はじめに

 今回のアンケート調査は、2023年11月27日(月)~11月29日(水)にかけて行われました。

 11月末の日経平均株価は3万3,486円で取引を終えました。

 月間を通じて上昇基調が続き、前月末の終値(3万0,858円)からの上昇幅は2,600円を超え、月足ベースで4カ月下落していた期間の下げ幅を一気に取り返しました。

 上昇基調にあった米国の金利が低下に転じたことが株高の要因となりました。

 米国では、景気の減速を示す経済指標が増え始めたことや、インフレ動向が落ち着いてきたことを受けて、米金融政策の利上げ終了観測が高まったこと、そして、警戒されていた政府予算を巡る議会の対立がいったん先送りされたことで、米国債に対する需給不安と格下げ懸念が後退したことも追い風となりました。

 月末にかけては、年初来高値の更新が視野に入った株価水準のところで上昇の勢いが鈍化したものの、高値圏のもみ合いが続き、売りをこなす買いの存在が感じられるなど、株式市場の先高期待を残す格好となりました。

 このような中で行われた今回のアンケートですが、2,600名を超える個人投資家からの回答を頂きました。日経平均のDIについては、前回よりも株高の見通しが強まったほか、為替の見通しについては、米国の金利低下傾向を受けて円高見通しに傾く結果となりました。

 次回もぜひ、本アンケートにご協力をお願いいたします。

日経平均の見通し

「中期的な先高期待が強まる結果」

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

 今回調査における日経平均の見通しDIは、1カ月先がプラス26.79、3カ月先はプラス14.33となりました。

 前回調査の結果がそれぞれ、マイナス17.48、プラス5.79でしたので、両者ともにDIの値を大きく改善させたことになります。とりわけ、1カ月先の改善幅が顕著になっており、11月の株式市場が急反発していたことが影響したと言えます。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 上の図は1カ月先の見通しDIにおける回答の内訳グラフですが、強気派が39.78%、弱気派が12.99%という割合になっています。ちょうど、前回調査の割合(強気派19.73%、弱気派37.20%)が反転した格好です。

 また、今回調査の強気派の割合は、今年の5月調査(45.65%)に次ぐ大きさとなっています。その後の日経平均は、6月19日の取引時間中に3万3,772円の高値をつけましたが、10月にかけて上値を切り下げる展開に転じて行きました。

 5月調査のDIは、1カ月先がプラス32.62となる一方で、3カ月先がマイナス3.27と、「短期では強気も、中期的にはやや警戒感」という結果だったことを踏まえると、DIの見通しが的中した格好となっています。

 今回の調査については、3カ月先DIもプラス方向へ改善しているほか、強気派の割合も30%を超えているため、中期的にも強い見通しであることがうかがえます。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 とはいえ、2023年最後の月を迎えた足元の株式市場は、日経平均が12月5日の取引で節目の3万3,000円台を下回るなど、軟調なスタートを見せています。

 11月の株価上昇が急ピッチだったこともあり、いったん利益確定売りに押される場面は想定されますので、今回のDIの見通しが外れたと判断するのはまだ早計と思われます。

 また、来週には米国で、FOMC(米連邦公開市場委員会)や11月CPI(消費者物価指数)、11月小売売上高などの注目イベントが控えていますので、これらの動向次第では、再び株式市場が上昇基調を取り戻すことも考えられます。

 ここから先の株価がさらにもう一段階上昇していくには、「買い戻しによる株価上昇」から、「先高観による買い上がり」の材料が必要になります。

 11月の株価上昇のきっかけとなった米国の金利低下ですが、その背景には、(1)「米景気の減速とソフトランディング見通しによる利上げ終了観測」、(2)「米国財政をめぐる議会の対立がいったん回避」、(3)「米国債需給悪化懸念の後退」の3つが挙げられます。

(1)の見方については、足元の株式市場でまだ優勢ですが、(2)については、米政府のいわゆる「つなぎ予算」の期限が1月19日と2月2日に訪れるほか、(3)についても、次回の米国債の発行計画が2月あたまに公表されることもあり、年をまたいで警戒がくすぶっていることを踏まえると、年内に株価が再上昇した際の上げ幅や賞味期限が短くなってしまうことも想定しておく必要があるかもしれません。

今月の質問

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 ここからは、「今月の質問」について、書きます。11月のテーマは「2024年に注目できそうな株はありますか?」でした。

 2023年も年末に差し掛かり、さまざまなメディアで来年(2024年)の予測に関する記事を目にするようになりました。

 パリオリンピック・パラリンピックや米大統領選挙など、注目度が高いイベントが目白押しの2024年に対して、個人投資家の皆さまはどのような思いを抱いているのでしょうか。

