新NISAスタート接近、高配当利回り大型株に先回り買い妙味

 2024年からの新NISAスタートが間近に迫っています。配当金も非課税になることから、NISAの有望な投資対象として高配当利回り銘柄が挙げられますが、3月期末の配当権利取りを考えれば、年明けの早い段階でNISAへの組み入れが行われるものと見られます。

 こうした動きを想定すれば、年内に高配当利回り銘柄に投資して、NISA投資による買い需要を先取りすることには妙味があると考えられます。NISA投資対象ということだけでなく、短期的観点から見ても、大型の高配当利回り銘柄の投資チャンスといえるでしょう。

 NISA投資の対象となり得る(中長期投資に安心感のある)大型株(時価総額3,000億円以上)の中で、配当利回りが4%台後半の水準以上にある銘柄をスクリーニングしています。

 配当性向が高く、今後の配当水準の維持が難しいとみられるもの、今期減配予想銘柄などは除いています。新NISAによる高配当利回り銘柄への投資対象となるものといえるでしょう。  

(表)高配当利回りの大型株

コード 銘柄名 配当
利回り
(%)
11月17日
終値
(円)
時価総額
(億円)
配当性向
(%)
配当金
(円)
5021 コスモ
エネルギーHD
5.12 5,862.0 4,969 33.6 150→300
5406 神戸製鋼所 5.11 1,762.5 6,985 29.6 40→90
8304 あおぞら銀行 5.08 3,029.0 3,582 75.0 154→154
2914 日本たばこ
産業
4.98 3,775.0 75,500 71.9 188→188
6417 SANKYO 4.94 6,072.0 4,028 40.4 150→300
注:配当金は前期実績→今期計画

銘柄選定の要件

  1. 配当利回りが4.7%以上(11月17日現在)
  2. 配当性向が75%以下
  3. 時価総額が3,000億円以上
  4. 今期減配予想銘柄除く

厳選・高配当銘柄(5銘柄:コスモエネルギーHD、神戸製鋼、あおぞら銀、JT、SANKYO))

1 コスモエネルギーHD(5021・東証プライム)

 コスモ石油からの株式移転により、2015年10月に発足した持株会社です。燃料油の国内販売シェアは12%程度と推定されます。現有処理能力は1日当たり40万バレル程度で、千葉、堺、四日市の3製油所で展開しています。

 石油精製・販売のほかに、エチレンやパラキシレンなどの石油化学、アブダビ首長国での石油開発事業などを行っています。また、再生エネルギー事業なども手掛け、陸上風力発電の国内シェアは第3位です。筆頭株主だったアブダビ政府系会社とは2022年に資本提携を解消しています。

 2024年3月期上半期経常利益は831億円で前年同期比52.2%減となっています。在庫影響を除いたベースでは779億円で同5.0%減でした。石油事業はマージンの改善で実質増益となっていますが、石油化学事業は市況の軟化で、石油開発事業は工事の影響に伴う一時的な数量減でそれぞれ減益となりました。

 2024年3月期通期経常利益は1,550億円で前期比5.8%減の見通しです。従来予想の1,250億円から上方修正しています。在庫の影響に加えて、石油市場のマージン改善が主な上振れ要因となるようです。なお、年間配当金は前期比150円増の300円を計画しています。

 2026年3月期までの中期経営計画では、3カ年累計の総還元性向を60%以上としているほか、下限配当は250円以上と設定しています。石油業界の中ではトップクラスの還元姿勢と言えるでしょう。

 また、旧村上系ファンドとされるシティインデックスイレブンスが共同保有者分を合わせ議決権で約20%の株式を所有する大株主となっていることも引き続き思惑材料となります。直近では、米国でのリチウム資源開発事業への新規参入をめざし子会社を設立しました。

2 神戸製鋼所(5406・東証プライム)

 国内第3位の高炉メーカーです。事業領域は幅広く、アルミ圧延品、素形材、溶接材、建設機械・産業機械、プラント・電力など、バランスの取れた事業ポートフォリオとなっています。一方、鉄鋼大手の中では相対的に輸出比率は低くなっています。

 兵庫県の高砂製作所で水素ガスの供給に向けた実証施設の稼働を開始しています。また、三井物産とオマーンで、鉄鋼原料の「直接還元鉄」製造事業の具体的な検討に入っています。

 2024年3月期上半期経常利益は916億円で前年同期比2.2倍となっています。原料炭価格の下落と販売価格改善の進展による鉄鋼メタルスプレッドの大幅な改善に加えて、機械・エンジニアリングの売上増加、神戸発電所4号機の稼働などが大幅増益の要因となっています。

 2024年3月期通期見通しは1,450億円で前期比35.7%増の見通しです。機械や電力事業を上方修正する一方で、販売数量減少から鉄鋼アルミ事業は当初見込みを下振れするようです。年間配当金は前期比50円増の90円を計画しています。

 8月に配当性向の見直しを発表しており、これまで15~25%程度を目安としていたものを30%程度目安に変更しています。鉄鋼大手の中では市況変動による業績変動リスクは相対的に低く、中長期的な買い安心感があるといえるでしょう。また、株式持ち合い関係にある日本製鉄との関係強化などへの期待も残るところです。