テスタさんのSNS、本物はどっち?詐欺の実例で学ぶ1

田代 ここで実際にテスタさんの本物と偽物のSNSを用意しました。テスタさん、この写真は両方ともご自身で間違いないですか?

テスタ 写真自体は僕ですね。

田代 左の方は総利益100億達成とありますが、右の方は情報が古いのか、「50億円、2022年」と書かれています。調べれば分かるけれども、ぱっと見ただけでは写真が同じだと分からない可能性がありそうです。

テスタ 左のものが僕のXのアカウントで本物です。右はフェイスブックで偽物です。僕はフェイスブックをしていないので、フェイスブックでテスタと名乗るものは全て偽物です。

 SNS上で検索したら一番上に出てきたり、偽物がある中で一番本物っぽいものがあったりしても、本物が一つもないこともあります。フォロワー数が少なくておかしいということからも偽物だと分かります。ただ、画像だけならフォロワー数はいくらでも加工して変えられるので、自分でアクセスしてフォロワー数を見て、本物かどうか区別しないといけないですね。

田代 テスタさんは本物のアカウントでは「塾、サロン、LINE等お金かかる系は何もしてないのであったら全て偽物」と強調されていますね。

テスタ 詐欺グループに「テスタさんはプロフィールにこう書いているじゃないですか」と指摘しても、その言い訳を多分用意していると思うんですよね。「お金かかる系はしてないけど、今回は無料なんだ」とか。著名な方はそういうことはしていません。

 それを前提に投資するときは、お金の管理は誰かに任せるのではなく、自分の口座で管理すること。著名人に任せてその人がお金を増やしてあげるようなものは全て詐欺だと疑う方がいいですね。証券会社などが行う資産運用サービスは別ですが。

森永さんのSNS、本物はどっち?詐欺の実例で学ぶ2

田代 次は森永康平さんのSNSです。左と右、どちらが本物でしょうか。見比べてみると、写真が同じですね。

森永 右が本物で、左が偽物です。左は派手というか攻め過ぎでしょう。「毎週10%以上もうかる」株を僕が知っていたら、誰にも言わず自分で投資をします。

 普通に考えたら引っかからないと思うのですが、この左側のLINEのQRコードから詐欺グループのチャットに登録して被害に遭った方から連絡がありました。個人の方が毎週10%以上のリターンを期待して、詐欺グループのチャットに登録してしまうことが実際に起こるんですね。こういったものがSNS上に無数にあります。LINEやXのほかにインスタにもあります。

 僕単体のものもあるし、父親(経済学者の森永卓郎さん)と一緒に写った写真が無断で使われているものもあります。僕が被害者から報告を受けただけでも被害額は5億円くらいになっています。父のところに連絡が来ているのだと10億円を超えています。

田代 森永卓郎さんのお名前をかたった詐欺の被害が大きくなっているんですね。

森永 1件で被害額が1億円を超えているものもあります。すごく迷惑なのは僕ら親子が詐欺で15億ぐらいもうけていると言われることです。うちの父はフェイスブックもXも、SNSを一切していません。世の中に出回る「父親」のSNSは全部うそです。

森永康平さん

田代 卓郎さんはメディアに非常に出られていたイメージがあります。SNSをしていないので全部偽物だということを調べないで、被害に遭われる方がいらっしゃるのでしょうね。

森永 SNSのフォロワー数がテスタさんなのに0人や1桁、2桁の数だったら、慣れている方だったら偽物だと分かる。最近ややこしいのが、詐欺グループが、フォロワー数が多い休眠アカウントを買ってくるらしいです。買ったのがフォロワー数5万人のアカウントだったら、そのプロフィールを僕と同じ内容にすれば本物っぽい感じになります。

 僕の本物のアカウント名はアルファベットの「K」と「M」だけを大文字にして、「KoheiMorinaga」ですが、Kの次の小文字の「o」を数字のゼロにして見かけを紛らわしくする手口もあります。怪しいという目で見てようやく気付けるレベルまで詐欺が進化しています。

