気をつけています。そうしないと、売却すべきかどうかの判断がおろそかになってしまうからです。例えば、利益を得る目的でゴールドへ投資したのなら、チャートをみて上昇トレンドが止まれば損切りしてまでも一旦売却すべきなのに、「ゴールドへの投資は資産を守る目的もあるからこのまま持ち続けよう」と投資目的をすり替えてしまいがちです。

また、投資対象物も区別しておいた方が良いかもしれません。筆者は「利益を得る目的」でゴールドへ投資する場合はETFに、「資産を守る目的」の場合は金の現物(金地金)に投資するようにしています。

資産防衛目的なら価格にかかわらず最低限は買わざるを得ない

もし今から万が一に備えてゴールドへの投資をしたいとお考えの方は、第95回コラムでも少し触れましたが、現在の価格にかかわらず、必要最低限の額については買っておくしかないと思います。なぜなら、「万が一の事態」というのはいつ起こるか分からないからです。その上で、今後金価格が大きく下落したような時に、買い足していけばよいのではないかと思います。

資産を守るための投資ですから、「もっと安くなってから買おう」ではまずいわけです。「もっと安くなる」前に万が一の事態が生じたら、目も当てられなくなります。資産を守る投資では、損益は度外視しなければなりません。

ゴールドへの投資(資産防衛目的は除く)も個別株投資と同様、変に理屈をつけて上がるか下がるか決めつけるのではなくあくまでも自然体で、チャートの示した方向性に従って行動を決めていけば大失敗をすることはないと思います。