iDeCo(イデコ)の加入条件緩和へ

 iDeCo(個人型確定拠出年金)に新規加入できる年齢は、現在、65歳未満(64歳以下)です。一部報道によると、厚生労働省は年齢上限を、70歳未満(69歳以下)まで引き上げる方針です。また、掛け金の上限(1年間に拠出できる金額の上限)を引き上げる検討もされています。

 税制上のメリットが大きいiDeCoに加入できる期間が長くなり、拠出できる金額が増えることは、老後のための資産形成にとって追い風です。iDeCoへの加入資格がある人は、なるべく若いうちからiDeCoを始めた方が良いと思います。

 また、公務員の方、確定給付型の企業年金のある会社員の方は、現在、年間の拠出可能額が最大14万4,000円(月額1万2,000円)となっていますが、2024年12月から年間最大24万円(月額2万円)に引き上げられる予定です。

「老後2,000万問題」が話題になってから、私的年金の拡充進む

 2019年6月に、公的年金だけでは老後資金が足りなくなるという試算を示した金融庁ワーキング・グループ報告書【注】が出てから、私的年金を拡充する動きが続いています。

【注】金融ワーキング・グループがまとめた「高齢社会における資産形成・管理」と題した報告書。老後資金として、公的年金以外に2,000万円必要との試算が出ていて、話題になった。国民に不安を与えるという理由と考えられるが、当時財務大臣がこのリポートの受け取りを一時拒否したためにかえって有名になり、日本中で繰り返し読まれた。このリポートでは、一定の前提の元に「老後資金として公的年金以外で2,000万円が必要」という試算が載せられている。ここから、「老後2,000万円問題」として話題になった。2,000万円は、一定の前提の下で試算された平均値に過ぎず、人によって必要額は異なるが、あたかも全ての人が2,000万円必要と誤解を与えたことは問題であった。

 私的年金拡充で中心的役割を果たすのが、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)とiDeCoです。その拡充が進められています。

【1】iDeCoの加入期間延長・拠出上限の引き上げ

 2022年5月より、65歳未満(64歳以下)まで、新規加入が可能となりました。それまでは、60歳未満しか加入できませんでした。拠出上限も少しずつ引き上げられつつあります。

 60歳以上で引き出し可能となりますが、引き出ししなければ75歳となるまで非課税での運用が可能です。

【2】NISAの非課税投資枠を大幅に拡大

 2024年1月に始まった新NISAで、1年間に投資できる非課税投資枠が大幅に拡大されました。つみたて投資枠で120万円、成長投資枠で240万円、合わせて毎年360万円の非課税投資枠が、18歳以上の国内居住者に付与されることになりました。非課税となる期間も、無期限となりました。

iDeCo、ファースト!

 非課税の私的年金制度として、代表的なものに、「iDeCo」、「NISA」があります。どちらも、資産形成にとって重要ですが、節税メリットがより大きいのはどちらか、比較するとiDeCoの方がメリットが大きいことが明らかです。加入資格のある方は、まずiDeCoを枠いっぱい使って貯蓄することを目指してください。iDeCoを枠いっぱい使い、「さらに余裕資金があればNISAもやる」で良いと思います。iDeCo、ファースト!

 iDeCoの加入資格がない方、あるいは、既にiDeCoを枠いっぱい使っている方は、さらにNISAをうまく使っていきましょう。

 それでは、最初に検討すべきiDeCoについて、詳しく解説します。

iDeCo、三つの節税メリット

 iDeCoには三つの節税メリットがあります。すぐに恩恵を感じられるのは、以下の【1】です。

【1】拠出金が所得控除になります

 年末調整、または確定申告によって所得控除を受け、所得税・住民税の納税額を減らすことができます。

 例えば、民間企業の勤務者で、給与収入が650万円(課税所得350万円と仮定)の方は、iDeCoで拠出額の約30%分、節税できます(復興特別所得税を勘案しない計算)。年間27万6,000円(月額2万3,000円ずつ)拠出を行うならば、単純計算で、年間8万2,800円の節税となります。

 ただし、課税所得がゼロの場合は、このメリットは受けられません。

【2】運用益が非課税となります

 運用期間中に得られる利息・配当金・売却益が、非課税となります。将来、10万円の運用益(配当金や売却益)が得られるとします。通常の課税(分離課税・単純計算)では、2万円(復興特別所得税を勘案しない計算)が税金として差し引かれます。iDeCo・NISAなど非課税制度を使っていれば、10万円まるまる受け取れます。大きな差となります。

【3】受け取り時にも節税メリットがあります

 一時金で受け取るならば、退職所得控除の対象となります。年金方式で受け取る場合は、公的年金等控除の対象となります。詳細は割愛しますが、非課税で受け取れる可能性が高いと言えます。