新NISAで投資初心者が増加、「絶対」「必ず」など断定的表現は詐欺を疑う

田代 投資など金融経験があると、左下にある「上昇銘柄を無料で手に入れる 毎週10%以上のリターン」という文言でおかしいと気付きますよね。

森永 もうかり続けることは株に限らずあり得ない。それに引っかかるのは投資歴が短い証拠です。新NISAを批判するつもりはないですが、新NISAが投資詐欺を後押しした印象がすごく強くて、実際に被害に遭った方たちと会話をすると、初めて投資をする人たちは、信じられない誤解をしている方が多いです。

 新NISAは運用益が非課税になるだけなのに「政府が新NISAを推しているから、投資をしても損はしない」「損が出ても政府が保証してくれる」と思っている方もいる。そうした方だと「プロだったら絶対損しない銘柄を知っているかもしれない」という思考回路になってしまうのかなという気がします。

田代 「絶対」や「必ず」といった断定的な判断を示して商品の勧誘をすることは法令で禁止されています。今年から新NISAで投資の世界に来られた方だと、そうしたことを知らないケースはあるのでしょうね。

森永 僕は証券会社や運用会社の調査部でリポートを書く立場だったので、仮に「絶対に」と書いたとしても、コンプライアンスの部署から書くなと言われて世の中に出る前にそうした文言は消されます。そういう訓練をずっと受けていたので、「絶対に上がる」といった表現は使いません。そういうものに引っかかる方が毎月出ている印象があります。

田代 新しいNISA制度がスタートして、勉強しないで投資の世界に入ってこられる方も多いとのことですが、基本的には勉強するしか詐欺を防ぐすべはないと思うのですが、いかがでしょうか?

テスタ 詐欺は投資だけではなく、時代が変わればいろんな場面で新しい手口が出てきます。SNSでこういう詐欺がはやっていると注意喚起をすれば、ある程度減りますが、詐欺師は別のパターンで仕掛けてきたり、もうかるほかの業界を探したりして、詐欺はどんな形でも起こります。SNSや電話もあるし、友人を介してだまされる場合もあります。

 まず自分のお金は自分で守ること。簡単に言うと他人から聞いたおいしい話に乗らないことです。仕事も投資も自分で努力して考えてないといけない。もうかる話が向こうから勝手にやってくることは基本的にないと思っておくべきです。

 SNSの詐欺の手口で多いのは、日本か海外か聞いたことがない金融機関の名前を言われて「こういう証券会社があるから口座を開設してください」とか「ここにお金を振り込んでください」と言われるんですけど、存在しない会社の場合があります。

 投資だと引っかかりそうになってしまうんですが、銀行だったら「ここで口座を作って振り込んで」と言われても、そんな危ないことをしないじゃないですか。証券口座と銀行口座はそんなに変わらない。お金を自分のメイン口座から移動させるよう言われたら大丈夫なのか考えてほしいですね。

田代 私は以前、暗号資産の仕事をしていましたが、暗号資産が2016年に日本で広がり始めたときに暗号資産関連の詐欺が増えたことがありました。

 暗号資産交換業は日本では登録業として法令で規制されていますが、日本よりも規制が緩い国があるので、「このコインが上場する」とか、「あなたにだけに教えます」と持ち掛けてくるのがよくあるパターンで、今もあります。株や為替、暗号資産といろいろな詐欺のバージョンが出てきていますね。

テスタ 詐欺は手を替え品を替えで、僕が株を始めたのは20年ぐらい前ですが、当時はDVDでした。「投資の勝ち方」を紹介した商材が30万円とか。今はUSBに入っているものやAIの自動売買プログラムとか。AIといった最新技術を織り込むことで信ぴょう性がちょっと持たされているので注意してほしいですね。

 詐欺は昔からあるので、詐欺自体がなくなることはありません。詐欺師がゼロになることは難しいので、詐欺をなくすより、自分の身を守るために知識を入れることしかできない気がします。