3 東洋製缶グループHD(5901・東証プライム)

 アルミ・スチール飲料缶やPETボトルなどを製造しています。また、飲料の充てん受託も手掛けるほか、電池材料、磁気ディスク用アルミ基板、光学機能フィルムなども手掛けています。

 脱プラスチックの課題解決に寄与する新たな紙容器製品の開発や軽量化、バイオマス原料化などに注力しています。2025年度までの中期計画では売上高8,500億円、営業利益500億円を目標として掲げ、中計期間中は総還元性向80%を目安に株主還元を行うとしています。

 2024年3月期上半期営業利益は149億円で前年同期比2.1倍となり、従来予想の125億円を上回る着地になっています。主に国内包装容器事業における売価転嫁の推進が奏功したようです。車載用二次電池材の増収効果も寄与しました。

 2024年3月期通期では230億円で同3.1倍の見通しとしていますが、機能材料事業が伸び悩むとして従来予想を変更していません。上半期上振れの分、増額余地は大きいと考えられます。年間配当金は前期比1円増の90円を計画、配当性向50%を目安としていますが、段階的に引き上げていく方針も示しています。

 同社では2023年3月期の決算と同時に「資本収益性向上に向けた取り組み2027」を発表しています。2028年3月期にROE(自己資本利益率)8%以上の目標などを掲げており、包装容器事業など不採算事業領域の構造改革を2025年3月期、2026年3月期にかけて行う計画としています。

 加えて、年間200億円の自社株買いや積極的な配当などの株主還元を実施して自己資本の圧縮を図るともしています。2024年は構造改革への期待が株価に反映されるとみられます。 

4 ひろぎんHD(7337・東証プライム)

 2020年10月に地方銀行上位の広島銀行を中核とする持株会社として発足。ひろぎん証券やひろぎんリースなどもグループに抱えています。広島銀行は広島県を中心に、岡山県、山口県、愛媛県で主に事業展開、2024年3月期上半期の預金等残高(平残)は9兆3,066億円で前年同期比2.3%増、貸出金残高(平残)は7兆3,993億円で同4.5%増となっています。

 預金等残高、貸出金残高は中四国地方に本店を置く地域金融機関の中でトップ、全国の地域金融機関の中でもベスト10に入る水準です。広島銀行単体の自己資本比率は、2023年9月時点で10.58%となっています。

 2024年3月期上半期純利益は166億円で前年同期比65.0%増となっています。政策保有株式などの売却益の計上に加え、前年に計上した保有株式の評価損が消失など、株式等関係損益が改善しました。

 一方、2024年3月期純利益は275億円で前期比2.2倍の見通しです。前年度に発生した外国債券の売却損などが一巡することで、大幅増益となる予想です。主力の資金利益なども堅調な推移を想定しています。年間配当金は前期比9円増の36円を計画、配当性向目標の40%に沿ったものとしています。

 2024年は早い段階で日銀の金融緩和政策が修正されてくるとみられます。国内金利の上昇は銀行株、とりわけ、地銀株にとってプラス材料となるため、株式市場における地銀株の注目度は高まる公算が大きいとみられます。そして、時価総額2,000億円以上の地銀株では最も配当利回り水準が高いのが同社となります。

 ほか、インバウンド需要拡大に伴う地域経済の活性化が見込める点で注目されます。広島県は厳島神社や平和記念公園など海外からの関心も高い観光資源が豊富で、インバウンド需要の一段の拡大の恩恵も期待できるでしょう。

5 丸井グループ(8252・東証プライム)

 首都圏を地盤とする大手小売り企業ですが、小売事業は従来の百貨店業態から転換が進み、現在ではテナントからの賃料収入が中心となってきています。テナントも物販型から体験型へシフトさせています。

 また、D2C(自社で企画・製造した商品をECサイトで直接販売)のテナントに関しては、売り場の運営も受託しています。利益面では、エポスカードを中心としたフィンテック事業が主力となっています。カード会員数は2023年9月末段階で743万人となっています。

 2024年3月期上半期営業利益は186億円で前年同期比16.6%減となっています。小売事業は順調に回復していますが、フィンテック事業における費用の増加などが減益の主因となったようです。通期予想は従来の455億円から420億円、前期比8.3%増に下方修正しています。

 加盟店手数料率の低下、ポイント費用や人件費などの費用増加、カードクレジット取扱高の前提引き下げなどで、フィンテック事業を下方修正しています。年間配当金は前期比42円増の101円計画を据え置いています。

 1株当たり配当額は、DOE(株主資本配当率)8%程度をめどに長期安定増配を志向しています。相対的に減配のリスクは小さいと考えられます。同社を小売業として捉えれば、配当利回りの水準は、時価総額1,000億円以上の小売株の中で最高水準となっており、利回り妙味は非常に高いといえるでしょう。

 また、2,200万株、400億円を上限とした自己株式の取得期間中でもあるため、株価の大幅な下落時には自社株買いが大きな支えとなることが見込まれます。フィンテック事業底打ちが意識されれば、買い安心感は強まると考えられます。