目先の米半導体関連株は調整含みか?

 また、エヌビディア株だけに限らず、目先の米半導体関連株については、調整含みの展開になるかもしれません。

図6 米SOX指数(日足)と多重移動平均線(2024年3月8日(金)時点)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

 上の図6は米SOX指数(フィラデルフィア半導体・セクター指数)の日足チャートに多重移動平均線を重ねたものです。

 多重移動平均線は、短期から中期までの異なる移動平均線をたくさん描くことで、トレンドの強弱や変化を探るのに使われます。上の図6では2日から28日まで、2日間刻みの移動平均線を14本描いています。トレンドが発生している時は多くの移動平均線が同じ方向を向き、移動平均線の束の幅が広くなっていきます。

 足元の状況も、図6を見れば上昇トレンドが発生中ということになりますが、ローソク足を見ると、エヌビディア株と同様、週末8日(金)に大きな陰線が出現して、やはり「抱き線」となっています。

 さらに、チャートをさかのぼると、昨年11月からの上昇トレンドの途中で、移動平均線の束が狭くなる調整期間が度々発生していますので、トレンドが転換するとまでは言えないものの、目先は調整含みの展開となる可能性が高くなっています。

今週は米国の景況感と金融政策を中心に方向感を探る展開

 したがって、半導体関連株が調整含みとなる可能性が高いこともあり、今週の株式市場は、米景況感と金融政策に対する思惑に振り回される場面が増えることが予想されます。

 先週末8日(金)に公表された米2月雇用統計の結果を簡単にまとめると、「非農業部門雇用者数が予想より増加」、「失業率は悪化したものの、依然として4%を下回っている」、「平均時給は前年比・前月比ともに、伸びがやや鈍化」といった具合に、強弱まちまちの内容となりました。

 これを受けた米主要株価3指数(NYダウ・S&P500・ナスダック)は下落という初期反応を見せましたが、相場の基調を変えるほどの動きではなく、米10年債利回りの低下や、景気や金利に敏感な中小型銘柄で構成される株価指数(Russell2000)が取引時間中に節目の2,100pを超える場面を見せていることもあり、米景気のソフトランディング(軟着陸)見通し自体は、今のところ変わっていないようです(下の図7と図8)。

図7 米10年債利回りの推移 (2024年3月8日(金)時点) 

出所:楽天証券WEBサイトを基に筆者作成

図8 米Russell2000(日足)の動き(2024年3月8日(金)時点)

出所:Bloombergデータを基に筆者作成

 とはいえ、今週の米国では、2月CPIが12日(火)、2月小売売上高が14日(木)に公表されます。先週の米2月雇用統計の結果が相場を動かす材料としてあまり機能しなかったこともあり、これらの経済指標への注目度は高くなると思われます。

 特に、CPIについては、来週のFOMCへの思惑につながりやすいことや、インフレの加速傾向が見られた前回(1月分)の結果が公表された2月13日(火)の米国株市場は大きく下落しています。図7の米10年債利回りを見ても、この日に利回りが上昇していることが分かります。

今週の日経平均の予想レンジは4万400円~3万7,700円

 以上のように、今週の株式市場は来週の金融政策イベントと、今週公表される経済指標などをにらみながら、株価の水準感を探っていく展開がメインシナリオとなりそうですが、最後に日経平均の予想レンジについても考えて行きたいと思います。

 予想の手掛かりとして、これまでのレポートでも度々紹介してきた、75日移動平均線乖離(かいり)率の推移をボリンジャーバンド化したものを使います。

図9 日経平均移動平均線乖離率(75日)のボリンジャーバンド(2024年3月8日(金)時点)

出所:MARKETSPEEDIIデータを基に筆者作成

 先週末8日(金)時点の75日移動平均線乖離率はプラス10.61%でしたが、週初の4日(月)にはプラス12.48%まで乖離が進み、昨年6月のプラス13.19%に迫る場面も見られました。現在の乖離率の水準は、2020年以降でも高水準のところに位置しているため、近いうちに乖離の修正が行われると思われます。

 乖離の修正が「時間調整」であれば、株価の推移は比較的穏やかですが、「値幅調整」であれば、荒っぽい株価の動きとなります。

 警戒しておきたいのは後者ですので、目先の日経平均の予想レンジを上の図9のボリンジャーバンドの値などで見て行くと、上値がプラス2σ(シグマ)の4万384円、下値がMA(中心線)の3万7,735円あたりが目安となり、キリのよい数字にすると、4万400円から3万3,700円あたりが、想定レンジとなりそうです。