為替DI:12月のドル/円、個人投資家の予想は?

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪/ドル円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示します。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 DIは「強さ」ではなく、「多さ」を測ります。DIは、円安や円高の「強さ」がどの程度なのかを示しているわけではありませんが、個人投資家の相場観が正確に反映されていると考えるならば、DIの「多さ」は同時に「強さ」を示すことになります。

「12月のドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」

 楽天証券がドル/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家の53%が「円高/ドル安」に動くと予想していることがわかりました。前月は27%でした。

 円安見通しから円高見通しを引いたDIは、前月から52ポイント減少して▲6になりました。DIがマイナスになったのは今年3月以来8カ月ぶりで、これは個人投資家の円高見通しが円安見通しよりも多いことを示しています。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成 
出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

円安時代ついに終了か?

 FRB(米連邦準備制度理事会)が、金融政策決定プロセスにおいて「経済データ重視」の方針を打ち出して以来、マーケットは米指標の結果に必要以上に敏感になっています。

 先月発表された米国の10月雇用統計の就業者増加数は予想より少なく、さらに米消費者物価指数(CPI)と米卸売物価指数(PPI)が、インフレ率の順調な低下を示しました。

 12月FOMCは「利上げなし」との見方が広がる中で、32年ぶりの高値となる152円台を目指して上昇していたドル/円は150円台前半まで落下しました。

 ところが、次に発表された小売売上高が米国の消費の過熱状態を示すと、今度は「利上げあり」との見方が一気に広まりました。ドル/円は151円台に戻り、再び152円台まであと一歩と迫りました。

 しかしその後は弱い米経済指標が続きました。「利上げなし」論が勢力を盛り返す中で米長期金利が低下し、ドル/円は149円台前半まで大幅に下落しました。

 11月21日には感謝祭(サンクスギビングデー)前のドルロング・ポジション調整がドル売りを加速させ、10月3日の「うわさ介入」で急落した時とほぼ同水準の147円台前半まで円高が進みました。

 この時点でドル/円の水準は10月末の日銀会合前の水準にもどり、2.70円貯めた円安預金もゼロになってしまいました。

 借入コストの急騰や債務返済額の増大につながる長期金利の急騰は困る一方で、過度な利下げ期待がインフレを再燃させるリスクは絶対に避けたいとFRBは考えています。

 今年最後のFOMCが迫る中で、タカ派として知られるウォラーFRB理事が「現在の金融政策は適切な状態にある」と追加利上げに慎重な意見を述べ、さらに来年の「利下げ」まで言及しました。

 これに対してFRBのご意見番であるウィリアムズ・ニューヨーク連邦準備銀行総裁は、「インフレ圧力が続けば再利上げもある」と発言しました。

 FRBはタカ派とハト派のバランスをとりながら、マーケットを巧みに誘導しているようですが、パウエルFRB議長が「政策金利はすでに十分引き締め的である」との見解を示したことで、「利上げサイクル終了」がマーケットのコンセンサスとなりました。

 これを受けてドル/円も円高の勢いが強まることになりました。

ユーロ/円

 楽天証券がユーロ/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家の52%が「円安/ユーロ高」に動くと予想していることがわかりました。前月は69%でした。

 円安見通しから円高見通しを引いたDIは、前月から34ポイント減って+4になりました。ユーロ/円は、ユーロ高見通しとユーロ安見通しがほぼ拮抗(きっこう)しています。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成
出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成    

豪ドル/円

 楽天証券が豪ドル/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家の53%が「円安/豪ドル高」に動くと予想していることがわかりました。前月は71%でした。

 円安見通しから円高見通しを引いたDIは、前月から36ポイント減って+6になりました。豪ドル/円は、豪ドル高見通しと豪ドル安見通しがほぼ拮抗(きっこう)しています。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成 
出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成 

今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後投資してみたい金融商品」で「海外債券」と「国内債券」を選択した人の割合に注目します。各質問の選択肢は、ページ下部の表のとおり、13個です(複数選択可)。

図:「海外債券」と「国内債券」を選択した人の割合の推移

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成 

 2023年11月の調査で、「海外債券」を選択した人は13.69%(全回答者2,680名中367名が選択)、「国内債券」は7.20%(193名)でした。上図のとおり、ここ最近、ともに割合は上昇傾向にありますが、特に「海外債券」が大きく上昇しています。

 債券は英語で「fixed income」といわれることがあります。直訳すると「確定された収入」です。このため債券は、数ある金融商品の中で比較的安定的に利益を狙える商品と認識されています。

 世界に戦争、景気動向、金融政策、気候変動、人権問題、宗教対立、食料問題など、多数の問題があることを前提に資産形成を行うとき「分散投資」の有効性が叫ばれ、分散先のその一つに「債券」が注目されることがあります。

 2022年以降、「海外債券」も「国内債券」も、割合が上昇しているのはこのためだと、考えられます。

 特にここ最近「外国債券」の割合が上昇しているのは、米国の金融政策の方針が変化しつつあるためです。

 市場では、これまで利上げ(引き締め策の一つ)一辺倒だった方針が、利上げ打ち止め(引き締め停止)、さらには利下げ(緩和策の一つ)に転じるのではないかとの思惑が広がっています。

 利上げ打ち止めや利下げの思惑は、債券価格を上昇させる一因です。一般に、債券価格と金利は逆の動きをする、シーソーの関係にあります(金利が上がると債券価格は下がり、金利が下がると債券価格は上がる)。

 米国の金融政策の方針が緩和方向に変化しつつあることが、「外国債券」への関心を強める一因になっていると考えられます。引き続き、米国の金融政策の方針、そしてそれに影響を受け得る「外国債券」の割合の推移に、注目していきたいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2023年11月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成 

表:今後、投資してみたい国(地域) 2023年11月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成