2社とも株価割安のバリュー株

 過去3年、三菱UFJと三井住友FGは株価が大きく上昇しました。

2社の株価上昇率:2021年・2022年・2023年(11月17日まで)

出所:QUICKより作成

 それでもなお、株価指標で見て極めて割安なバリュー株であることに変わりありません。株価が割安な好業績株として「買い」判断は変わりません。

 11月17日時点で、以下の通り、PER・PBRが低く、予想配当利回りが高い、バリュー株です。

2社の株価バリュエーション:2023年11月17日時点

コード 銘柄名 2021年 2022年 2023年
11月17日まで
8306 三菱UFJ FG +37.6% +42.3% +42.2%
8316 三井住友 FG +23.7% +34.3% +40.5%
出所:両社決算資料より楽天証券経済研究所が作成。配当利回りは2024年3月期1株当たり年間配当金(会社予想)を11月17日株価で割って算出。1株当たり配当金は、三菱UFJ41円、三井住友FG270円。PERは、11月17日株価を2024年3月期1株当たり利益(会社予想)で割って算出

2020年まで金利低下を嫌気して過度に売り込まれていた

 三菱UFJ、三井住友FGの株価は2021年以降3年間で大きく上昇しましたが、それでも株価指標で見てなお割安です。2020年まで、金利低下を嫌気して、株価が長期にわたり低迷していたからです。日本および世界の金利低下を嫌気して売り込まれていました。それが、2021年以降、世界的な金利上昇を好感して、株価が急上昇しています。

日経平均および三菱UFJ、三井住友FG株価の動き比較:2007年1月~2023年11月(17日まで)

コード 銘柄名 株価
:円
配当
利回り
PER
:倍
PBR
:倍
8306 三菱UFJ FG 1,264.0 3.2% 10.4 0.82
8316 三井住友 FG 7,443.0 3.6% 10.5 0.72
出所:2007年1月末の値を100として指数化、QUICKより作成

 

 三菱UFJ・三井住友FG株とも2007年以降、金利低下とともに売られてきました。金利低下が続いた2020年まで、日経平均株価を大幅に下回るパフォーマンスとなっていました。株式市場で「金利低下→銀行(金融業)の収益悪化」というイメージが定着しているので、金利が低下する都度、世界中で銀行株が売り込まれ、その流れで両社とも売り込まれました。

日米の長期金利(10年国債利回り)推移:2007年1月~2023年11月(17日)

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 2021年以降、世界的に金利が上昇し始めると、銀行株が一斉に買われて上昇しました。日本のメガ銀行株も上昇しました。さらに2022年12月に、日銀が日本の長期(10年)金利の上限を0.25%から0.5%に引き上げると、国内銀行業務の利ザヤ拡大の期待から、日本の銀行株の上昇が加速しました。

 2023年3月に欧米で金融不安が起こると、世界的に銀行株が売られ、日本のメガ銀行株も一時売られました。米国でシリコンバレー銀行などが破綻、欧州でクレディ・スイスの経営危機が表面化した影響が出ました。ただし、米国およびスイスの金融当局が迅速に対応を取り、金融危機の拡大を抑えると、もともと財務的に健全だった日本の銀行株は再び上昇に転じました。

 日銀は2023年7月、長期金利の上限を事実上1.0%まで引き上げました。さらに10月には日本の長期金利が1%超に上昇することを許容しました。これで、日本の銀行株はさらに上昇しました。

 ところが、11月に入り、米国の景気減速の兆しが強まると米長期金利が下がり、日本の長期金利も反落しました。これを受けて、日本の銀行株も一時利益確定から下がりました。ただ、好調な中間決算発表を受け、三菱UFJ、三井住友FG株には押し目買いが入り、両社株は高値で堅調に推移しています。