主要供給国の民主的度合いの低下は深刻
プラチナ相場は、長期視点で需要増加→価格反発、というシナリオを描きやすくなっていると述べました。ここからは供給面を確認します。プラチナの供給面は、「鉱山生産」と「リサイクルからの供給」の二つに分かれます。2023年は、供給全体の78%が鉱山生産、残りの22%がリサイクルからの供給でした(WPICのデータより)。
長期視点の価格低迷が続いている環境下では、相場が高値のときにメリットが大きくなるリサイクルからの供給は増えにくい傾向があります。このためしばらくの間、供給面を確認する場合は、鉱山生産の動向を重視することになりそうです。
プラチナの主要な鉱山生産国は、南アフリカ、ロシア、(南アフリカと隣接する)ジンバブエなどです。これら三カ国で鉱山生産のおよそ90%を占めます(同)。
世界各国の民主主義の状況を数値化する活動をしているV-Dem研究所(スウェーデン)が公表する「自由民主主義指数」を確認すると、これら三カ国の数値が低下傾向にあることが分かります。
図:プラチナの主要鉱山生産国の自由民主主義指数
同指数の低下は、これらの国の自由で民主的な度合いが、低下してきていることを意味します。2010年ごろから目立ち始めた西側と非西側の分断深化の流れの一端です。
分断深化が進むことで、非西側から西側への資源供給に支障(非西側による資源の武器利用)が起きやすくなります。(西側と非西側の分断が深化した過程は以前のレポート「ESGとSNSは食品高と戦争の一因」で述べています)
例えば、原油の減産は、非西側産油国が行う西側への人為的な供給削減という意味がありますし、近年しばしば見られる非西側の農産物大国であるロシアやインドなどの「安全保障のための農産物の輸出規制」は、政治的意図を含んだ出し渋りという側面を感じさせます。
その意味では、主要鉱山生産国のほとんどで民主度が低下し、非西側化が進行しているプラチナにおいても、将来的に出し渋りが発生する可能性を否定することはできません。
世界全体が分断状態にあるからこそ、プラチナにおいても分断起因の出し渋りが起きる可能性があることに留意が必要です。長期視点で供給減少→価格反発、というシナリオもまた、描ける環境にあるといえます。