スーパー・マイクロ・コンピューター
1.3月19日付けで200万株+追加オプション30万株の公募増資を発表
スーパー・マイクロ・コンピューター(以下スーパーマイクロ)は、2024年3月19日付けで普通株式200万株の公募増資と、引受証券会社に対して普通株式を最大30万株を追加購入することができる追加オプションを付与する予定であることを発表しました。幹事証券会社はゴールドマン・サックス証券会社の単独主幹事となります。
公募価格は875ドルで、追加オプションの行使がない場合、諸費用を除いた手取り額は17.5億ドルになる見込みです。このオファリングは3月22日頃に終了する予定です。
資金使途は、仕入れ資金の増強、生産能力の拡大、研究開発投資の増加などです。前述の「GTC2024」のエヌビディアのファンCEOの基調講演を見ても分かるように、スーパーマイクロが直面するAIサーバーのビジネスは引き続き高い成長率で拡大しています。その中で現在のAIサーバー世界売上高トップ(外販市場での順位)を維持し、さらに事業を拡大するには、手持ち資金と自己資本の強化が必要になっていると思われます。
また、2023年10-12月期の完全希薄化後発行済株式数(加重平均)に対する追加オプションを含めた230万株の希薄化率は4.0%であり、無理な増資ではないと考えられます。
2.「B100」「B200」「GB200」搭載サーバーのビジネスが始まる
スーパーマイクロは3月18日付けで、エヌビディアの次世代AI半導体「B100」「B200」「GB200」「GB200NVL72」を搭載した生成AI用AIシステム(AIサーバー)と、それらのシステムに向けた直接液体冷却等の水冷システムを発表しました(直接液体冷却(または液浸冷却)は、サーバーの筐体内を水で満たしてその水を循環させ再冷却する。冷却効率が最も高い水冷方式と言われる)。
また、スーパーマイクロは、現在の「H100」「H200」を8基搭載したAIサーバーに「B100」「B200」を搭載できるようにすることで納期短縮を目指します(AIサーバーでGPUの入れ替えができるようにすると思われる)。
この中でも「GB200」搭載サーバーは従来よりも規模が大きく高額なシステムになると思われます。また、「GB200NVL72」は、36 個の「Grace」と72個の「Blackwell GPU」を接続し、大型 LLM(大規模言語モデル)での推論を従来比で 30 倍高速化するというスーパーコンピューター級GPUです。
「B100」「B200」「GB200」「GB200NVL72」関連のAIサーバーや冷却装置の事業は、2025年6月期、2026年6月期のスーパーマイクロの業績に寄与すると予想されます。
表4 サーバー売上高ランキング(2023年7-9月期)
表5 サーバー各社のAIサーバー売上高
3.引き続き業績好調が予想される。楽天証券業績予想と目標株価は変更しない
前述したように、エヌビディアの次世代AI半導体、「B100」「B200」「GB200」への実需が強いため、スーパーマイクロのこれら次世代AI半導体を搭載したAIサーバーの売れ行きも好調が予想されます。また、「B100」「B200」「GB200」は省エネ性能も優れているため、これらの出荷が本格化するであろう2025年になると、「H100」搭載サーバーの更新需要が発生すると予想されます。私の予想では2026年までエヌビディアのAI半導体は供給に対して需要が上回る状態が続くと思われます。
そのため、少なくとも2026年までは、これまでエヌビディア製AI半導体を搭載したAIサーバーの販売実績が大きいスーパーマイクロは、エヌビディアが顧客であるクラウドサービス会社やサーバーメーカーに対してAI半導体を割り当てる際に、優先的にエヌビディアからのAI半導体の供給を受けることができると思われます。
これらのことを考慮して、楽天証券では2024年6月期、2025年6月期の楽天証券業績予想を変更しません。今後6~12カ月間の目標株価は前回の1,900ドルを維持します。
公募200万株発行後の発行済み株式数5,855万株(追加オプション30万株を除く)で計算した楽天証券予想EPS(1株当たり利益)は2024年6月期19.98ドル、2025年6月期36.38ドル。予想PER(株価収益率)は2024年6月期48.6倍、2025年6月期26.7倍であり、楽天証券の予想営業増益率2024年6月期80.0%増、2025年6月期82.5%増と比べると、なお割安感があると思われます。引き続き中長期で投資妙味を感じます。
表6 スーパー・マイクロ・コンピューターの業績
本レポートに掲載した銘柄:エヌビディア(NVDA、NASDAQ)、スーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI、NASDAQ)