 まずは、2024年への全体的な期待感をうかがう意味で、注目できそうな株がいくつあるか、尋ねました(質問1)。注目できそうな株の数が多いほど、2024年への期待感が大きくなるのではないか、という見立てです。

図:質問1

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 選択肢は「1つ~5つ」「6つ~9つ」「10以上」「注目できる株はない」の四つでした。最も多く選択されたのが、「1つ~5つ」でした(63.8%)。

 次いで「注目できる株はない」(17.2%)、「6つ~9つ」(10.5%)、「10以上」(8.5%)でした。この結果より、2024年に対して、期待感よりも不安感のほうが大きいことがうかがえます。

 とはいえ、「6つ~9つ」や「10以上」を選択した方も一定数おられたことから、全体としては「不安感はあるものの、期待できる要素もある(不安だけではない)」、ということなのだと思われます。

 その2024年について、具体的に注目している材料について尋ねました(質問2・3)。

図:質問2・3

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成 

 全体として、金融政策、国のリーダーを選ぶ選挙、戦争(世界)、物価動向などの意味を含む選択肢が多く選択されました。

「世界」では米大統領選挙(20.6%)、ウクライナ戦争(18.0%)、中東情勢(16.4%)、欧米の金融政策(15.1%)、物価動向(12.8%)、「日本」では日銀の金融政策(26.8%)、自民党総裁選(11.9%)。物価動向(17.7%)でした。

 新しいリーダーが誕生すると、これまでの方針が変わったり、強まったりするため、選挙は2024年の大きな材料になり得ます。

 また、欧米の金融政策が引き締めから緩和に変化したり、日本の同政策が緩和から引き締めへ変化したりすると、経済情勢が大きく変化するため、金融政策の動向も大きな材料になり得ます。

「日本」独自の材料として比較的多く選択されたのが「新NISAのスタート(23.3%)」です。従来のNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)に比べて使い勝手が良くなるため、多くの投資家が注目していることがうかがえます。

 質問4では、2024年に注目する株や材料を、自由に記入していただきました(128文字以内)。以下はほんの一部です。目立ったものをまとめています。

質問4

(以下、いただいた回答より文意を変えず文体を整えて抜粋)

[注目分野(一部)]

  • 大阪万博関連
  • 防衛関連
  • 半導体関連
  • インバウンド関連
  • 日本の銀行関連
  • 円高時に恩恵を受けそうな分野・企業
  • クリーンエネルギー関連
  • 宇宙関連
  • AI関連
  • インド関連

[注目イベント(一部)]

  • 米大統領選挙(トランプ氏が再選するかどうか、など)
  • 台湾総統選挙
  • 2024年問題(日本の物流業界)
  • 新NISAスタート(日本)

[注目材料(一部)]

  • 中国経済の動向
  • 米国の金融政策(利上げ打ち止めや利下げがあるかどうか)
  • 米国の景気動向(ソフトorハードランディング)
  • ウクライナ情勢
  • 中東情勢

 大阪万博、防衛、半導体、インバウンド、AIなど、2024年も継続して動きがありそうな分野のほか、日本の銀行関連、円高時に恩恵を受けそうな分野、宇宙関連など、2024年に新たに動きがありそうな分野に関する記述が、比較的多くありました。

 また、トランプ氏が再選するかどうかという視点で米大統領選挙に関心が集まったり、ソフトランディング(軟着陸)かハードランディング(急激な減速)かという視点で米国の景気動向に関心が集まったりする様子がうかがえました。

 ここまで、「2024年に注目できそうな株はありますか?」というテーマで行った各種質問の回答結果をまとめました。今後もさまざまなテーマを用意し、個人投資家の皆さまのお考えを、伝えていきます。

為替DI:12月のドル/円、個人投資家の予想は?

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪/ドル円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示します。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 DIは「強さ」ではなく、「多さ」を測ります。DIは、円安や円高の「強さ」がどの程度なのかを示しているわけではありませんが、個人投資家の相場観が正確に反映されていると考えるならば、DIの「多さ」は同時に「強さ」を示すことになります。

「12月のドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」

 楽天証券がドル/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家の53%が「円高/ドル安」に動くと予想していることがわかりました。前月は27%でした。

 円安見通しから円高見通しを引いたDIは、前月から52ポイント減少して▲6になりました。DIがマイナスになったのは今年3月以来8カ月ぶりで、これは個人投資家の円高見通しが円安見通しよりも多いことを示しています。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成 
出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

円安時代ついに終了か?

