「魔性」とは、魔物のように人を惑わす性質
人は危機に敏感な生き物です。数万年間も生きながらえているのは、このためでもあります。それゆえ、「有事」や「地政学リスク」「戦争」という言葉を目にしたり、耳にしたり、それらに関わる映像を見たりすると、強い関心を寄せる性質があります。恐怖に心を奪われ、盲目的になる場合すらあります。
こうした人の性質を逆手にとり、戦争を連想させるニュースが多くなると、一部の情報の発信者は「有事」や「地政学リスク」などの言葉を多用し、耳目を引きつつ、金(ゴールド)を訴求する場面を目にします。ですが、これは健全な状態とは言えません。金(ゴールド)市場の一部分しか見せず、かつ人の弱みを逆手に取る行為だからです。
図:「魔性(ましょう)」と金(ゴールド)の性質
情報の発信者は恐怖をあおるだけ、情報の受け手は恐怖にあおられて目の前にある金(ゴールド)に手を伸ばすだけ、という構図です。こうした状態は、金融庁が提唱する顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)が目指す状態と逆の状態と言えます。
金(ゴールド)はある意味、情報の発信者と情報の受け手の間で恐怖を媒介していると言えます。その意味では、金(ゴールド)は人を惑わす性質を意味する「魔性(ましょう)」の性質を持っていると言えるでしょう。
市場には、1970年代後半に中東地域で有事が同時発生した際に金(ゴールド)価格が短期的に急騰した記憶があり、恐怖と金(ゴールド)の相性が良いという認識が残っています。このため、金(ゴールド)から魔性の性質を取り除くことは大変に困難です。