それでも米国株市場は好調が続く?
とはいえ、米国市場の経験則として、「選挙後の株式市場は買い」というのがあります。
<図4>米大統領選挙前後のNYダウの動き(投開票日を100)
上の図4は、米大統領選挙の投開票日を100として、前後150日間の株価の推移を示したものです。1900年から2020年までの米大統領選挙31回分の平均と、直近3回分(2020年、2016年、2012年)の推移を示していますが、いずれも選挙後に上昇する傾向にあるほか、今回(2024年)も選挙後に上昇していることが分かります。
また、新政権発足から100日間は「ハネムーン期間」として、政権が軌道に乗るまでにある程度時間がかかることを前提に、メディアなどが政権に対して過度な批判を避ける傾向があるため、全体的な相場地合いはややポジティブに傾きやすくなります。
となると、株式市場の上昇はまだまだ続きそうですが、逆を言えば、100日間のあいだに、トランプ政権は何らかの実績や、今後の期待感を示す必要があるわけです。
トランプトレードを時間軸で考えてみる
となると、トランプ氏が掲げる政策が、「どのような順番で動きを見せるか?」へと注目が集まっていくことになり、ここからのトランプトレードは「これまでとは違う」ものに変化していくと思われます。
そこで、あらためて、トランプ氏が掲げる主な政策を挙げて行くと以下の通りになります。
<図5>トランプ氏の政策方針
まず、目玉政策である「減税」については、トランプ減税の恒久化や法人減税といった法案を議会で通過させる必要があるため、本格的な議論が始まるのは、2026年度予算の審議が始まるタイミングとなる夏場あたりが想定され、政策実行の時間軸としてはまだまだ先になります。
また、もう一つの目玉政策である「関税強化」についても、手続きなどの準備を含め、実行に移されるまでには結構な時間が掛かります。そして、実施の方法自体も、相手国との交渉取引(ディール)や駆け引きを経ながら段階的に行われる可能性が高いと思われます。
このように、時間軸で捉えて行くと、現時点での注目政策(減税と関税強化)における株式市場の反応は、まだ思惑が先行している面が強く、具体的な規模や実効性を株式市場が織り込んでいくのはこれからで、タイミング的にもちょっと早過ぎると言えます。
そのため、手っ取り早く手を付けられて、実績作りができそうな政策としては、不法移民対策や外交面(ウクライナや中東地域)、エネルギー産業の規制緩和やパリ協定からの再脱退などが考えられます。地政学的リスクを抱える外交面で事態がこじれてしまう点には注意が必要ですが、それ以外の政策については、相場全体というよりも、セクターや個別で反応していくものが多いと思われます。
それと同時に、重要な相場材料として再び浮上してくると思われるのが、米国の景況感とインフレの動向です。
現在の米国景気は、経済指標などのデータからおおむね堅調とされていますが、今後も米景気が強い状況が続くと、「そもそも景気が悪くないのに減税を行うことでインフレが再燃しかねかいか?」といった見方が強まり、減税策の実施に影響を与える可能性があります。
従って、トランプ氏の発言や、ディールの動向などに振り回されやすい状況は変わりませんが、最近までのような株価の大幅上昇を伴うトランプトレードはいったん落ち着いてくると考えられます。