その株価が高い、安いを考えない。そんな投資はできるか?

「先生、正直僕の今の知識で高値つかみを避けることはできますか?」
「そうですね。実は、その株価が高値なのか割安なのかという判断自体が、リスクをとることになりますよね。ですから、そういった『株価水準の判断』というリスクをとる自信がないなら、積立投資のように毎月一定額を拠出して、投資のタイミングを分散する『時間分散』という方法もあります。相場は上げ下げを繰り返し、特にバブルが起こりやすい21世紀は、暴騰も暴落もある。だから、目先の上げ下げに一喜一憂せずに、あくまで投資本来の恩恵である企業の成長や投資収益の複利効果などを確実にものにするよう、積立投資を継続することは、理にも、利にも、かなっているわけです」

「なるほど。予測するリスクをとるより、分散か。なんか、最近私の同僚も『つみたてNISA』を始めたという人が増えてきました」
「そうですね、なかなか日本では投資が根付かないので、国も税制優遇がある制度を導入して、つみたて投資を促進しようとしています。必ず資本主義ではバブルが起こります、それを避けることはできません。そのバブルをうまく受け流す方法がつみたて投資です。毎月同じ金額で投資信託を買うので、高い時は少ない口数、バブルが弾けて暴落しているときは逆に安い値段で多くの口数を買えるので、購入単価を下げることもできます」

「先生、そのイメージ僕にもわかります。実は私の会社、中堅のスポーツメーカーですが持株会をやっていまして、私も毎月1万円ずつ買っています。そうすると、リーマンショックの後にすごい下がったんです。でも、その時も何も考えずに買っていたんですよね。それが、業績が回復してきて今では結構儲かっているんですよ」

「その経験があればバブルを味方につけることができます。ただ持株会は1社のリスクを取っているので、投資信託のように分散投資をしているものを積み立てるほうがいいですね。そもそも自分の会社の株価リスクは、自分が勤めていることで負っていますから」
「なるほど。自分の会社のリスクか。確かに自分の会社なので愛着はありますが、分散したほうがいいですね。最初は、バブルをどう乗り越えていくのか全くイメージができなかったんですが、積立投資の話を聞いて、これなら自分でも乗り切れそうな気がしてきました」

 帰り道、隆一は今までの先生の話を思い出していた。資本主義、株、バブル、分散投資・・・それまで単なる<点>であったものが、少しずつ繋がりはじめる感覚を得ていた。もっと知りたい。そんな気持ちで新橋の飲み屋街を抜けて、家路を急いだ。

第14話:「独りよがりな投資。相場は自分を中心に回らない」を読む

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