米経済の強さを生む四つの要因

 21世紀に入り、米景気がリセッション入りしたのは3回しかありません(出所:NBER)。

【1】ITバブル崩壊不況:2001年3月(景気の山)~11月(谷)、景気後退期間は8カ月
【2】リーマンショック:2007年12月(山)~2009年6月(谷)、後退期間は1年6カ月
【3】コロナショック:2020年2月(山)~4月(谷)、後退期間は2カ月

 21世紀に入ってから、米景気はリセッションが短く、景気拡大期がとても長くなっています。

米GDP成長率(四半期別、前期比年率):2000年第1四半期(1~3月)~2024年第1四半期(1~3月)

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所が作成

 米景気の強さの背景として、四つあります。

【1】移民パワー:移民は当初、低賃金の労働力を供給。貯蓄ができてくると消費の有効需要拡大に寄与。

【2】AI革命:ネットビジネスのインフラを米国の大手ハイテクが支配。ネット・AIの拡大で恩恵を受ける。

【3】シェール革命:かつて世界最大の原油輸入国であった米国は、世界最大の産油国に転換。

【4】資本主義・民主主義国:近年陰りが見えているが、それでも、覇権主義国家が増えている世界にあって、株式会社が栄えるための資本主義・民主主義の基盤がもっとも整備されているのが米国であることに変わりない。

 米景気が予想外に堅調である背景として、短期的なインフレ率や金利水準とは別に、上記四つの要因が効いている可能性はあります。

米景気、次の悪化はいつか?

 将来の景気を正確に予測することはできません。ただし、いくつかシナリオを描くことはできます。今後3年で考えると、メインシナリオでは米景気が深刻なリセッション入りする可能性は低いと考えています。

【今後3年:メインシナリオ】巡航速度(年率1.5~3%)の成長が続く

 米景気は減速・加速を繰り返すものの、「景気後退」と定義されるほどの悪化はない。米経済の足腰は強く、リーマンショックのような金融危機が起こらない限り、米景気は緩やかな加速、減速を繰り返すだけで、巡航速度の成長が続くと考えられます。

【リスクシナリオ】2025年から2026年にかけてリセッションが起こる

 現時点で想定していないような重大な危機が起これば、米景気がリセッション入りすることもあり得ます。例えば、新興国で金融危機が起こり欧米に波及、あるいは米中対立激化で、グローバル経済の分断が深刻化、あるいは今まったく想定していない問題が起こって、米国および世界景気が急激に落ち込むことも、ないとはいえません。

 将来の景気予測をするのは困難で、いつ米景気が悪化するか、正確に予測することはできません。ただし、先に述べた米景気を押し上げる四つの要因が崩れない限り、米経済の足腰は強く、深刻なリセッションに陥ることはないと予想しています。

米国株は上昇し続けるのか?

 最後に、今お話ししたメインシナリオを前提とすると、米国株はどうなるでしょうか? つまり、米景気が今後3年、深刻なリセッションに陥ることなく、巡航速度の成長が続くとしたら、米国株は上昇し続けるのでしょうか?

 景気が巡航速度で成長し続けるとしても、米国株がそれに連動して上昇し続けるとは限りません。株には、先行きの好材料を一気に織り込んで上昇する局面と、好材料が織り込み済みであまり上昇しない局面があります。

 米国株の中期的な上昇期待は高いものの、一本調子で上昇し続けるとは考えられません。これまでもそうだったように、短期的な急落・急騰を繰り返しながら、上昇していくと考えています。

NYダウ(指数化チャート)過去35年の月次推移:1989年末~2024年7月(5日)

出所:1989年末を100として指数化、QUICKより楽天証券経済研究所が作成

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