米国市場では債券金利の反発が株式の上値を抑える

 米国市場では、多くの機関投資家が運用指標とする「S&P500種指数」が年末高の反動に伴い調整モード入りしています。ただ、年明けの為替相場がドル高・円安に転じたため、「円建てS&P500」の年初来騰落率は+4.6%と底堅く推移しています(17日)。17日に発表された地区連銀経済報告や12月・小売売上高は足元の個人消費の底堅さを示す内容となりました。

 図表1は、米国株価(S&P500)および債券市場の短期金利(2年国債利回り)と長期金利(10年国債利回り)の推移を示したものです。

 前週発表された12月のCPI(消費者物価指数)とPPI(生産者物価指数)のコア(食品とエネルギーを除く)物価指数の前年同月比伸びが減速したことで政策金利の行方に敏感とされる短期金利はいったん低下しましたが、FRB(米連邦準備制度理事会)のウォラー理事が16日に「利下げは秩序立った慎重なペースで進めるべきだ」と発言し市場の早期利下げ期待は後退。

 債券金利が反発したことを株式市場は悪材料とみなしました。

 また、15日は共和党の大統領候補者選び初戦となるアイオワ州党員集会が開催され、世論調査で首位を独走するトランプ前大統領が勝利。ワシントンでは2024年度予算の「つなぎ予算」が月末に期限を迎える中で「債務上限問題」の再燃リスクが警戒され、中東の紅海情勢を巡る地政学リスク悪化も株価の重しとなりました。

 第4Q(10-12月期)決算の利益総額は、S&P500構成銘柄のうち38社が決算を発表した時点(17日)で、前年同期比で2.2%減益にとどまっています。来週以降発表される大手テック株の決算動向に注目が集まっています。

<図表1>米国市場では債券金利の反発が株式の上値を抑える

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2023年初から2023年1月17日)