直近決算期で評価が高まった高配当利回り銘柄に注目

 2025年も年明けからの早い段階で、NISA投資が活発化するものと考えられます。NISAにおける主要投資対象である高配当利回り銘柄などは、年明けからの資金流入、それに伴う株高を見込んでもいい局面と判断されます。とりわけ、直近の決算発表を受けて株価評価が高まった銘柄などは、新たな組み入れ候補として注目度の高まる余地が大きいと考えます。

 配当利回りが4%以上ある時価総額1,500億円以上の銘柄の中で、7-9月期決算発表を境に評価が高まった銘柄をスクリーニングしています。

 具体的には、決算発表の当日(取引時間中に決算を発表)、あるいは翌日(大引け後に決算を発表)に株価が10%以上上がった銘柄をピックアップしています。ストレートに決算が好調だった銘柄のほか、警戒されたほどの業績の落ち込みがなかった銘柄、株主還元策の拡充が評価された銘柄なども含まれています。

(表)決算発表を機に株価が急伸した銘柄

コード 銘柄名 配当
利回り
(%)
11月15日
終値
(円)
時価総額
(億円)
今期営業
増益率
(%)
騰落率
(%)
7296 エフ・シー・シー 6.63 3,045.0 1,585 5.9 30.24
4114 日本触媒 5.82 1,855.0 2,893 20.8 9.31
5938 LIXIL 5.17 1,740.5 5,001 52.9 9.36
2127 日本M&AセンターHD 4.39 660.6 2,225 5.8 13.43
7148 FPG 4.31 3,025.0 2,583 10.7 34.15
注:今期営業増益率は会社計画
注:騰落率は10月25日終値比

銘柄選定の要件

  1. 配当利回りが4.0%以上(11月15日現在)
  2. 時価総額が1,500億円以上
  3. 7-9月期決算を発表した銘柄
  4. 決算発表日、あるいは発表翌日に株価が10%以上上昇

厳選・高配当銘柄(5銘柄)

1 エフ・シー・シー(7296・東証プライム)

 クラッチ専業の自動車部品メーカーです。二輪向けが47%、四輪向けが53%(2025年3月期見込み)を占めており、利益構成比は二輪向けが高くなっています。主要顧客別では、筆頭株主となっているホンダグループ向けが4割弱を占めますが、四輪では現在フォード向けが最も高い構成比となっています。

 また、海外売上比率は米国やアジアを中心に90%以上の水準となっています。非モビリティ事業では、セラミックセッターやリチウムイオン電池用導電助剤の量産化などを進めています。

 2025年3月期上半期(4-9月期)の営業利益は100億円で前年同期比55.3%増となっています。従来計画であった78億円を大きく上振れました。インドやインドネシアにおける増収効果に加えて、為替の円安効果も収益の押し上げ要因となりました。2025年3月期通期予想は160億円、前期比5.9%増を据え置いています。

 二輪事業を上方修正した一方、四輪事業は下方修正しています。中国の下振れリスクや為替の影響を考慮して、上半期と比較して利益水準の低下を見込んでいますが、下期の為替レートは140円を前提としており、上振れの余地は大きいとみられます。

 11月1日の決算発表を受けて、翌営業日の株価は20.6%の急伸となりました。上半期業績の上振れ着地に加えて、配当予想の大幅な引き上げがインパクトにつながりました。年間配当金は従来計画の76円から202円にまで引き上げ、上場20周年を迎えたことによる記念配当126円を実施するようです。

 また、発行済み株式数の2.5%に当たる125万株、25億円を上限とする自社株買いの実施も発表しました。米トランプ氏の大統領就任を受けて、目先はエンジン車の復調が見込まれる点など、同社にとってフォローとなる可能性もあるでしょう。

2 日本触媒(4114・東証プライム)

 紙おむつに使用される高吸水性樹脂の世界トップ企業です。アクリル酸、酸化エチレンなども主力分野となります。成長事業としては、電池・水素関連材料、ディスプレイ・半導体(レジストなど)材料、中分子原薬受託製造や医薬品開発支援などのライフサイエンス事業も手掛けています。

 リチウムイオン電池の電解質として使われ、電池の長寿命化を実現させる素材「イオネル」などが今後の期待製品となります。海外売上比率は50%超の水準となっています。

 2025年3月期上半期(4-9月期)の営業利益は104億円で前年同期比4.5%増となり、従来計画の90億円を上振れています。第1四半期(4-6月期)の同22.8%減から一転増益にも転じています。スペシャリティケミカルズの需要堅調推移やディスプレイ関連製品の販売数量増加に加えて、円安効果による採算改善なども収益の押し上げにつながっているようです。

 2025年3月期通期では、従来予想の180億円から200億円、前期比20.8%増に引き上げています。上半期の上振れ着地に加えて、原料価格の下落による一段の採算改善も見込んでいるようです。なお、下半期の為替レートの前提は145円であり、さらなる業績の上振れ要素といえます。

 11月7日に決算を発表していますが、当日の株価は11.6%の上昇となっています。7-9月期の収益急回復に加えて、配当予想の引き上げも好感されていいます。年間配当金は従来計画の70円から108円にまで引き上げられています。

 会社側では2025年3月期から2028年3月期までの4期間において、配当性向100%またはDOE(株主資本配当率)2.0%のいずれか大きい金額を目安に配当を実施するとしています。一段の業績上振れの可能性が残る点は、さらなる増配にもつながるものといえます。

 なお、高吸水性樹脂は日本の高齢化社会の到来、新興国の生活水準の向上により、今後の成長余地も大きいと考えられます。