 FRB(米連邦準備制度理事会)が、金融政策決定プロセスにおいて「経済データ重視」の方針を打ち出して以来、マーケットは米指標の結果に必要以上に敏感になっています。

 先月発表された米国の10月雇用統計の就業者増加数は予想より少なく、さらに米消費者物価指数(CPI)と米卸売物価指数(PPI)が、インフレ率の順調な低下を示しました。

 12月FOMCは「利上げなし」との見方が広がる中で、32年ぶりの高値となる152円台を目指して上昇していたドル/円は150円台前半まで落下しました。

 ところが、次に発表された小売売上高が米国の消費の過熱状態を示すと、今度は「利上げあり」との見方が一気に広まりました。ドル/円は151円台に戻り、再び152円台まであと一歩と迫りました。

 しかしその後は弱い米経済指標が続きました。「利上げなし」論が勢力を盛り返す中で米長期金利が低下し、ドル/円は149円台前半まで大幅に下落しました。

 11月21日には感謝祭(サンクスギビングデー)前のドルロング・ポジション調整がドル売りを加速させ、10月3日の「うわさ介入」で急落した時とほぼ同水準の147円台前半まで円高が進みました。

 この時点でドル/円の水準は10月末の日銀会合前の水準にもどり、2.70円貯めた円安預金もゼロになってしまいました。

 借入コストの急騰や債務返済額の増大につながる長期金利の急騰は困る一方で、過度な利下げ期待がインフレを再燃させるリスクは絶対に避けたいとFRBは考えています。

 今年最後のFOMCが迫る中で、タカ派として知られるウォラーFRB理事が「現在の金融政策は適切な状態にある」と追加利上げに慎重な意見を述べ、さらに来年の「利下げ」まで言及しました。

 これに対してFRBのご意見番であるウィリアムズ・ニューヨーク連邦準備銀行総裁は、「インフレ圧力が続けば再利上げもある」と発言しました。

 FRBはタカ派とハト派のバランスをとりながら、マーケットを巧みに誘導しているようですが、パウエルFRB議長が「政策金利はすでに十分引き締め的である」との見解を示したことで、「利上げサイクル終了」がマーケットのコンセンサスとなりました。

 これを受けてドル/円も円高の勢いが強まることになりました。

ユーロ/円

 楽天証券がユーロ/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家の52%が「円安/ユーロ高」に動くと予想していることがわかりました。前月は69%でした。

 円安見通しから円高見通しを引いたDIは、前月から34ポイント減って+4になりました。ユーロ/円は、ユーロ高見通しとユーロ安見通しがほぼ拮抗(きっこう)しています。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成
出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成    

豪ドル/円

 楽天証券が豪ドル/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家の53%が「円安/豪ドル高」に動くと予想していることがわかりました。前月は71%でした。

 円安見通しから円高見通しを引いたDIは、前月から36ポイント減って+6になりました。豪ドル/円は、豪ドル高見通しと豪ドル安見通しがほぼ拮抗(きっこう)しています。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成 
出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成 

今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後投資してみたい金融商品」で「海外債券」と「国内債券」を選択した人の割合に注目します。各質問の選択肢は、ページ下部の表のとおり、13個です(複数選択可)。

図:「海外債券」と「国内債券」を選択した人の割合の推移

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成 

 2023年11月の調査で、「海外債券」を選択した人は13.69%(全回答者2,680名中367名が選択)、「国内債券」は7.20%(193名)でした。上図のとおり、ここ最近、ともに割合は上昇傾向にありますが、特に「海外債券」が大きく上昇しています。

 債券は英語で「fixed income」といわれることがあります。直訳すると「確定された収入」です。このため債券は、数ある金融商品の中で比較的安定的に利益を狙える商品と認識されています。

 世界に戦争、景気動向、金融政策、気候変動、人権問題、宗教対立、食料問題など、多数の問題があることを前提に資産形成を行うとき「分散投資」の有効性が叫ばれ、分散先のその一つに「債券」が注目されることがあります。

 2022年以降、「海外債券」も「国内債券」も、割合が上昇しているのはこのためだと、考えられます。

 特にここ最近「外国債券」の割合が上昇しているのは、米国の金融政策の方針が変化しつつあるためです。

 市場では、これまで利上げ(引き締め策の一つ)一辺倒だった方針が、利上げ打ち止め(引き締め停止)、さらには利下げ(緩和策の一つ)に転じるのではないかとの思惑が広がっています。

 利上げ打ち止めや利下げの思惑は、債券価格を上昇させる一因です。一般に、債券価格と金利は逆の動きをする、シーソーの関係にあります(金利が上がると債券価格は下がり、金利が下がると債券価格は上がる)。

 米国の金融政策の方針が緩和方向に変化しつつあることが、「外国債券」への関心を強める一因になっていると考えられます。引き続き、米国の金融政策の方針、そしてそれに影響を受け得る「外国債券」の割合の推移に、注目していきたいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2023年11月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成 

表:今後、投資してみたい国(地域) 2023年11月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成