ETNを使えばさまざまなものを投資対象にできる

今年の夏、東京証券取引所に新たに「ETN(イー・ティー・エヌ)」という商品が上場するのをご存知でしょうか。

ETNとは「Exchange Traded Note」の略で、「上場投資証券」または「指標連動証券」と呼ばれる上場商品です(東京証券取引所ホームページより引用)。

ETNはおなじみのETF(イー・ティー・エフ)と一文字違いであることからも想像できるように、ETFに似た商品です。売買方法や税金の取扱い、信用取引ができる点などもETFと基本的に同じ(ひいては個別銘柄とも同じ)です。

しかし以下の通り、ETNはETFとは異なる特徴を持っています。

ETNの「N」は「Note(=債券)」のことを指しています。そのためETNはETFと異なり、現物資産を持たず、特定の指標等に価格が連動するよう発行体が設計し、発行した債券を投資対象とします。

そのため、現物資産への投資が難しいようなもの、例えばレアメタルとか農産物、ヘッジファンド指数などであってもETNなら組成が可能です。

また、ETFで問題になるトラッキング・エラー(ETF自体の価格とETFが投資対象とする現物の指数・指標とに乖離が生じてしまうこと。例えば金価格が1,400円であるのにETFの価格が1,380円や1,420円になってしまうこと。)がETNでは生じません。これがETNのメリットの1つです。

さらに、ETNは現物資産への投資を行いませんので、発行側の管理・運用コストを低く抑えることができ、投資家が支払うコストも少なく済むことが期待されます。

ETN最大の注意点「信用リスク」

一方、ETNへの投資に際しての最大の注意点が「信用リスク」です。ETNはETFのように現物資産へ投資するのではありません。指数・指標等に価格が連動する債券に投資します。

そのため、その債券の発行体の経営状況が悪化したり、破たんした場合は、ETNが投資対象とする指数・指標の価格に関係なく、ETN自体の価格が大きく値下がりする可能性があります。

例えば、ある指数に連動するETNの価格が10,000円のときに投資したとしましょう。もしその後指数が5倍の50,000円になったとしても、ETNが投資する債券の発行体が破たんしてしまえば、ETNの価格は50,000円ではなく、ゼロに近い価格になってしまう恐れもあるのです。

信用リスクを考慮した投資ルールの設定を

この「信用リスク」があるため、証券取引所もETNの発行体に対しては、財務基準をはじめさまざまな基準を設け、それをクリアーしたところでないとETNを発行できないことになっています。

しかしながら、リーマン・ショックの例をみても分かる通り、誰もが「まさか破たんするはずがない」と思っている金融機関でさえ、破たんする可能性はゼロではありません。

したがって、ETNへ投資する際には、発行体の信用リスクへの対策を十分に立てておくべきと筆者は考えます。

例えば、(1)投資可能資金全体に対するETNへの投資割合は30%以内とする、(2)まとまった資金をETNへ投資する場合、単一のETNに集中して投資するのではなく、最低でも数銘柄に資金を分散して投資する、(3)ETNへの投資は1つの発行体につき投資可能資金の5%を限度とする(その際、銘柄の異なるETNであっても同一の発行体であるものは合算して考える)、といったようにです。

実は、ETFの中にも、現物資産を持たず、価格が指数に連動するよう設計された債券を投資対象とするものがいくつかあります。それらは実質的にはETNであるといえ、同じような信用リスクが存在しますから同様に注意が必要です。該当するETFは、各証券取引所のホームページなどで確認するようにしてください。

筆者が希望するのはこんなETN

個人的には、VIX指数に連動するタイプのETNがあれば、信用リスクに十分注意のうえ投資するのは面白いと思っています。

以前、第74回コラムにてVIX短期先物指数に連動するETFについてご紹介しましたが、VIX短期先物指数自体が時間の経過とともに減価していき、長期保有には向かないと説明しました。

しかし、VIX指数は時間が経過しても減価しないので、VIX指数が低い時(株価が上昇基調だったり株価の動きが穏やかな時)にVIX指数に連動するETNを買っておけば、将来株価が急落した際にVIX指数の上昇によって持ち株のリスクヘッジができるからです。

また、VIX指数は比較的頻繁に上下し、株価のように長期的に一方向へ上昇もしくは下落することはありませんから、安い時に買い、高くなったら売る、というシンプルな投資戦略が通用しそうな気もします。

具体的にどんな商品が上場するのかはまだ不明ですが、今後の動きに注目しておきましょう。