消費関連指標は夏から秋にかけて強含む可能性がある

 実際、賃金と個人消費は今年後半にかけて、強含んでいく可能性があります。図表1は、左側が景気ウオッチャー調査の「家計動向関連」の現状判断DIと名目賃金、右側が消費動向調査の「消費者態度指数」と実質賃金を、それぞれ比較したものです。

 左図で、景気ウオッチャー調査の現状判断DIが名目賃金とリンクしているのは、それが小売店の経営者やスーパーの店長など企業側から聴取した景況感であり、名目賃金の変化が売上に直結し、景況感を左右するからです。

 一方、右図で消費者態度指数が実質賃金とリンクしているのは、それが家計から聴取した景況感であり、家計はインフレによっても景況感が左右されるため、名目賃金をインフレ率で割り引いた実質賃金の方が大きく影響するからです。

<図表1 マインド指標と賃金動向>

(出所)厚生労働省、内閣府、楽天証券経済研究所作成

 図中にある点線は、筆者が推定した名目賃金と実質賃金の見通しです。実質賃金の見通しには筆者の消費者物価の予測値を利用しています。

 8日に発表された3月の景気ウオッチャー調査では、家計動向関連の現状判断DIが49.4と前月に比べ1.5ポイント悪化するなど、一進一退の動きを続けていますが、左図に示したように名目賃金が今後上昇していけば、現状判断DIも次第に強含んでいくと予想されます。

 右図の消費者態度指数も、今年の後半には実質賃金がプラスに浮上すると見込まれることから、比較的強かった新型コロナ禍前の2017~18年のレベルに向けて徐々に改善していくとみています。

生産も4-6月期以降回復し、GDP成長率を下支える

 製造業に目を向けると、景気を占う上で日銀も重視している鉱工業生産指数は、4-6月期にかけてかなり明確な回復が見込まれています。

 3月29日に発表された2月の鉱工業生産指数は前月比マイナス0.1%と、ダイハツ工業や豊田自動織機などの不正問題を受けた自動車の生産停止が響き、1月のマイナス6.7%に続いて2カ月連続の減少となりました(図表2)。

<図表2 鉱工業生産指数の動向>

(出所)経済産業省、楽天証券経済研究所作成

 しかし、予測指数を見ると、3月前月比4.5%、4月同3.3%と、「輸送機械」(大半が自動車)の持ち直し(3月10.9%、4月5.0%)を受けてV字回復が見込まれています。こうした流れを踏まえると、筆者の推定では4-6月期の生産は5%程度の高い伸びとなり、同期の実質GDP成長率を下支えすると考えられます。