マイナス金利解除後の政策金利は0~0.1%
マイナス金利政策解除後の政策金利については、1月10日のレポートで詳しく述べた通り、異次元緩和が開始される直前まで設定していた、無担保コールレート(オーバーナイト物)「0~0.1%程度」に戻されるとみています。内田副総裁の2月8日の講演(下記)もそれをサポートする内容だったように思います。
マイナス金利の導入前には、日本銀行の当座預金取引先の超過準備に0.1%の金利を付利し、取引先でない金融機関との裁定取引が行われる結果、短期金融市場では、無担保コールレートが0~0.1%の範囲で推移していました。
仮にこの状態に戻すとすれば、現在の無担保コールレートは-0.1~0%ですので、0.1%の利上げということになります。
(出所)日本銀行、楽天証券経済研究所作成
ちなみに、政策金利と当座預金への付利は、市場裁定が働くため、別々の水準に設定することができません。従って、政策金利を0~0.1%にするのであれば、超過準備に対する付利も0.1%に一本化するのが最も自然です。なお、利上げの際は、政策金利と同じように付利も引き上げることになります。
追加利上げには慎重な姿勢
もっとも、すでに3月か4月のマイナス金利解除を織り込んでいる市場にとって重要なのは、マイナス金利解除後の政策金利のパスです。植田和男総裁は1月23日の記者会見で記者から「解除後の連続的な利上げといったことも視野に入れて判断するのか」と問われ、「それは当然そういうことになるかと思います」と答えた上で、以下のようにコメントしています。
深刻なあるいは大きな不連続性が発生するような政策運営は、現在みている経済の姿からすると、避けられるのではないかというふうにみております。
(出所)日本銀行、楽天証券経済研究所作成
つまり、植田総裁の頭に中に追加利上げがあることは明らかですが、追加利上げを行っていくとしても、そのペースは緩慢なものになるということが、上の発言から読み取れます。内田副総裁も2月8日の講演で、同様の発言をしています(下記)。
仮にマイナス金利を解除しても、その後にどんどん利上げをしていくようなパスは考えにくく、緩和的な金融環境を維持していくことになると思います。
(出所)日本銀行、楽天証券経済研究所作成
このように、日銀が追加利上げに対して慎重であることは間違いないわけですが、注意しなければならないのは、それを3月のマイナス金利解除時に強調し過ぎると、為替が円安に振れる可能性があるということです。
かといって、追加利上げの可能性を匂わせると長期金利が不安定化する恐れもありますので、日銀はかなりデリケートなコミュニケーションを迫られることになりそうです。