「働きざかり」(労働人口成長国)への分散投資に注目

 上述した新興国株式への分散投資ニーズに応える追加型投資信託があります。「iTrust新興国株式」の愛称は「働きざかり~労働人口増加国限定~」です(運用:ピクテ・ジャパン)。同ファンドは新興国株式に分散投資するアクティブ型ファンドで、特徴として「労働人口(15~64歳の生産年齢人口)が伸びている国のみに分散投資をする」との運用方針が挙げられます。

 若くて消費意欲が旺盛な労働人口が増加する国では、労働力や消費市場の拡大に注目した国内外の企業からの投資を引き寄せ、生産活動が活発化しやすいとされます。雇用や所得の増加を経て、貯蓄や消費の拡大につながるサイクルを通じて「労働人口成長国は中長期で高い経済成長が期待できる」との考えで運用されています。

 従って、MSCIの分類上で「新興国」とされる国々でも、労働人口が減少に転じている中国、ロシア、韓国、台湾は投資対象にしていません。同ファンドの最近の投資対象は労働人口が伸びているインド、ブラジル、南アフリカ、メキシコ、インドネシアなどの株式となっています

 例えば、メキシコは2023年上期(1-6月)に「米国の国別輸入金額(6カ月累計)」で中国を抜き首位となりました。米中対立を背景に、米国が進める友好国とのサプライチェーン(供給網)構築がメキシコからの輸入拡大の追い風です。

 また、米国企業が生産拠点を消費地の近隣国に移転する「ニアショアリング」の流れがメキシコでの投資活性化に寄与しています。図表3は、「働きざかり」(労働人口が成長している新興国株式)に分散投資する「iTrust新興国株式」の基準価額と日経平均株価(225種)の推移を比較したものです(2021年初=100)。

 同ファンドのリスク(リターンのブレ)は比較的高いものの、リターンが優勢だったことが分かります。コア・サテライト投資戦略を構築するにあたり、サテライト部分で新興国株式への分散投資に活用できる追加型投信として注目したいと思います(同投信は新NISAの「成長投資枠」対象ファンドです)。

<図表3>労働人口成長国のみに分散投資する追加型投信に注目

*上記は過去の市場実績であり将来の投資成果を保証するものではありません。
*上記ファンドは原則として為替ヘッジをしません。管理費用(信託報酬を含む)は年率1.0895%です。
出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2021年初~2023年12月13日)

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