今後、何に注目しておけば良いのか

 以上、見てきたように、物価指標は日本銀行の見通しに沿って推移していると言えますが、円安によって物価上振れリスクが高まっているという状況にはなく、加えて金融市場は依然としてやや不安定な状況にあるため、10月は現状維持が見込まれます。

 次回利上げは、12月18~19日の金融政策決定会合と予想していますが、その蓋然(がいぜん)性を確かめるため今後何に注目しておけばよいか、改めて確認しておきましょう(図表6)。

図表6 今後の注目材料

(出所)各種資料、楽天証券経済研究所作成

 まず、植田総裁は9月金融政策決定会合後の記者会見で、10月のサービス価格に強い関心を持っていると述べていますので、最大の注目ポイントは10月消費者物価の「サービス」ということになります。

 その発表が11月22日ですが、それまで待っていればいいかというと、そうではありません。10月の金融政策決定会合後の記者会見、11月中の開催が見込まれる名古屋の講演(日程不明)で、植田総裁がどのような発言をするかチェックする必要があります。

 もう一つ気になるのが来年の春闘です。連合は18日、2025年春闘の「基本構想」を発表し、2024年と同じ「5%以上」の賃上げ率を目指すと発表しました。中小企業については「6%以上」の賃上げ率を目指すとしています。

 来年3月中旬の集中回答日後に発表される第1回回答集計結果で、2024年並みの強い結果が示された場合、今年3月と同様、物価見通し実現の確度が高まったとして利上げに踏み切る材料になります。

 それを想定するならば、来年1月より今年12月に0.5%への利上げを実施しておいた方が良いとの見方が可能です。ただ、12月利上げ見通しに難点があるとすれば、10月9日のレポートでも指摘した来年度予算政府案の閣議決定です。

 例年、クリスマス直前に閣議決定が行われるため、12月金融政策決定会合はその直前になります。これが日銀の政策決定に影響を与えるかどうかは不明ですが、その点も含め、植田総裁をはじめとする政策委員の発言に注目する必要があります。